サイバー攻撃の起点の拡大や烈度の増大が続いていることを受け、経済産業省はこのほど、最近の攻撃の特徴と目的を明らかにした上、企業やその関係機関などが対応する際に注意すべき点を整理し、企業経営者向けにサイバーセキュリティの取組の強化に関する注意喚起を行った。
コロナ禍で3月以降サイバー攻撃は激化
同省によると、コロナ禍が拡大した3月以降、インシデントの相談件数が増加している。サイバー攻撃は規模や烈度の増大とともに多様化する傾向にあり、実務者がこれまでの取組を継続するだけでは対応困難になっている。アップデートなどの基本的な対策の徹底とともに、改めて経営者のリーダーシップが求められている。
「ランサムウェア攻撃」について特筆
攻撃は格段に高度化し、被害の形態もさまざまな関係者を巻き込む複雑なものになり、技術的な対策だけではなく、関係者との調整や事業継続などの判断が必要になることも。特にランサムウェア(Ransomware)攻撃による被害への対応は企業の信頼に直結する。経営者でなければ判断できない問題だ。
ランサムウェアとは、「Ransom(身代金)」と「Software(ソフトウェア)」を合わせた造語で、ターゲットとなる企業や組織内のネットワークへ侵入し、パソコンの端末やサーバ上のデータを窃取した後に、一斉に暗号化してシステムを使用不可能にし、脅迫をするサイバー攻撃だ。
「二重の脅迫」によって、顧客情報を露出させることになるリスクに直面。日常的業務の見直しを含む事前対策から、情報露出にする事後対応まで、経営者でなければ対応の判断が困難だ。金銭の支払いは犯罪組織への資金提供とみなされ、制裁を受ける可能性のあるコンプライアンスの問題でもある。
海外拠点とのシステム統合に課題も
また、海外拠点とのシステム統合を進める際、サイバーセキュリティを踏まえたグローバルガバナンスの確立が求められる。国・地域によってインターネット環境やIT産業の状況、データ管理に係るルールなどが異なり、システム統合を通じてセキュリティ上の脆弱性を持ち込んでしまう可能性もある。拠点の環境をしっかりと評価し、リスクに対応したセグメンテーションを施したシステム・アーキテクチャの導入や、拠点間の情報共有ルールの整備などが必要だ。
高度攻撃メール「エモテット」再活発化
さらに、ウイルスへの感染を誘導する高度化した攻撃メール「エモテット(Emotet)」の手口にも言及。実在の相手の氏名、メールアドレス、メールの内容などの一部を流用して正規のメールへの返信を装っていたり、業務上開封してしまいそうな巧妙な文面となっている場合があり、注意が必要だ。
実際に、7月末から国内外に向けてエモテットに感染させるメールの配信活動が再び活発化。過去に感染した被害組織から窃取された情報を使って、なりすまされたメールが配信されている。情報の窃取等の直接攻撃に悪用されることに加え、他のウイルスによる攻撃の侵入口として悪用されるウイルスでもあり、一度感染すると拡散していく傾向にある。
VPN機器の脆弱性を悪用してネットワークへ侵入する「ネットワーク貫通型」も紹介。8月に、Pulse SecureVPN製VPN機器の脆弱性が悪用され、国内外900以上の事業者から VPNの認証情報が流出。11月には、Fortinet製品のVPN機能の脆弱性の影響を受ける約 5万台の機器に関する情報が公開。認証情報が悪用されることで容易に侵入される恐れがある。
どちらのケースもすでに悪用されている可能性があるため、機器のアップデートや多要素認証の導入といった事前対策に加え、事後的措置として侵害有無の確認や、パスワード変更などの対応が必要になっている。
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