多くの通販サイトの商品発送方法から、「ゆうメール」が消えることになりそうだ。全国一律で180円から荷物を発送できる日本郵便(株)の「ゆうメール」は、多くの通販会社から小物商品の発送に利用されてきたが、今後は印刷物や電磁的記録媒体(CD・DVDなど)を除き、商品の発送には利用できなくなることが、通販通信の取材でわかった。業界で最も安い商品の発送手段が使えなくなることで、今後、通販・EC事業者が送料を値上げする可能性も出てきた。
特約ゆうメールの終了は「品質の高いサービスの安定供給」が目的
地方でネットショプを運営するA社の経営者は「送料値上げが止まらない」と悲鳴をあげる。特約ゆうメール便が「実質的に契約終了になる」からだ。「ゆうメール」は本来、印刷物や電磁的記録媒体を送るための郵便形態。ただし、ゆうパケットの約款を適用するなどした「特約ゆうメール」を取り扱う「ゆうメール運送業務委託契約」を結ぶことで印刷物や電磁的記録媒体以外の商品発送にも利用できた。
しかしこの度、日本郵便は「特約ゆうメール」を終了する方針を示した。今後は「ゆうメール」を使って、小袋のサプリメントやファッションアイテムなどの小物商品を発送することができなくなり、通販・EC事業者にとってコスト面で大きな打撃となる。
A社によると今夏、所管する郵便局の支局長名義で「商品を内容物とするゆうメールの取扱終了」とする文書が通知された。文書では「生産性の向上や各種コストの削減に取り組んで参りましたが、引き続き品質の高いサービスを安定的に提供させていただくため、印刷物及び電磁的記録媒体以外のものを内容品とするゆうメールの取り扱いを終了」するとしている。
通知文書では、特約などについて記載はしていないが、実質的に特約での契約が終了となるというわけだ。
所管の郵便局の担当者から「特約の契約内容で限定している厚みや重さをオーバーした荷物を送ろうとする契約者もいた」「我々も粘ったが支局の力ではこれ以上は吸収できない」などと取扱終了に関する説明を受け、秋には終了すると口頭で告げられたという。日本郵便では6月末までに定形外郵便の集荷サービスも終了しており、定形外郵便による商品発送も行なっていた通販会社A社は「お手上げ」と乾いた笑いをこぼす。
日本郵便「ゆうメール特約は印刷物・電磁的記録媒体限定」
通販通信が日本郵便を取材したところ、特約ゆうメール便の終了の通知を行なっていることを認めた。「以前から特約運賃を適用している一部のお客さまに、内容品に小型物品を含むことができる特約としていた。ただ、日本郵便の方針として、ゆうメールで扱えるものは印刷物又は電磁的記録媒体を内容品とするものに限り、これ以外の小型物品については、ゆうパケットかゆうパックなどをご利用いただくこととなった。新規のお客さまについては、内容品に小型物品を含む特約運賃提示は終了している」(広報部報道担当)と回答があった。
日本郵便の説明によると、会社全体の方針として14年に「ゆうパケット」が登場の時点から、「ゆうメール」は印刷物と電磁的記録媒体に特化した郵便形態にしていく流れではあったという。ただ、完全に終了するまでのスケジュールについては「順次案内を行なっており、具体的な期限などは設けられていない」とする。昨今の物流クライシスを受け、「特約ゆうメール」終了に向けてピッチをあげているということだ。
日本郵便では「労働市場のひっ迫による人件費の上昇等によるコスト増加に対し、引き続き安定的なサービスを提供していくため、今後は、ゆうメールの特約運賃の適用は、印刷物又は電磁的記録媒体を内容品とするものに限る。該当の顧客には、順次、ゆうパケットの特約運賃などを提案しているところ」ともコメントしている。
EC事業者「少なくとも1個あたり200円のコスト増」
「特約ゆうメール」が終了するとなると、通販・EC事業者が日本郵便のメニューで小物発送をやりくりする場合は、「ゆうパケット」「レターパックプラス」「ゆうパック」への切り替えを余儀なくされる。前述の通販会社は「これまで特約ゆうメールで送っていた商品を、ゆうパケットに切り替えると1個あたり200円の送料値上げになる。年間のコスト増を考えるとかなり厳しいものがある」と嘆く。
なお、日本郵便では6月末までに郵便物の集荷を終了する「集荷見直し」を、遅くとも5月までに法人契約先に通知している。これにより、通販・EC事業者も定形外郵便による商品発送の集荷サービスが受けられなくなっている。そのほか、9月1日からはゆうメールの規格外取り扱い廃止やクリックポストの21円値上げなども迫っている。送料値上げの波はまだまだ荒れ模様が続きそうだ。
15年3月には、「信書問題」でヤマト運輸が「クロネコメール便」の取り扱いを終了している。そのため、小物発送を日本郵便に切り替えたネットショップも少なくない。物量過多となり、今回の「商品を内容物とするゆうメールの取り扱い終了」に影響しているとも可能性もありそうだ。
(古川 寛之)
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