2022年には取引デジタルプラットフォーム消費者保護法、改正特定商取引法が施行。アフィリエイト広告の健全化に向けた対策も整備される。加えて、食品表示のルール変更も予定されている。ネット通販企業にとって重要な1年となりそうだ。
1月にアフィリエイト広告検討会が報告書
ネット通販企業にとって重要な動きが1月に予定されている。消費者庁の「アフィリエイト広告等に関する検討会」は1月下旬に開く最終会合で、報告書を取りまとめる。当初、昨年12月中の取りまとめを計画していたが、意見調整を慎重に進めるため、予定が1カ月ずれ込むことになった。
これまでの検討の結果、消費者を誤認させるアフィリエイト広告を排除するため、広告主に対応を求める方針が示された。主な対策は次の4点。
・アフィリエイト広告が第三者による公平な記事ではなく、商品の「広告」である旨を明記。
・消費者の苦情などを受け付ける連絡窓口を設置。
・表示内容を確認・保存。
・アフィリエイターを対象に景品表示法の定期的な研修を実施。
消費者庁は検討会の報告書を受けて、順次実施に移す。広告主にはアフィリエイト広告の管理の強化が求められる。
ネット通販企業にとって重要なのは、アフィリエイト広告をめぐる問題は販売会社の責任となる点を認識すること。一部の企業では「アフィリエイト広告は安全地帯」とうそぶいているが、報告書はそうした考え方を全否定する内容になると予想される。
デジプラ法が5月に施行
22年の大きな動きとして、5月に取引デジタルプラットフォーム消費者保護法(デジプラ法)の施行がある。デジタルプラットフォーム(DPF)上の取引で消費者トラブルが増加していることを受けて、DPF運営業者の役割を規定した。
消費者庁は1月17日まで、デジプラ法の政令(案)などについてパブリックコメントを募集中。2月に政令・内閣府令・指針を公表する。DPF運営業者はこれらを十分に理解し、施行までに必要な対応を進めることになる。
DPF運営業者に求められる努力義務は次の3点。
(1)販売業者と消費者が円滑に連絡を取れる措置。
(2)販売条件などの表示ついて苦情が寄せられた場合に必要な調査の実施。
(3)販売業者に対して身元確認のための情報提供を要請。
当面は業界の自助努力に期待する方針だ。だが、消費者トラブルが一向に減らないようだと、近い将来、義務化などの厳しい措置に踏み切る可能性もある。
DPF運営業者には、販売業者と消費者が連絡を取れるように、例えば「メッセージ機能」を付加するといった対応が必要となる。販売業者の身元や連絡先を日頃から確認しておくことも求められそうだ。
販売業者にとっても“対岸の火事”ではない。デジプラ法は、消費者が損害賠償請求を行う場合、販売業者に関する情報の開示を請求できる権利を付与。これにより、広告内容と異なる商品などをDPFに出品した販売業者に対し、消費者が損賠賠償を請求するケースが増える可能性がある。
そうした事態を未然に防ぐためにも、DPFに出品する販売業者は、表示・広告を再点検しておくことが大切となる。
「CtoC取引」のDPF運営業者の役割も検討へ
デジプラ法の施行と同時に、官民協議会が正式に発足する。関係省庁、事業者団体、消費者団体などで組織。悪質な販売業者への対応などを協議する場となる。
デジプラ法はBtoC取引を対象とするため、CtoC取引のDPFをめぐる問題は残されたまま。このため、消費者庁は22年度中に、CtoC取引のDPF運営業者が果たすべき役割について検討に乗り出す方針だ。
改正特商法が6月に施行
6月には改正特定商取引法が施行される。健康食品などのネット通販で横行している悪質な定期購入商法にメスを入れる。罰則も強化され、抑止力が期待される。
改正法は、悪質な定期購入商法に「直罰」を適用。従来の特商法や景表法による行政処分だけでなく、罰金や懲役刑を科すことが可能となる。
また、誤認を与える表示によって定期購入契約を結んだ消費者には、申し込みの取消権を認める。販売会社に対しては、契約解除を妨害する行為を禁止した。
