2023年には、健康食品分野の各制度の見直しが予定されている。特別用途食品制度、栄養機能食品制度の改正をはじめ、特定保健用食品(トクホ)と機能性表示食品をめぐる動向にも業界の関心が集まっている。健康食品分野の行政動向を展望する。
特別用途食品制度の運用緩和で通知改正へ
2023年の主な動きに、特別用途食品制度の改正がある。昨年12月19日に開催された「特別用途食品の許可等に関する委員会」の検討結果を受けて、消費者庁は病者用食品の一部について、シリーズ商品を1つの商品群として一括申請できるようにする。今後はパブリックコメントの募集を経て通知を改正し、23年度中にスタートさせる計画だ。
対象は「総合栄養食品」と「えん下困難者用食品」。これまでは風味が異なるだけでも、個々の商品ごとに許可申請が必要だったが、業界の要望を踏まえて改正する。
品質管理の要件も見直す。現在、特別用途食品については外部試験機関による試験結果を年に1回、消費者庁へ提出することが必要だが、これを3年に1回以上に変更する。多数の栄養成分の基準が設けられている「総合栄養食品」「乳児調製乳」などでは、試験の費用がかさみ、業界側が負担軽減策を求めていた。
国が許可する特別用途食品は病者などが安心して利用できることから、重要な制度と位置づけられている。だが、医療施設などでの利用率は低く、普及に向けた施策が課題に挙がっていた。
栄養機能食品制度の表示内容を見直し
栄養機能食品制度の見直しも注目される。消費者庁は同制度が対象とする20成分(ビタミン13成分、ミネラル6成分、脂肪酸1成分)のうち、可能なものから表示内容を見直す考えだ。
「鉄は、赤血球を作るのに必要な栄養素です」といった表示内容は、国があらかじめ成分ごとに定めている。今後の検討作業により、「栄養成分の機能表示等に関する調査・検討事業報告書」を参考にしながら、成分ごとに、表示できる機能を増やしたり、表現を修正したりするという。
消費者庁では、「科学的情報や食事摂取基準に基づいて見直しを検討する」(食品表示企画課保健表示室)と話している。
栄養機能食品制度は国の許可も届出も不要。また、消費者にとってわかりやすい表現で成分の機能性を表示できることから、食品企業に根強い人気がある。表示内容が拡充されれば、同制度を利用する企業が増加すると予想される。
トクホ制度は疾病リスク低減表示が焦点
トクホ制度のテコ入れも行う。消費者庁は昨年8月31日、トクホ通知を改正し、規格基準型トクホや疾病リスク低減表示の運用を緩和した。
疾病リスク低減表示については、引き続き、関係各社の利用促進を目指す。当面は、個別評価型のニーズに適切に対応することを重視する方針だ。これにより、疾病リスク低減表示の広がりに期待する。
疾病リスク低減表示の拡充を重点課題に挙げているのは、トクホ制度だけに認められている仕組みであり、トクホ制度の活性化につながる可能性があるためだ。機能性表示食品の台頭でトクホは一定の役割を終えたとみられているが、機能性表示食品制度には導入できない疾病リスク低減表示の拡充によって、トクホ制度の存在意義を見いだす狙いがある。
一方、トクホ制度と機能性表示食品制度のすみ分けについては、昨年9月の定例記者会見で、消費者庁の新井ゆたか長官が「既にされている」との見解を示している。
機能性表示食品の「届出」事前確認制度の導入
機能性表示食品制度については、積み残し課題として、業界団体などによる「届出」事前確認の体制整備がある。
機能性表示食品として販売する場合、企業は消費者庁へ資料を届け出て、消費者庁は不備がないことを確認した上で、「50日」以内に公表している。しかし、年間1000件以上の届出があり、遅滞なく公表するにはマンパワー不足が指摘される。
このため、消費者庁が指定した業界団体などが、届出資料にミスがないことを事前に確認し、公表までの日数を大幅に短縮するという仕組みを導入する。
業界団体などが事前確認する届出は、公表実績が十分にあるものに限定する。新規の表示や成分による届出については、従来どおり消費者庁が確認する。当初、2022年度中の運用開始が想定されていたが、大幅に遅れる可能性が出ている。
運用開始へ向けた課題に、事前確認の手順の厳格化がある。健康食品関連の業界団体は個々の企業とのつながりが深いことから、チェックが甘くなる恐れも否定できない。また、経済専門紙『日経クロステック』が届出内容を痛烈に批判したように、制度の信頼が揺らいでいるだけに、消費者庁には詳細な手順書の作成が求められている。
いわゆる健康食品による健康被害情報の収集・公表を強化
いわゆる健康食品をめぐっては、厚生労働省の動きが注目される。同省の食品衛生分科会新開発食品調査部会は昨年12月、いわゆる健康食品が原因と疑われる健康被害情報を対象に、収集・公表体制の強化へ向けた検討をスタートさせた。
まずは、自治体などから寄せられる情報量を増加させるため、収集体制の強化を目指す。具体的な対策として、(1)報告アルゴリズムの作成による報告対象の明確化、(2)報告フォーマットの見直しによる省力化、(3)報告内容の均質化——が検討課題に挙がっている。収集した情報は原則、製品名・成分名を伏せて公開する方針だ。
健康被害のリスクがある場合には、緊急措置の「注意喚起」「改善指導」「販売禁止措置」を予定している。「指定成分」(特段の管理が必要な成分)への指定も検討する。これらについては、成分名や製品名を公表する。
(木村 祐作)
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