2022.03.09 コラム
【2022年版】ユーザーエクスペリエンス(UX)総合解説|成功・失敗事例や効果的なデザインまで
ユーザーエクスペリエンスとは何か?なぜ今、注目されているのでしょうか?ここでは実際に成功・失敗した事例も紹介。また、導入の際に不可欠なUXデザインについてもわかりやすく解説します。
ユーザーエクスペリエンスとは?
ユーザエクスペリエンス(UX)とは、「ユーザー体験(User Experience)」の略称です。さまざまな製品やサービスを利用する際に、ユーザーが感じる印象や体験のことを指します。使いやすさや操作感だけでなく、満足感や感動、喜びなど、精神的な価値を重要視していることが特徴です。
最近よく聞くUXですが、なぜ重要視されているのでしょうか?
成功・失敗事例や効果的なデザインまで、色々な角度からUXについて総合的に解説していきます。
ユーザーエクスペリエンスが重要な理由
製品やサービスを唯一無二のものとするためには、必ずユーザーの「感情」がともなうというのがUXの考え方です。たとえば、他では味わうことのできないような感動体験ができるのなら、少し予算をオーバーしてでも、製品やサービスを購入した経験はありませんか?わかりやすくいうとUXとはそのような体験を作り出すことです。
UXがもたらす価値には下記のような3つがあげられます。
1. ユーザーに対して:満足度が高い
2. ビジネスに対して: 売り上げが上がる
3. ユーザーとビジネスに対して:「また利用したい」という気持ちになり、安定的な成長につながる
▽UIとUXの違いは?
UXと混同されがちな概念に「UI」があります。UIとは、ユーザーインターフェースの略称で、ユーザーと製品やサービスとの「接点(Interface)」を考える概念です。ここでいう接点とは、Webサイトやアプリなどの「見た目」や「使いやすさ」のことです。UIは、使われている画像、フォント、ボタンの操作性など、ユーザーが見て操作する時に接するすべての要素を指します。
対して、UXは、見た目や使いやすさだけでなく、製品やサービスを通じて得られるすべての体験のことを指します。たとえば、ECサイトにおけるUXは、デザインが「美しい・かっこいい」、レイアウトが「読みやすい」、購入方法が「わかりやすい」と感じることになります。さらに、注文した商品がすぐに届き「うれしい」、商品のクオリティが高く「満足」、問い合わせへの対応が丁寧で「安心した」などの、サービスを実際に利用した時の体験も含みます。
つまり、UIはUXの一部と考えると良いでしょう。UXはユーザーが体験するすべての事象を考えるものですが、UIはユーザーが体験する事象の中でも「接点」にのみ焦点をあてています。またUXはユーザーの感情に訴えかけることがもっとも重要視されている概念です。
【事例紹介】UX成功例と失敗例
UXは、ユーザーの満足度を高め、ビジネスの成長に貢献しそうだということがわかりましたが、具体的にはどのように活用されているのでしょうか?ここでは色々な企業に取り入れられているUXを具体的にご紹介します。
成功事例だけでなく、失敗事例も知っておくことで、UX導入の成功へより一層近づくことができるでしょう。
ユーザーエクスペリエンスの成功事例
それでは実際にどんな企業がUXの導入で成功しているのでしょうか?
これからあげる事例は、導入の際に参考になる点も多いかもしれません。
◎再購入提案/レコメンド秀逸:Amazon
いわずと知れた、世界最大級のECサイトです。すぐれたUXを提供しているECサイトとして、Amazonは非常に参考になります。
まず、それぞれのユーザーに合わせた商品情報の提示があります。過去の購入履歴から、再購入の可能性が高い商品を割り出し、「もう一度買いますか?」というメッセージとともに表示されます。ユーザーは、わざわざ検索しなくとも簡単に購入ができるので、良い顧客体験の提供になります。
また、レコメンド機能の精度も高く、閲覧中の商品と関連の高い商品を自動的におすすめしてくれます。たとえば、閲覧中の鍋に必要な、追加のふたなどをわざわざ検索する手間が省けたり、商品の比較検討がしやすいので、手軽な購入体験を提供しているといえるでしょう。
オンライン販売に特化したAmazonでは、長年の経験や改善による優れたUXのヒントが詰まっています。
◎主役体験こだわる最高峰UX:ディズニー
「幸福を感じてもらえる場所」というコンセプトの元、パーク設計の細かな部分や、スタッフの笑顔・接し方までこだわっていることで有名なディズニーランド。子どもだけでなく、大人も何度も行きたくなってしまうディズニーランドの魅力は、数あるUXの中でも最高峰のものといえるでしょう。
ディズニーランドでは、あらゆる場面で「ユーザーが主役」という概念のもとに設計・運営されています。たとえば、らせん状に設計されたパークのレイアウトは、来場したゲストが異なるエリアを自由に行き来しやすくするためのもの。また、ピーターパンの視点で旅をすることができるアトラクションなど、あらゆる場面で、ゲストが「主役」になるような工夫が凝らされています。こうした考え方はECビジネスを構築するうえでも役立つはずです。
UX改善における失敗事例
UX施策を誤ると、ユーザー離れや大きな売り上げ減少などを引き起こしてしまう場合もあります。
失敗事例から学べることは何なのか?ここでは実際の現場で何が起きたのか、具体的にご紹介していきます。
▲デザインでユーザー47%減少:Icons8
ミニマルなデザインが必ずしも悪いというわけではありませんが、ユーザーの行動や心理を考えないデザイン変更は、ユーザーの離脱につながってしまいます。
Icons8は、何万点にもおよぶアイコンやイラスト、画像などをダウンロードできるサービスを提供している企業です。ユーザーはデザイナーやデベロッパーが中心です。UXに通じているとも思える企業ですが、そんなIcons8も過去にサイトのデザイン変更により大きくユーザーを失った経験があります。
