今や健康食品の主流となりつつある機能性表示食品。届出件数も市場規模も順調に伸ばしている。新規成分を配合した商品や、新たな機能性をうたう商品が登場するなど話題も尽きない。2021年の機能性表示食品をめぐる動向を振り返る。
21年は1100件超の届出
機能性表示食品の届出は、制度がスタートした2015年4月からこれまでに4829件(12月19日現在)が公表された。届出件数は増加傾向にあり、21年は1107件(同)を数える。市場規模も20年度に3000億円を突破、その後も拡大を続けている。
一方、特定保健用食品(トクホ)の許可件数はジリ貧の状況にある。許可件数は制度スタート以降の30年間で1069件。機能性表示食品に大きく水をあけられている。市場規模も日本健康・栄養食品協会の調べによると、20年度には5610億円と前年度から883億円減少した。
機能性表示食品の人気はトクホを抜き去り、業界の関心をほぼ独占。ネット広告やテレビCMをはじめ、消費者が機能性表示食品の宣伝を目にする機会が増えている。
配合成分のトップ3はGABA、難消化性デキストリン、DHA・EPA
ファーマフーズの調査によると、機能性表示食品に配合される成分のトップ3は「GABA」「難消化性デキストリン」「DHA・EPA」。
調査は、制度開始から21年10月末までに公表された全届出を対象に実施。成分別の届出件数を取りまとめた。
1位はGABAで568件。GABAの正式名称はγ-アミノ酪酸。アミノ酸の1種で、さまざまな動物や植物に含まれている。主な機能性は、ストレスや疲労感の緩和、血圧が高めの人のサポート、睡眠の質の向上など。
2位は難消化性デキストリンで403件。トウモロコシなどから製造され、機能性表示食品では水溶性食物繊維として用いられる。整腸作用、食後の血中中性脂肪や血糖値の抑制作用がある。
3位はDHA・EPAで253件。イワシやサバなどの青魚に多く含まれる。DHA・EPAは最も多く研究されている成分の1つ。中性脂肪の低下や認知機能のサポートを訴求する。
4位以下は、ルテイン・ゼアキサンチン(202件)、イチョウ葉由来フラボノイド配糖体・テルペンラクトン(154件)、ブラックジンジャー由来ポリメトキシフラボン(139件)、ビフィズス菌(136件)などとなっている。
新規成分の登場
21年に登場した新規成分はそれほど多くない。
オリジナル成分の「メロン由来SOD(スーパーオキシドジスムターゼ)」を配合した届出が公表された。ただし、SOD自体は目新しいものではない。メロン由来という点が新規であり、「紫外線刺激から肌を保護するのを助ける機能性」を訴求する。
「越後白雪茸由来ピロールアルカロイド」はこれまでになかった新規素材。越後白雪茸は新潟県内で発見され、シイタケやマイタケと同様の担子菌類の特徴を持つ。「健常域でやや高めの肝機能を評価する指標である酵素値のひとつ(AST)の改善に役立つ」旨を表示する。
「総バコサイド」も新たな成分。スクロウキ科のバコパモニエラという植物に含まれる。「中高年者の認知機能の一部である記憶力(数字や文字などを思い出す力)を維持する機能」を持つ。
乏しかった新規の機能性
21年は新たな機能性についても、大きな動きは見られなかった。「免疫機能」の登場で大騒動となった20年とは対照的な1年となった。
そのなかで注目されたのは、「DHA、EPA、DAGE(ジアシルグリセリルエーテル)」を機能性関与成分とするサプリメント。
「一時的に睡眠に不満を感じている健康な方の深睡眠とレム睡眠の割合を増加させることで、睡眠の質を向上させる」などと表示。深睡眠とレム睡眠の割合に着目した点が、従来よりも踏み込んだ表現となった。
「免疫機能」の届出が続々と
ここ最近、健康食品業界の関心を独占しているのが、「免疫機能」の機能性表示食品と言える。その第1号はキリンビバレッジのプラズマ乳酸菌を配合した「iMUSE」で、20年8月に届出が公表された。
それ以降、次々とプラズマ乳酸菌を機能性関与成分とする届出が行われ、12月19日現在で30件を数える。その背景の一つに、キリングループ以外へもプラズマ乳酸菌の原料供給を開始したことがある。
これにより商品の裾野が広がった。清涼飲料水やサプリメントをはじめ、ヨーグルト、グミ、ゼリー、のどあめ、ブラウニー、チョコレート、ココアなどが登場している。
ただし、表示内容は第1号の届出と同じ「健康な人の免疫機能の維持に役立つ」旨にとどまっている。この表現が「事実上の上限」(消費者庁)とみられる。そこから先に踏み込むと、医薬品の“におい”がしてくるためだ。
発売された主な商品を見ると、キリンの「iMUSE」をはじめ、「免疫サポート」(ファンケル)、「inのど飴」「免疫CARE」(森永製菓)などがある。
キリンホールディングスの発表(10月19日)によると、プラズマ乳酸菌関連事業の21年1~9月累計販売額は前年比6割増を記録。“先行者利益”を享受しているようだ。
日本抗加齢協会の「免疫機能」に関する見解が話題に
21年に健康食品業界で話題となったのが、日本抗加齢協会が9月1日に発表した「免疫関係の機能性表示の科学的根拠に関する考え方について」。
これは、「免疫機能」の機能性表示食品の届出を行う場合、どのような点をクリアすればよいのかを整理したもの。プラズマ乳酸菌以外の成分による届出が公表に至っていないことから、同協会は「機能性表示食品の免疫機能性表示に関する検討会」を発足。届出要件に関する独自の考え方を整理したわけである。
主な内容を見ると、プラズマ乳酸菌の「樹状細胞」に限らず、「食細胞」「NK細胞」「T細胞」などの活性化も有用と指摘。これらの免疫指標が複数動いていることが望ましいとの考え方を示した。
また、免疫指標が免疫全体を調整することについて科学的に説明しなければならないため、作用機序の明記を必須とした。
これらはおおよそ国の届出ガイドラインの範囲内だが、あくまでも同協会の見解にすぎない。議論の席に消費者庁の職員も参加していたことから、業界内では国のお墨付きを得たという誤解が生じていた。
しかし、消費者庁では「日本抗加齢協会が(業界)団体として出すものであり、消費者庁としては従来の姿勢のまま対応していく」(食品表示企画課)と説明している。つまり、現行の届出要件のハードルを下げる予定はないという。
21年は届出の撤回も100件超に
21年は届出の撤回も100件を超えた。大きな動きとしては、4月までに「甘草」由来成分を配合した機能性表示食品の届出がすべて撤回されたことがある(その後、改めて2件の新たな届出が公表されている)。
撤回した理由について、各社は「届出表示の見直しのため」、「根拠論文の見直しのため」などと説明している。
また、21年には業界内で、20年4月から運用が始まった消費者庁の「事後チェック指針」への対応が進んだとみられる。
事後チェック指針は、機能性を証明するためのヒト試験や研究レビューの留意点と、広告・表示の留意点を整理したもの。事後チェック指針の作成や質疑応答集の拡充により、少しずつではあるが、各社の届出資料の内容も一定レベルに向かいつつある。
今後の課題としては、研究レビューの質のさらなる向上、安全性確保の強化などが挙げられる。加えて、届出資料の事前チェックを行う消費者庁のマンパワーには限界があり、増加する一方の届出をどのように迅速にさばくかという問題も横たわっている。
(木村 祐作)
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