(株)矢野経済研究所が12日発表した「ラストワンマイル物流市場に関する調査」によると、2020年度の市場規模は前年度比27%増の2兆5380億円と推計。ラストワンマイル物流は人々の生活を支えるインフラとして貢献し、巣ごもり需要で大きく伸長する結果となったとしている。
ラストワンマイル物流が「人々の生活を支えるインフラ」に
調査は4~6月。「通信販売」「ワンタイム型デリバリー」「定期販売型デリバリー」「個人間宅配」の4分野のBtoC物流に関わる事業者、管轄省庁などを対象とした。それによると、20年度の市場規模は、同27%増の2兆5380億円と推計した。コロナ禍の影響によるライフスタイルの変化に伴い、「人」から「物」が動く時代へ。こうした顕著な移り変わりの中、ラストワンマイル物流が「人々の生活を支えるインフラ」として貢献したといえそうだ。
主な市場拡大要因として、(1)通信販売市場の拡大に伴う宅配便取扱個数の増加、(2)デリバリー機能を持たない飲食店の代わりに配達を担う「配達代行サービス」の拡大、(3)高齢者をはじめとしたネットスーパー利用の拡大――などを挙げている。課題とされている再配達は、コロナ禍の影響で在宅率の増加に加え、「置き配」「宅配ボックス」などの普及で受け取りの多様化が進み、都市部を中心に減少傾向にある。
「配達代行サービス」に注目
市場拡大要因の1つ、「配達代行サービス」に注目が集まっている。調査では、貨物輸送を本業として行う物流事業者ではない、第三の事業者によるラストワンマイル配送を指している。飲食店側からすると、自社配送機能を持たずにデリバリー事業を開始することができ、20年4~5月の緊急事態宣言下で利用する飲食店が急増した。
利用者からみると、配達代行サービス事業者のプラットフォームに掲載された多くの飲食店から好きな料理を選んで、自宅まで届けてもらえる便利なサービスであり、需要は拡大している。今後は構築した配送サービス体制を活かし、料理以外のデリバリーまで分野を拡大することで、市場は拡大していくと予測する。
通販市場拡大に伴いラストワンマイル物流市場も拡大傾向に
同研究所は21年度のラストワンマイル物流市場規模見込みを2兆7610億円、22年度を2兆8560億円、23年度は2兆9250億円とした。市場の約6割を占める通信販売が今後も拡大傾向と見られることから、これに牽引される形で今後も堅調に推移するとの見通しだ。
一方、通販市場の荷物量はいずれピークを迎える可能性や、人口減少(消費者数減少)、配送を担うドライバー不足に対する根本的な解決策がないことを課題に挙げる。実験段階の配達ロボットや、ドローンを活用した新しいアプローチで物流スキームを構築する新規参入事業者が今後登場することで、市場がさらに活性化すると考えられる。
「送料無料」はドライバーが無料で配送しているという誤認が課題に
また、市場の大きな課題の1つとして「送料無料」という言葉を挙げた。「送料」が無料、つまり配送費用がタダで消費者まで運ばれるといった「誤った認識」を植え付けてしまっている可能性を指摘。この認識のもと適正な運賃が支払われず、さらに24年4月からドライバーの残業時間に規制がかかることで人手不足が加速することが考えられ、社会インフラであるラストワンマイル物流が滞る事態になりかねないとしている。
コロナ禍に伴ってラストワンマイル物流の重要性が高まっているいまだからこそ、消費者の意識に「送料」を再認識させる機会であり、「送料無料」という表現に対して考えていくタイミングだとする。「配送料はかかるもの」という意識づけが広まることで、ラストワンマイル物流は本当の意味で生活を支える社会インフラの1つとして確立されるとしている。
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