(株)矢野経済研究所が13日発表した『国内インポートブランド市場に関する調査』のまとめによると、2020年の小売市場は、コロナ禍の影響を受けて前年比25.2%減と大幅な落ち込みとなったものの、一方でマーケットを支える日本人富裕層の消費が続く限り、21年は前年を上回ることは間違いないとの見通しを示した。
インバウンド皆無も、海外旅行や外食のコト消費分がブランド品購入回ったか
調査対象のインポートブランド市場は、従来から算出していた市場規模(主要10アイテム分野)に5アイテムを追加し、次の主要15アイテム分野とした。「レディスウェア」「メンズウェア」「ベビーウェア」「バッグ・革小物」「シューズ」「ネクタイ」「スカー フ・ショール・ハンカチ類」「レザーウェア」「ベルト」「手袋」「ウォッチ」「ジュエリー」「クリスタル製品・陶磁器類」「アイウェア」「筆記具」で、いずれも欧州、および米国からの輸入品に限られる。
20年の国内インポートブランドの小売市場規模は、前年比25.2%減の1兆9283億円と推計した。1年を通じてコロナ禍での営業を余儀なくされた。インバウンド(訪日外国人客)もほぼ無いに等しい状態であり、かつてない厳しい状況となった。一方で株高が続いており、国内富裕層はいままでに増して金余りの状態になっていた。海外旅行や外食などのコト消費分がブランド品購入へ回ったことで、落ち込みはこの程度にとどまったと見られる。
ブランド各社はほぼ前年割れも
ブランド各社の動向としては、ほとんどが前年割れとなったものの、国内富裕層に強いブランドほどその落ち幅は小さく、インバウンドに強く支持されていたブランドが大きく落ち込む結果となっている。また、コロナ禍でも新規出店やコラボ企画など積極的に仕掛けていたブランドは健闘した様子が見られた。
唯一大きく拡大したのがEC販路。店舗での集客・販売力が落ちた状況下で、コロナ禍前までに自社ECを整備・強化していたブランドにとっては、大きな助けになった。また、消費者のネットリテラシーが格段に上がって客層に広がりが出ている上、消費者のSNSをはじめとしたネットに触れる機会も増加したことで、デジタルプロモーションの効果も拡大している。
リアル店舗の新規獲得が難しい状況でZOZOや楽天に出店する店舗も
なお、リアル店舗への集客による新規獲得が難しい状況で、ZOZOTOWNや楽天ファッションのような集客力の高い大手ECモールへ出店をするブランドも増加した。コロナ禍では、店舗休業や密を避けるための新たな販売手法として、ZOOMやLINEを使ったリモート接客に着手するブランドも増加し、パーソナルな繋がりがより強化されている。
インポートブランド小売市場にとって、コロナショックはリーマンショックとは大きく異なる状況だった。GDPは並ぶ落ち込みだったが、リーマンショックでは株価が暴落しその後数年低迷したのに対し、今回の株価の落ち込みは一時的にとどまり、その後は高値で推移した。
いまだに感染拡大が続く中、客足は確実に遠のくことから一般客の消費は厳しくなる。富裕層中心のマーケットであるとは言え、中間層やミレニアル層も十分なシェアがあり、市場へのマイナス影響は否めない。しかし、金融資産が膨らんだ富裕層の国内消費が続くかぎり、21年は20年のマーケットサイズを上回ることは間違いなく、小売市場規模は前年比13.6%増となる2兆1911億円を予測している。
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