不意打ち性のある販売手法を規制するため、消費者庁は6月1日、電話勧誘販売の新たな規制に乗り出す。業界内にありがちな疑問や消費者トラブルの最新動向について、消費者庁と(独)国民生活センターに話を聞いた。
「クーリング・オフ制度」への対応も必須
通販業界では、テレビショッピング番組やインターネット広告などを見て、注文の電話をかけた消費者に対し、定期購入や関連商品を案内する「アップセル」「クロスセル」という手法を多用してきた。しかし、6月1日からは、広告にない商品・サービスを案内すると電話勧誘販売に該当する。
電話勧誘販売に該当すると、「再勧誘の禁止」「書面の交付」などが課される。民事ルールの「クーリング・オフ制度」も適用される。例えば、一般食品や健康食品(サプリメント含む)の場合、開封または消費していない商品について、消費者は書面を受け取った日から8日以内であれば契約を解除できる。
広告にない商品の案内は「電話勧誘販売に該当」が大原則
業界内にありがちな疑問について、消費者庁取引対策課に話を聞いた。
まず、電話注文の際に、広告の商品そのものではないが、そのシリーズ商品を案内するケース。この場合、ケースバイケースの判断となるが、基本的には広告に掲載されていないシリーズ商品を案内すると電話勧誘販売に該当し得るという。
次に、広告の商品が売り切れてしまった場合に、電話注文時に類似商品を案内するとどうなるか。この場合、類似商品であっても電話勧誘販売に該当する。
一方、例えば、広告に15点の商品を掲載していたケースでは、電話注文時に15点のどれを案内したとしても電話勧誘販売に該当しない。
このように広告にない商品の案内は、どのような理由があっても不意打ち性を否定できず、基本的に電話勧誘販売に該当すると考える必要がある。
電話をかけさせる新たな手法も
政令の改正で「電話をかけさせる方法」に、ビラ、新聞・雑誌広告、テレビ・ラジオ放送、ウェブページを追加したが、「口頭」は含まれていない。このため、セミナーで「口頭」により無料サービスを紹介するとともに連絡先の電話番号を伝え、電話をかけた消費者に対して有償サービスを案内するようなケースには対応できない。
また、消費者がクレームで販売事業者に電話をかけた際に、別の商品を案内されたという手口も報告されている。このケースについては、「クレームなどの電話を受けて、別の商品を案内することは不意打ち性があり、電話勧誘販売に当たる」(取引対策課)と説明している。
消費者トラブルは落ち着きつつあるが…
(独)国民生活センターは昨年11月、テレビショッピング番組を見て注文した消費者が、別の商品を勧められてトラブルに巻き込まれる事例を公表した。その後の状況について同センターに聞いた。
担当者によると、昨年11月に注意喚起を行ったことや消費者庁が規制に乗り出したことから、直近では目立った動きはなく、沈静化の兆しが見られる。とは言うものの、今年3月に、60代女性から次のような相談が寄せられたという。
「テレビCMを見て、ファンデーションの定期購入コースを注文したところ、ファンデーションのほか、美容液と洗顔料も一緒に送られてきた。3商品とも有償だったが、コンビニで代金を支払った。それから1度、3商品が届き、その後は美容液と洗顔料の2商品が届いた。女性は解約のために販売事業者に連絡を試みたが、折り返しの返答が来ない」。
今後も手口を変えた悪質商法が登場する可能性もあり、6月1日に始まる新たな規制が機能するかどうか注目されそうだ。
(木村 祐作)
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