消費者庁は5日、健康食品の販売事業者が適切な広告・表示を行うための注意点を整理した「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」の改正版を公表した。改正の背景とポイントについて、消費者庁表示対策課ヘルスケア表示指導室長の田中誠氏に話を聞いた。(前編は
コチラ)
「この広告は見ていない」は通用しない
――アフィリエイト広告への対応も、今回の改正のポイントとなった。
田中 「アフィリエイト広告等に関する検討会」で一定の結論が出たため、考え方を追記した。以前からアフィリエイト広告についても記載していたが、もう少し掘り下げた。基本的にアフィリエイト広告は広告主が依頼し、アフィリエイターに成功報酬を支払うため、広告主が責任を負うことを記載した。
「事業者が講ずべき表示等の管理上の措置」の順守を追記したのも、検討会の結論に沿ったものだ。(広告の内容について)白紙委任のようなケースであっても、「アフィリエイターが勝手に広告を作った」は言い訳にならない。
また、「当社はこの広告を見ていません」と説明する事業者がいるが、仲介業者を介してアフィリエイト広告を展開する以上、「見ていません」も通用しない。
――不実証広告規制については、広告でうたう効果と、消費者庁へ提出された根拠資料の内容が一致していない事例を追記している。
田中 不実証広告規制で合理的根拠がないと判断した場合、どのような理由からそう判断したのかは、個別の事件では公表していないが、事例が積み重なったことから4例を追記した。このなかには、機能性表示食品の「葛の花」事件を踏まえたものもある。
たとえ、一定レベルのエビデンスがあったとしても、広告の内容とエビデンスが適切に一致していないと判断されると、景品表示法の措置命令の対象となることを明確にした。
「免疫力」に関する記述は、成分が一部の免疫細胞を活性化するという試験データが提出されたものの、病気の治療・予防に関するデータはなかったという事例に沿ったもの。消費者庁は有識者で組織する「セカンドピニオン」を抱えるようになり、さまざまな分野の健康食品の取り締まりが可能となった。基本的に健康食品の不実証広告規制は、すべてセカンドオピニオンに諮ると考えてもらっていい。
「こんなお悩みありませんか?」は単なる“呼びかけ”ではない
――特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品への対応はどうか?
田中 トクホの許可要件の1つに、最終製品に含まれる関与成分量の担保などの品質管理がある。品質管理が行われていない場合は、本来ならばトクホになり得ないものをトクホとして販売したことになる。今回の改正では、日本サプリメント事件を踏まえた事例を追記し、優良誤認表示に該当することを明確にした。
機能性表示食品については、「事後チェック指針」と留意事項の両方を補完的に使ってほしい。機能性の面で掘り下げる場合は「事後チェック指針」を見る必要があり、広告については留意事項もしっかり読む必要がある。
保健機能食品(トクホ・機能性表示食品・栄養機能食品)も含め、健康保持増進効果を標ぼうするものは健康食品と定義している。規制の考え方は、いわゆる健康食品であっても保健機能食品であっても同じで、一体的に記載している。
――今回、いわゆる健康食品の「お悩み」に関する表示を取り上げたが、インターネット上では「こんなお悩みありませんか?」と呼びかける手法が横行している。
田中 ここで問題となるのは、解消に至らない悩みを列挙している事例だ。「こんなお悩みありませんか?」と表示しているものの、その健康食品によって悩みが解決されないケースが多い。「こんなお悩みありませんか?」は単なる例示や呼びかけではなく、その商品を摂取すれば、悩みが解消されるという前提で、悩みをチェックボックスで例示している。
今回追記したのは、広告と商品に乖離がないように、つまり一般消費者の期待を裏切らないようにすべきという趣旨である。例えば、ある事例を見ると、広告に「運動や食事制限が苦手」と表示しているが、その商品は運動や食事制限を条件に内臓脂肪が減少するというものだった。
特に痩身系の商品が典型的で、「最近お腹回りが気になる」「運動が苦手」「食べ過ぎが我慢できない」などをチェックボックスに並べて、これに該当する人に商品を勧めている。しかし、その商品のエビデンスを見ると、実際には運動や食事制限をしないと内臓脂肪は減少しないことがわかる。
いまだに減らない「明らか食品」をめぐる誤解
――「明らか食品」(野菜・果物など一見して一般食品とわかるもの)が留意事項の対象であることを明記した背景は?
田中 留意事項では、以前から「明らか食品」について記載していた。しかし、「明らか食品」は薬機法の規制対象とならないために、いまだに生鮮売り場のポップに「病気を防ぐ」「ニンジンでガン予防」と表示しても大丈夫と誤解している事業者がいる。このため、エビデンスもなく、そうした表示をすると、景品表示法や健康増進法で問題になることを改めて明記した。
生鮮食品も含め、食品で健康効果を標ぼうする場合、事業者が最初に気にするのは薬機法。薬機法を少し勉強すると、インターネット上で「明らか食品」が対象にならないと説明している記事が出てくる。しかし、景品表示法や健康増進法は難しくて理解が進まず、誤解している事業者が多い。
――このほか、改正のポイントを挙げるとしたら?
田中 ナンバーワン広告についても追記した。広告主が依頼すれば、データを加工し、対象者や期間を限定して、ナンバーワンに導き出す請負業者がいる。不適切なナンバーワン広告を行ったエステ業者に措置命令を出した事件があり、それを踏まえて、ナンバーワンを強調するためには裏付けとなる根拠が必要であることを明記した。
実際に商品を使用していないのに、イメージでナンバーワンを強調する表示もよく見かける。「この商品はいいと思いますか?」というアンケートだけで、「期待度ナンバーワン」などと表示することも問題視している。
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健食留意事項改正の背景とポイントとは?消費者庁・田中室長に聞く(前)
(聞き手・文:木村 祐作)
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