フリマアプリ「メルカリ」を運営する(株)メルカリは26日、このほど開催した第1回「マーケットプレイスのあり方に関する有識者会議」(座長、梅津光弘・慶応大准教授)の議事内容を公開した。初回は主に、「マーケットプレイスの社会的な役割・価値について」「規制すべき取引の考え方について」の自由討論が交わされた。
コロナ禍の衛生用品転売が議論の契機
有識者会議は、社会の中の「CtoC・2次流通マーケットプレイス」の役割や機能について検討。コロナ禍で、マスクや消毒用アルコールなどの高額転売など悪質な出品が相次ぎ、法規制につながるなど社会問題化した背景もあり、あるべき姿と、それを実現するための原則を見い出す機会として今月に設置。各議論のプロセスは随時、公表するとしていた。
「マーケットプレイスの社会的な役割・価値について」は、メルカリというマーケットプレイスの最大の社会的役割・価値は、究極的には「資源配分の効率化(自由市場としての価値)」との意見に大きな異論はなかった。
一方で、こんな意見もあった。「自由市場としての価値のみを説くだけでは、今後、社会からより広く受け入れられるのは難しいのではないか」「循環型社会/サステナビリティやダイバーシティ(人材の多様性)の実現への貢献、個のエンパワメントという点も、メルカリというマーケットプレイスが提供する役割・価値である」
「メルカリを自由に気軽に使えることの背景には、安心して使えること、自由でフェアな取引が行われる場所であるという社会的信頼感が重要であり、その点を担保する姿勢を鮮明にしていく必要がある」
また、「規制すべき取引の考え方について」は、規制するべき取引の対象となるものや行為、およびその規制の実現方法について、ユーザーに対する分かりやすさ点を踏まえて議論がなされた。
「転売自体は悪ではない」の声多く
ひとことで転売と言ってもさまざま。転売自体は悪いことではないという意見が多かった一方で、社会がメルカリを転売の温床と見ている事実も踏まえ、「制限すべき取引(転売を含む)の基準」について議論を行った。「転売しているのは需要と供給をマッチさせることだが、動機や行為は需給がマッチしている限りにおいては規制される根拠はない」との意見も。
「基準」にも、さまざまな声があった。「需給が逼迫している状況では、それらに加えてウォンツとニーズの観点が適用できるのではないか。市場ではウォンツに該当するモノの配分はうまくいくが、ニーズに属するものの効率的な資源配分は必ずしもうまくいかない。ニーズに属するものの取引を制限する」
「企業として、レピュテーションリスクにかかるコストなどを合理的に勘案して取引を制限することはあり得るが、それはPrinciples(原理・原則)とは呼べないのではないか」「規制を判断する軸の前提として、弱い立場の人々等の利益の保護も考える必要がある」
「自由市場が機能するにはルールが必要。魅力的なルールの設定により多くの人が参加し、取引することで、市場としてのメルカリの価値が高まり、ひいては社会全体に幸せをもたらす方向に進む。したがって、課題に対して、マーケットプレイスの機能を大幅に制限するのではなく、設計したルールをうまく微調整して市場機能を高める方向をめざすのがよい」
「外部性がある財については、市場では効率的な資源配分がなされないこと踏まえて、何かしらの基準を持って規制を行うことが適正ではないか」「仮にメルカリで規制したとしても、他の場所で転売が行われることになる」「外部性をメルカリで売買する人に見える化し、正の外部性を伸ばし、負の外部性を抑えるような行動を促していけるとよい」
「出品禁止物がユーザにとっては分かりづらく、仕組みで解決できる部分もあるのではないか。どの出品物が禁止にあたるのか、線引きをして表明していく必要があるのでは」「ユーザーが事務局に対して通報したり、出品画面上で警戒を促すようなアクションも見られる。このような自発的な行動も踏まえて、どのような仕組みとするかを検討するべきではないか」
次回は9月初旬に開催
有識者会議は9月までに素案の公開をめざすとして始まったが、第2回は9月初旬で、テーマは「原則の素案の提示、議論」。第3回は同月下旬とし、テーマは「原則案の提示、議論」という活動スケジュールを公表。次回は、より実態に即してマーケットプレイスの原則を議論するため、メルカリが過去に、出品を認めるかどうか迷った事例を準備するという。
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