ライブコマースへの注目が高まっている。「通販通信ECMO」でもライブコマース関連の記事は多くのアクセスを集めている。特に軽井沢発のクラフトビール『よなよなエール』などを製造販売する(株)ヤッホーブルーイングが昨夏に、「au PAY マーケット」のライブコマースで『クラフトビールはじめてセット』を1万セット販売したという成功事例は記事公開から約1年を経てなお注目を集めている。今回はヤッホーブルーイングと、ライブコマースのプラットフォーマー側の話からライブコマース成功のコツを探る。
ヤッホーブルーイング公式通販サイト「よなよなの里」責任者の植野浩樹氏
au PAY マーケットでビール1万セット販売
ヤッホーブルーイングでは2020年7月に、auコマース&ライフ(株)が運営する総合ショッピングサイト「au PAY マーケット」のライブコマースでクラフトビールを紹介。お試しセット商品の販売数が1万セットを突破するという成果を収めた。「au PAY マーケット」内においては、「ビール・ワイン・お酒」カテゴリで2020年8月に最も売れた商品ともなった。
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ヤッホーブルーイングがライブコマースの取り組みをするプラットフォームとなった「au PAY マーケット」では、「ライブコマースの視聴数と購入数は、いずれも約半年で130%増といった伸びを見せている」という。ヤッホーブルーイング以外のライブコマース事例でも「トップラインとしては同等の売れ行きを見せるケースもある」といい、ライブコマースでの成功事例は徐々に増えているといえそうだ。
ヤッホーブルーイングの植野浩樹氏は「ライブコマースでの1万セット販売は予想の遥かに上回るものだった」と振り返る。「当初はライブコマースで販売するということのイメージがつかなかった」という植野氏だが、成功の要因の一つとして「番組に、ライブコマースならではの楽しさや魅力が詰まっていたこと」をあげた。
ライブコマースは視聴者の反応がリアルタイムに確認でき、新しい発見があったとも話す。「番組で(ビールの)味わい・香りなどに触れた際に、チャットでユーザーがどんなリアクションをしているかなど参考になった。また、『ヤッホーのTシャツがかわいい』など思いもしなかった反応があることも興味深かった」(植野氏)と言う。「視聴者とのコミュニケーションから番組が進み、双方向ならではの展開がつくられていく」というのもライブコマースならではの醍醐味と感じたそうだ。「チャット上では、視聴者同士の交流も発生して、もともと当社のビールのファンの人が、ビギナーからの質問に応えてくれたりする。チャット上の乾杯など、当社のオンラインイベントをすでに見たことがある人なども場を盛り上げてくれた」(同)とライブコマースならではのコミュニケーションの盛り上がりがあったことも特徴だったと話す。
視聴者の層については、「きちんとデータを取っているわけではないが、チャットの様子を見る限り当社のことを良く知ってる層は2~3割ほどだったと思う。購入に至ったデータから見ると、我々がリーチしきれていない層が番組をみてくれたと感じた」(植野氏)とみている。
「5種5本の飲み比べセット」で成功
ライブコマースで多くのユーザーに魅力に感じてもらうコツについても聞いた。「当社の場合、5種5本の飲み比べセットがライブコマースで1万セット販売が出来た。やはり手軽・買いやすいといったお試しセットなど、もともと転換率が比較的高い商品がライブコマースでも売りやすいのではないかと感じる。動画という形での訴求によってさらに転換率をアップさせられるのだと思う」(植野氏)と分析する。
ヤッホーブルーイングでは動画の訴求について「インフルエンサーなど第3者が商品について語る、というのは説得力が高まると感じる。当社の場合はその場で出演者が試飲した感想を伝えてくれるので、視聴者は共感したり興味を持ってくれやすかったと思う」(植野氏)とみる。
au PAY マーケットでも「ライブコマースの実績ベースでは食品やコスメが比較的よく売れているが、カテゴリによる売れやすさや売れにくさの差はそれほどない」としており、「商品ジャンルというよりは、静止画だけでない動画によるプラスアルファがだせるものが売れやすい」と指摘。やはり動画ならではの訴求ポイントの有無がライブコマース成功のカギとなるようだ。動画訴求の注意点として「これまでの傾向から、動画向きだとしても内容が細かすぎてもCVに直結しづらいのではという印象はある」とした。また、売れるコツとして「エンゲージメントが強く、エンタメ要素と売りの要素のバランスの良い演者の起用」「トライアル的な価格での案内すること」もあげた。
課題は「認知」「UI/UX」
ヤッホーブルーイングの植野氏にはライブコマースの課題感も聞いた。「ライブコマース自体の認知がまだまだ伸びしろがあると感じている。まずはいかに認知を広げるかが第一」と指摘。そのほか「プラットフォーム内の導線設計などUI/UXのありかたも発展途上」ともした。「スマホベースで考えると、どうしても小さい画面の中で動画の視聴と購買アクションを起こそうとすると不便になりがち。たとえばカート操作をするためにライブ進行中の動画の窓が小さくなるのがストレスと感じるユーザーもいると思う。一つのデバイス上でも、ユーザーにストレスフリーにお買い物をしてもらう工夫作りが重要と思う」とした。
なおau PAY マーケットではライブコマースの課題解消に向けて様々な取り組みを行っている。UI/UXの開発などはもちろん、認知向上・集客拡大に向けては「ニュースアプリ『Gunosy(グノシー))との同時配信など、露出を高めている。そのほか、よしもと興業のお笑い芸人さんとの番組の定期配信などを強化している」と話す。そのほか、演者のSNS経由による流入増や、auの「三太郎の日」を活用したキャンペーン企画を拡充するという。
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ライブコマースの今後の期待感についても話してもらった。ヤッホーブルーイングの植野氏は「中国など海外での先行した成功事例もあり、今後日本でも間違いなく伸びていくジャンルではあると思う。5G普及などで動画に対するモチベーションやポテンシャルは変わってくる」という期待があるとし、「ECサイト・アプリ自体がライブコマースの融合するという一連性が確立し、『ライブコマースでの買い物が標準』と捉えるユーザーが登場することにも期待したい」と話した。
au PAY マーケットでも「5G時代において、ライブコマースを含む動画事業をどう回していくかは大きなテーマ」という。その上で「新たにauPAYマーケットでスタートした、旅行などといった“コト系商材”のライブコマースもチャレンジしていきたい」と意気込む。また「au PAY マーケットの出店店舗さまが、自主的にライブコマースにチャレンジできるような仕組みも今後作りたいと考えている」と展望を明かした。
販売事業者のみならずプラットフォーマーらの様々なチャレンジを通じて、ライブコマースの成功事例が登場してくることに期待したい。
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