申し込み画面の表示ガイドライン
改正特商法に違反しないためには、法の施行と同時に運用開始となる「通信販売の申し込み段階における表示についてのガイドライン」の順守が重要となる。
同ガイドラインは昨年11月24日~12月23日まで、パブリックコメントを募集。順調に行けば1月中にも公表される見通しだ。
本来、同ガイドラインは消費者庁次長から経済産業局長に向けた事務連絡文書だが、「事業者に広く知ってもらうため、パブリックコメントを実施した」(取引対策課)という。
法の施行に向けて、ネット通販企業では同ガイドラインへの対応を急ぐことになる。その際に注意しなければならないのは、同ガイドラインで示す「違反しないと考えられる事例」「違反する恐れのある事例」ともに、各社の表示方法とは一致しない点だ。最終的には「ケースバイケースで判断する」(同)ことになるため、自社の表示内容を慎重に点検する必要がある。
「健康食品」の広告に関する相談が激減
法改正やアフィリエイト広告検討会の動向は、既に関連業界に影響を及ぼしている可能性がある。
(公社)日本広告審査機構の21年度上半期審査状況によると、「健康食品」の広告に関する相談は前年同期の約3分の1に減少。一方、「化粧品」は倍増した。東京都の21年度上半期消費者相談件数も「健康食品」が前年同期から6割減となるなど、同様の傾向を示している。
この背景として、アフィリエイターなどが、取り締まりが厳しくなった「健康食品」を避け、ほかの分野へ移行していることが挙げられる。
消費者契約法の改正案、国会提出へ
消費者庁は今春の通常国会に、消費者契約法の改正案を提出する。同法は、消費者が契約を取り消せる違法行為を規定。今回の改正では、違法な勧誘である「困惑類型」に、契約の判断を焦らせる行為を追加する。
消費者庁の検討会が取りまとめた報告書には、「消費者の検討時間を制限して焦らせたり、広告とは異なる内容の勧誘を行って不意を突いたり…(略)…消費者が慎重に検討する機会を奪う行為」についても違法とする考え方が示された。
ネット通販でも、「あと10分で申し込みを締め切る」など、事実と異なる表示が散見される。こうした行為にも法のメスが入る可能性がある。
4月1日、新たな原料原産地表示制度が完全施行
加工食品を販売するネット通販企業にとっては、食品表示の動向にも細心の注意を払う必要がある。
4月1日には、加工食品の新たな原料原産地表示制度が完全施行される。3月末までを経過措置期間としている。
新たな表示ルールは、「国別重量順表示」が基本となる。原材料が生鮮食品の場合は「豚肉(アメリカ)」、加工食品の場合は「りんご果汁(ドイツ製造)」などと表示する。
2カ国以上の原産地の原材料を使用し、産地や使用割合が変動する商品については、「豚肉(アメリカ又はカナダ)」という「又は表示」も可能。さらに、3カ国以上の海外の原産地となる場合は「豚肉(輸入)」といった「大括り表示」も認める。
完全施行後、新たな表示ルールを順守していない場合は食品表示法に抵触する。3月末までに、容器包装の表示を最終点検することが重要だ。
「無添加」表示ガイドラインを3月に公表
消費者庁では、「無添加」「添加物不使用」といった食品添加物の表示ルールを検討している。3月に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を公表する計画だ。
同ガイドラインは禁止する表示を10類型に整理。「無添加だから安全」「無添加だからおいしい」と強調する表示も禁止する方針だ。
24年3月末までを経過措置期間とする予定。消費者庁の担当官は「本来、経過措置期間は必要ないが、包装資材の切り替えに一定期間が必要なことを考慮した」(食品表示企画課)と話している。
(木村 祐作)
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