(株)帝国データバンクは8日、2023年1月の企業倒産件数(負債1000万円以上の法的整理が対象)をまとめ、分析を加えて発表した。倒産件数は546件で、482件だった前年同月比13.3%増。1月としては3年ぶりの前年同月比増となった。負債総額は507億6900万円で、1990年1月以来33年ぶりの500億円台を記録した。
企業倒産は「小規模化」が加速
「前年に続いて低水準でのスタート」とした1月の倒産件数は、9カ月連続で前年同月を上回り、増加期間はリーマン・ショック後の08年6月~09年8月(15カ月)以来、約14年ぶりの増加局面。負債総額は前年同月から25.3%の大幅減となるなど、2カ月連続で前年同月から減少しており、企業倒産は一層の「小規模化」が進んでいる。
500件台と低水準で推移しているものの、多くはコロナ融資など「資金繰り破綻の延命」政策によって支えられた部分が大きい。足元では今春にピークを迎えるコロナ融資の返済に加え、原材料価格の高騰、実質賃金の減少による内需の冷え込み懸念もある。3月以降、企業倒産の増勢がさらに強まる可能性は拭い切れない。
1月は「サービス業」「小売業」などの倒産が増加
1月の業種別では、「サービス業」(前年同月120件→143件、19.2%増)が11カ月連続で前年同月比増加となり、09年8月以来、13年5カ月ぶりの長さ。特に老人福祉事業では、年度ベースで累計115件に達し、すでに過去20年で最多を更新した。
「小売業」(同90件→109件、21.1%増)では、洋品雑貨・小間物などの織物・衣服・身の回り品小売(同13件→22件)で増加したほか、食品スーパーなど飲食料品小売(同13件→18件)は6カ月連続で増加した。「製造業」(同46件→62件、34.8%増)でも食料品・飼料・飲料製造(同4件→13件)が大幅に増加するなど、総じて食品関連の倒産増加が目立っている。
「コロナ融資後倒産」が181%増
「不況型倒産」の合計は436件(前年同月388件、12.4%増)で9カ月連続の増加となり、構成比は79.8%(対前年同月0.7ポイント減)だった。(販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計)。
「清算型」倒産は526件(前年同月466件、12.9%増)で、10カ月連続の前年同月比増。「再生型」倒産は20件(同16件、25.0%増)で、2カ月ぶりに前年同月から増加した。破産は508件(同441件、15.2%増)で、約14年ぶりとなる5カ月連続で前年同月比2ケタ増となった。
同社は「注目の倒産事例」を挙げている。「コロナ融資後倒産」は、1月に月間最多の45件(前年同月16件、181.3%増)発生。利息も含めた元本返済が本格スタートする3月を目前に大幅増となった。「人手不足倒産」は12件(前年同月10件、20.0%増)発生し、7カ月連続で前年同月を上回った。「建設業」「運輸・通信業」「製造業」での倒産が目立った。
「物価高(インフレ)倒産」は、50件(前年同月6件、733.3%増)発生した。最多だった前月の48件を上回り、7カ月連続で過去最多を更新、初の50件に達した。「製造業」「運輸・通信業」「建設業」で目立った。「後継者難倒産」は49件(前年同月29件、69.0%増)発生し、3カ月ぶりに前年同月比2ケタ増となった。「製造業」卸売業」「サービス業」が多かった。
「賃上げ」が絡んだ倒産が今後表面化する可能性も
インフレ圧力が強まるなか、例年以上に注目されるのが「賃上げ」だ。リクルートによれば、昨年10月~12月に前職比10%以上の賃金アップとなった転職者の割合は過去最高の33.4%を記録した。物価上昇を契機に「人材流動性」が高まり、賃金を押し上げる好循環がようやく訪れようとしており。優良人材を高賃金で獲得する機運が高まっている。
ただ、賃上げ可能な企業は、大企業や高い市場シェアを持つ業界トップ企業などに限られ、多くの中小企業では賃上げ余力に限度がある。高い賃金を支払う企業へ人材が移動するなか、人材確保のために賃上げしたものの収益確保が見合わず、最終的に経営困難に陥った「賃上げ」倒産も、過去に複数発生している。従業員の退職で事業が傾いた従業員退職型の「人手不足倒産」とともに、賃上げが絡んだ倒産が今後表面化する可能性がある。
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