クラウドプラットフォームの提供などを手がける(株)セールスフォース・ジャパンは2日、Eコマース年次調査レポート『Eコマース最新事情』の日本語版を公開した。変革期を迎えているECの現状把握と、次の展開に備えている業界リーダーが何を重視しているかを探った。
店舗受取サービスなどを85%が導入済・または2年以内に導入予定
調査は2月。北米、中南米およびメキシコ、アジア太平洋、日本、ヨーロッパのB2B、B2C、B2B2C企業の責任者ら4102人に聴取し、10億人以上の一般消費者と企業の購買担当者の行動を分析した結果をまとめた。
調査では、組織のパフォーマンスに応じて回答者を3つに分類している。「デジタルリーダー」=自社組織をデジタルコマースに優れているとみなし、企業全体の成功に貢献していると考えている/「デジタルラガード」=優れているとみなしておらず企業全体の成功に貢献していると考えていない/「デジタルモデレート」=2つのカテゴリーに該当しない回答者。
コロナ禍は商取引のあり方を一変させた。2020年第1四半期~22年第1四半期にかけてデジタル注文が急伸。世界の同一サイト売上はB2Cで44%、B2Bで95%の伸びを記録した。同時に、対面での体験への熱意が下がっているわけではないことも、企業は認識している。
B2Cではオンラインで購入後、店舗受取のようなサービスでギャップを埋めようとしている。85%がすでに導入、または今後2年以内に導入予定と回答。B2Bでも売り手の69%が、営業担当者や販売代理店だけでなく、デジタルチャネルに依存してビジネスを展開している。
購入ジャーニーはさらに複雑化、B2Cは平均9つのタッチポイントが存在
デジタルコマースの普及に伴い、購入ジャーニーは複雑さを増している。B2Cでは平均して9つのタッチポイントで企業とやりとりしている。デジタルリーダーは先駆けてこのトレンドを活用しており、69%が過去2年以内に新しいデジタルチャネルに投資したと報告している。
デジタルリーダーとデジタルラガードの間で導入の格差が最も大きいチャネルは、マーケットプレイス、モバイルアプリ、ソーシャルメディアだが、世界経済が急速に変化し続ける中、多くの企業がデジタルリーダーに追いつきつつある。新しいチャネルに進出すると答えた割合は、すべてのカテゴリーでほぼ同じ。半数以上が2年以内の進出を予定していた。
B2B企業の33%が2年以内に自社マーケットプレイスの立ち上げを優先
将来計画について、デジタルリーダーの97%、デジタルモデレートの91%が、今後2年間に購入担当者がより大規模で複雑な注文をオンラインで行うと予測しているのに対し、デジタルラガードは62%だった。企業はオンラインによる顧客との直接取引を優先するようになっており、実際、B2B企業の54%はすでにウェブサイトを通じて最終顧客に直接販売している。
また、B2Bの購買担当者の91%が、企業が提供する購買体験を製品やサービスと同じくらい重要と回答。その期待に応えるため、B2Bの販売企業はより満足度の高いEC体験を実現している。これにはマーケットプレイスプラットフォームも含まれる。
B2Bの販売企業の33%が、2年以内に自社のマーケットプレイスを立ち上げることが優先事項としており、デジタルリーダーはデジタルラガードと比較して自社のマーケットプレイスを優先させる傾向が1.5倍高くなっている。また、大企業規模の組織は中堅・中小企業と比較して、購入ジャーニーを改善する方法を模索している可能性が1.6倍高かった。
EC企業の36%が今後2年間にファーストパーティデータ戦略に投資する予定で、デジタルリーダーの53%が顧客の行動理解のために効果的と回答。ブランドを選ぶ際、ビジネスの購買担当者の54%、消費者の51%が利便性を重視しており、ほぼすべてのB2Cの販売企業は、少なくとも1種類の購入受取オプションを提供しているか、2年以内に提供する予定でいる。
デジタルリーダーの61%が後払い決済を提供
決済に関しては、デジタルリーダーの61%が後払い決済のような分割払いを提供、32%が2年以内に追加を予定。併せて、全組織の51%は不正行為が懸念事項と認識し、デジタルリーダーの54%が新しい決済サービスを導入する際に懸念されると回答している。
不正行為はすべてのパフォーマンスカテゴリで懸念事項の1位だったが、不正行為が決済技術の導入に与える影響は企業規模によって違い、不正行為に対する懸念は、中堅(50%)、中小(47%)企業に比べて大企業規模の組織(64%)のほうが大きいことが分かった。
EC事業で新たなデジタル施策を行う上で一番の課題となるのが技術的な制約。調査では、企業を阻む要因の1つとしてバックエンドの動作が遅く複雑であることが示された。34%の組織が、デジタルストアフロントの変更に数週間~数か月かかると回答していた。
デジタルリーダーの61%が後払い決済を提供
デジタルな機敏性を実現するために、多くの企業がヘッドレスアーキテクチャに注目。ヘッドレスアーキテクチャを採用している企業の77%は、デジタルストアフロントへの変更をより迅速に行うことができるなど、機敏性が向上していると感じている。実際、32%が数時間でウェブサイトの変更を行うことができると答えていた。(ヘッドレスでない企業は19%)。
採用企業は、ヘッドレスでない企業(54%)に比べて、新規チャネルを急速に拡大している傾向が高い(77%)ことも分かった。デジタルコマースに優れているとの回答は、ヘッドレスでない組織(30%)よりも高い割合(55%)で得られた。また、企業全体の成功要因をデジタルコマースに求める傾向が、ヘッドレス以外の企業(37%)に比べて58%と強く表れていた。
ヘッドレスアーキテクチャは成長の途をたどっており、導入していない企業の80%は、2年以内に導入する予定。この傾向は組織の規模に関係なく見られ、あらゆるビジネス規模のリーダーの57%が導入意向を示していた。
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