越境ECプラットフォーム「eBay」を展開するイーベイ・ジャパン(株)は12月16日、文化ファッション大学院大学(BFGU)でファッションビジネスを専攻する学生向けに、出張講義を実施した。越境ECの可能性などについてレクチャーを行ったほか、留学生らと越境ECにおいてビジネスチャンスのある商材などについて意見交換を交わした。イーベイ・ジャパンが日本国内の教育期間で講義を行うのは初めて。
出張講義の風景
eBayがBFGUで出張講義
同学は「ファッション産業の新しいビジネスモデルを研究する専門職大学院」で、毎冬に開催されている「文化ファッション大学院大学ファッションウィーク」にはファッションECのそうそうたる面々もシンポジウムに参加している。13年には前澤友作氏(当時は現ZOZO/旧スタートトゥデイ社長)、19年には(株)エアークロゼットの天沼聰CEOが登壇した。
今回イーベイが参加したのは、同学のファッションビジネス研究科ファッションマネジメント専攻の山岡真理助教の通常講義「ファッションテック」。イーベイ・ジャパンのカテゴリーマネジメント部・中里力部長が90分の講座に参加した。
クイズ形式で越境ECなど説明
中里部長はまずeBayについて説明。流通額などについて学生にクイズを出しながら講義を進めた。その中で、越境ECの市場規模などについてレクチャー。各国のEC化率や、年間平均購入額などについても説明した。「狙い目の市場として、例えばオーストラリアがある」「アメリカではセカンドハンド(二次流通)市場が盛り上がっていて、10年以内にはファストファッションの市場規模を超していく可能性がある」などとビジネスの実践的なトピックもふんだんに交えて講義を進めた。
学生から「競合」「コスト」の質問
受講学生との質疑応答では、「eBayの競合はどこになるのか?」「コストは?」「売りやすい商品/売りにくい商品は?」などと鋭い質問も飛び交った。
中里部長から学生に「eBayで売れそうだと思うものとその理由」というお題を出すワークショップも実施。学生らは事前に回答を準備し、中里部長と活発な意見交換を行った。中には中国の留学生から「キーホルダーなど日本のアイドルグッズが売れそう」、その理由が「自分も欲しいけどなかなか自国では手に入りにくいから」といった声も聞かれ、90分の講義は盛況のうちに終了した。
学生も「ECありき」の認識
山岡助教によると「海外でファッションビジネスを一度起業してから、入学しているという学生もいる。実経験を持って模索の手段として大学院で勉強するという方法を選ぶ留学生は珍しくない」のだという。「ファッションビジネスを志す学生は、ECありきという認識がある。ECからスモールスタートしてショールームやポップアップストアを構えリアルへ進出していくという構想をもって勉強している人も少なくない」そうだ。「学生たちには競合分析を意識しなくてはいけない、と常々伝えている」という。
講義を終えた中里部長は「ユーザーよりの声も多く、刺激的だった。海外の若い世代から見ると”日本のこんなものをもっと売って欲しい”といったような内容もあり参考になった」と話しており、今後も教育現場などへ出張講座を継続的に進出していく意欲を示した。
(山岡助教とイーベイ・ジャパン中里部長)
記者雑感~イマドキの学生を見て
久方ぶりに学校という場に足を運び、学内や講義室の雰囲気など筆者の大学生時代を思い出し懐かしんでいたが、講義が始まると当時とはあまりにも勝手が違い驚いた。
学生には教室備え付けのPCが1人1台用意されており、講義中もGoogleのスプレッドシートを用いて質問などを学生たちが書き込んでいた。質問やワークショップは事前提出式にしていたようだが、山岡助教によると「必要に応じて講義中に書き直したり追記してもらってもいいことにしている」そうで、eBayの講義でも「周りの学生からの質問内容や、講義の内容を聞いて書き直している学生もいました」(同)とのこと。
「本学で学んだことを自国に持ち帰って、現地でファッションビジネスを頑張る留学生も少なくない」(同)という。「主体性のなさ」を散々指摘された世代で、かつ不真面目に学生時代を過ごした筆者からするとBFGUの学生は「主体性がありすぎる」くらいだった。東京商工リサーチによると日本企業の倒産は2年連続で上昇しており、アパレル小売については倒産数が倍増している。先進的な学びをしている留学生の取り込みが生き残りの大きなカギなのかもしれないと感じた。
(古川寛之)
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