経済産業省は16日、「令和元年度(2019年度)における消費者相談の概況」をまとめ、公開した。相談件数は7436件(前年度比3.8%増)で、12年ぶりの増加となった。特定商取引法関係が4094件で全体の55.1%を占め、うち、「通信販売」に関する内容が1220件と最多だった。新型コロナウイルスやキャッシュレス・消費者還元事業に関する相談の増加が特徴だ。
相談が最多の取引形態は通信販売
同省では各地域の消費生活センターなどを通じて、消費者からの苦情や相談、問い合わせなどを受け付け、助言や情報提供などの消費者相談業務を行っている。消費者トラブルの未然防止に役立てていくため、内容を分析し、具体的な相談事例などを取りまとめた。
最も相談が多い取引形態となった通信販売の1220件は、前年度と比べて84件の増加(同7.4%増)となった。全相談件数に占める割合は、前年度の15.9%から16,4%に拡大した。インターネットを利用した通信販売の相談が約8割。内容は「解約関係」が604件(構成比49.5%)と最も多く、次に「広告表示」が217件(同17.8%)と続き、これらで全体の7割弱。
定期購入に関する相談が227件増加
中でも定期購入に関する相談が増えており、件数は435件で前年度から227件増加した。商品別では、健康食品(276件)を含む「食料品」が358件と最も多く、次に「頭髪・皮膚用化粧品」が103件、ゲームアプリなどの「運輸・通信サービス」が52件だった。
相談事例では、定期購入の2回目以降の解約に関する件が、15歳の娘を持つ母親から寄せられた。「初回で解約すると料金が発生することが分からなかった」という例だった。娘は「初回のお試しは無料。電話で解約の連絡があればいつでも止められる」との認識で、スマホからダイエットサプリの広告を見て申し込み、2回目以降の解約を母親に相談した。
メールでの解約は断られ、電話での連絡を求められた。母親が改めて広告を見返すと、スクロールした下のほうに小さな文字で、「初回限りで解約の場合は通常価格の5000円を支払うように」。広告をよく見ないで注文してしまったが、広告が分かりづらく、「初回は無料」と思っていたので代金を払いたくない――。
新型コロナ関連の相談は436件、マスク不足や転売など
これに対して同省は、ネット通販を含む通信販売には、訪問販売や電話勧誘販売などのようなクーリング・オフ制度はない。いわゆる定期購入契約では、販売業者は広告に定期購入契約であること、金額(支払代金の総額など)、契約期間などの販売条件を表示しなければならない。注文の前に内容をよく確認しておくことが大切と注意を促した。
その上で、通信販売の場合は広告に「返品特約」の表示が義務づけられ、適切に表示されている場合は、その特約が有効となるが、適切に表示されていない場合は、商品を受け取った日から起算して8日間は契約の申込みの撤回や、契約の解除を行うことができる。ネット通販では、返品しようとしても事業者となかなか連絡がとれず、交渉が難航する相談も見受けられるので注意が必要とアドバイスした。
また、2019年度ならではといえそうな相談も。新型コロナウイルスに関する相談は20年1月以降、計436件寄せられた。マスク不足や転売などにかかわる相談が268件に上った。キャッシュレス・消費者還元事業に関する相談は19年9~10月にかけて集中し、計181件。対象となる決済手段や対象店舗に関する「問い合わせ」が多くを占めていた。
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