Icons8は、モダンでシンプルな新しいデザインでサイトのリニューアルを行ったのですが、ユーザーにとっては直感的なものではなくなってしまいました。以前は、アイテムごとの説明文も豊富で、他のユーザーからのコメントもわかりやすく表示されていたのですが、リニューアル後は説明文もコメントも非表示となってしまいました。アイテムを選ぶために必要な情報が激減したことで、ユーザーが必要な情報を得るには、さらにサイト内を検索しなければならなくなってしまいました。使い勝手が複雑になっただけでなく、結果的に、ユーザーのモチベーションを下げてしまい、ユーザー数は47%も減少してしまいました。
このように、表面的なデザインだけにフォーカスした偏った導入は、ユーザー離れを引き起こしてしまう場合もあるのです。この苦い経験から、現在のIcons8ではUXを重視したデザインになっています。
▲アンケート失敗→売上減:ウォルマート
世界最大のスーパーマーケット、ウォルマートでは、店内の商品陳列の「乱雑さ」を改善すべきかどうかを尋ねる顧客アンケートを実施しました。このアンケート結果に基づいて、顧客の希望通り、在庫を大幅に減らしてすっきりとした売り場に変更しました。これは、多くの時間や予算をかけた大掛かりなプロジェクトでした。ところが、顧客の希望を聞いたはずなのに、売り上げは185万ドルも減少してしまいます。
一見不可解にも思えるこの事態の原因は、そもそもの顧客アンケートの質問設定にありました。ユーザーの行動実態に基づかない仮説による極端な2択の質問で、誘導質問のようになされていたのです。この仮説では、店舗の入り口付近にあるバーゲン品の陳列をどれだけ顧客が好むかなどの理解が欠けていました。
顧客の声を聞こうとすることは悪いことではありませんが、実際の消費者行動をしっかりと調査してから、効果的な質問を設定する必要があったといえるでしょう。
多大な予算や時間を割いた大プロジェクトでしたが、ウォルマートではこのプロジェクトに関わったスタッフを解雇し、売り場を元に戻しました。
効果的なUX改善に必要な3つのこと
ここまでに成功事例や失敗事例を見てきましたが、効果的なUXに必要なこととは何なのでしょうか?
それは下記の3つに集約することができます。
1. 戦略やコンセプトを決める
「どんなユーザーがターゲットなのか?」「どんな体験を届けたいか?」などの方針を決めます。
ユーザー像(ターゲット)、ペルソナ、届けたい体験、体験後に感じてほしいことなどが、UX導入の際の要となります。
2. ユーザーを中心に考える
たとえば、ユーザーの視点が欠けた、デザイナーが満足するためだけのデザイン変更では本末転倒になってしまいます。
3. 検証と改善を続ける
時代に合わせて、ユーザーの嗜好も変化します。導入したUXが本当にユーザーのニーズを満たしているのか、検証し改善を続けることが大切です。
UXデザインとは
UXは「デザイン」と密接な関係があります。UXの導入にはUXデザインの存在が不可欠ですが、UXデザインとはいったい何なのでしょうか?
◇ユーザビリティだけではないデザイン
ユーザビリティ(使いやすさ)だけがUXデザインが目指すことではありません。もちろん、優れたユーザビリティなくして、優れたUXは実現できないのですが、使いやすさだけに注目するのは少し違います。
優れたUXデザインには、下記のような6つの要素がバランスよく取り入れられています。
1. 使いやすい: シンプル、操作が簡単、親しみやすい
2. 役に立つ: ニーズを満たす
3. 欲しくなる: 製品のビジュアルが魅力的で、ポジティブな気持ちを引き起こす
4. 見つけやすい: 製品やサービスの使用で問題が起きた時、解決方法が見つけやすい
5. アプローチしやすい: あらゆる人が使いやすい
6. 信頼感がある: 製品やサービス、それを提供している企業が信頼できる
UXデザイナーの役割とは
UXデザインを行う人を「UXデザイナー」とよびますが、しばしば「UIデザイナー」と混同されがちです。UIデザイナーは、製品などの表面的な部分、つまり主にビジュアル面でのデザインを行い「使いやすさ」を追求します。UXデザイナーの場合は、さらに深い部分まで考え、ビジュアルの裏にある機能面まで考えてデザインを行います。
ここで注意したいのは、UXデザイナーがユーザー体験を作り出すのではなく、「ユーザー体験を生み出すためのデザインを考える」という点です。
UX改善はユーザー理解なしには成立しない
ここまで、さまざまな角度からUXについて考察してきました。優れたUXを実現させるためには、まずはユーザーの理解が必要です。ユーザーが求めていることや行動傾向などへの深い理解があってこそ、満足度の高いUXを作り出すことができるのです。
ユーザーを中心にすえて、「この機能はユーザーの役に立つのか?」「これはユーザーに価値があるのか?」といった色々な角度から検証していく必要があります。ですので、UXを導入する際には、初期段階でユーザーリサーチにかなり多くの時間を割くことになるでしょう。ユーザーの理解や何度ものデザイン検証などを経て、ユーザーが本当に満足する、優れたUXは生まれるのです。
UXについてまとめ
製品やサービスの満足度の向上だけでなく、他社との差別化や安定したビジネス成長のために、優れたUXは欠かせません。成功・失敗事例などからもわかる、導入のコツを踏まえて、効果的にUXを導入したいものです。
また、UXの導入に不可欠なUXデザイナーの役割や求めることをしっかり理解しておくことが、本質的なビジネスの成功につながっていくでしょう。"
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