MMD研究所がこのほど発表した「コロナ禍での総合ECサイトに関する調査」によると、総合ECサイト(ECモール)の利用頻度は2020年3月以前の「2か月に1回未満」が、同年4~7月は「月に1回」が最多となっていた。巣ごもり需要で急伸したEC市場は今後、デジタルシフトの動きとともに、中長期的にも堅調に拡大していくことが予想されるとしている。
「利用していない」は10%以下に
感染拡大前後の利用者実態を探ろうと、20年10月31日~11月2日に実施した。利用経験がある全国の15~69歳男女9010人にECモールの頻度を聞いたところ、同年3月以前は「2か月に1回未満」が最も多く27.0%だったが、同年4~7月は「2か月に1回未満」の利用者はおらず、「月1回」が26%台で最多だった。
同研究所によると、緊急事態宣言の発令~施行中を含む4~7月の期間、確かに巣ごもり需要は増えていた。感染防止対策を日常生活にとり入れた「新しい生活様式」が定着し始めた8~10月も「月1回」が26.9%と最多で、「利用していない」は10%以下にとどまった。やはり、ECサイト利用の日常化が進んでいることを示す結果となったとしている。
女性全世代と男性10・50代のECモール利用頻度が拡大
3月以前と8~10月の期間を抜粋し、ECモールの利用頻度として最も多かった項目を性年代別で見ると、女性全世代と男性10代、60代で利用頻度が増えていた。女性は「2か月に1回未満」だったのが「月1回」「月2~3回」と増えており、定期的に総合ECサイトを利用するようになったことがうかがえる結果となった。
特に、60代は男性が「月1回」から「月2~3回」、女性が「2か月に1回未満」から「月2~3回」へと増加しており、シニア世代がPCやスマートフォンから総合ECサイトを利用する頻度が高くなったことが分かる。
ECモールの利便性に気づき、日常的に利用も
需要拡大の実態は、「4月以降に増えた」が21.3%、「4月以降、利用開始した」が4.8%となり、コロナ禍での総合ECサイト需要拡大は26.1%に達していた。それらの理由は、コロナ禍に直結する理由は5位の「感染が不安だから」(26.0%)のみ。1位の「自宅まで届けてもらえる」(40.3%)、2位の「重いものや大きいものが購入できる」(33.3%)、3位の「時間を気にせずに買い物ができる」(32.4%)などは、コロナ禍の解消後でも共通する利点といえる。
外出自粛などで不便が強いられるコロナ禍だが、一方でECモールを今まで利用してこなかった人が、便利さに気づき日常使いをするようになったケースもあると考えられる。1、2位の利点はシニア世代にも適する利点であり、シニア世代のニーズに応えられる見込みのあるEC市場拡大はアフターコロナも続くと考えられる要因となっている。
ECモール利用の理由、Amazon「品揃え」・楽天市場「ポイントが貯まりやすい」
日本のEC市場拡大をけん引すECモールの流通総額上位3サイトも検証した。19年の国内EC売上高は、Amazonが1兆7290億円、楽天市場(トラベルなどを含む)が3兆8595億円、Yahoo!ショッピングが8519億円。これら利用上位のECモールが持つ強みは、コロナ禍で利用を開始したユーザーが挙げた理由と共通するところがある。
それによると、Amazon利用者は「品揃えが豊富」が36.3%、「商品が探しやすい」が27.4%、「商品が届くまでの期間が短い」が25.7%。楽天市場利用者は「ポイントが貯まりやすい」が40.1%、「ポイントが使いやすい」が36.9%、「品揃えが豊富」が35.8%となり、Yahoo!ショッピングの利用者(148人)は「品揃えが豊富」が最も多く29.7%、次いで「ポイントが使いやすい」が27.7%、「ポイントが貯まりやすい」が25.0%だった。
同研究所によると、Amazonはフルフィルメントセンターによる独自の物流網の構築が優位となっており、特に商品が届くまでの期間が短いというメリットは他のサイトはランクインしていない強み。また、中古品を出品するマーケットプレイスまで含めると、品揃えは他サイトよりも豊富と思うユーザーも多い。
楽天市場の強みはポイント関連が1位・2位を占める
楽天市場は、ポイント関連の強みが1、2位を占めている。ポイント還元率は基本的には1%だが、楽天トラベル、楽天銀行、楽天カードなど、グループ内のサービスで使用できる共通ポイント制度により、還元率を高めやすくなる。また、楽天Edyでの支払いも還元でき、楽天経済圏によって優位となったといえる。
Yahoo!ショッピングは、テナント型ECモールであることは楽天市場と同様だが、異なるのは「品揃えが豊富」が1位だった点。サイトは13年に出店料と月額利用料を無料化したことで、19年には87万店舗を超えた。上位3サイトの中では圧倒的に出店店舗数が多いことが優位となったと考えられる。2、3位のポイントに関する強みに関しては、ソフトバンクユーザーやPayPayユーザーの還元率が有利となることが理由と考えられる。
まとめとして同研究所は、今回挙げられた総合ECサイトの利点の数々は、ますます浸透していくことを促す要因と考えられ、シニアがデジタルシフトした際にも強みとなる。また、5Gの普及に伴う新たな販売形態でECサイトの可能性はさらに広がるだろうと考察している。
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