2023.05.06 コラム
NPSは「ネット・プロモーター・スコア」の略! 活用するコツは?
顧客ロイヤルティを測るにはNPSを指標として活用するのがおすすめです。NPSを活用することによって、社員のモチベーションアップや競合他社との比較が容易になる効果が期待できます。今回はNPSの計算方法とメリット、顧客満足度との違いや活用のコツを解説します。
欧米では浸透しているNPS
NPSとはNet Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)の略語で、顧客ロイヤルティを数値化した指標です。「この商品やサービスを友人や知人に勧める可能性はありますか?」という1つの質問を通して、企業やブランドに対する信頼や愛着の度合いを数値化するものです。
NPSは2003年にアメリカのコンサルティング会社で発表されてから、世界的に注目されるようになりました。欧米では、公開企業のおよそ3分の1以上がNPSを活用しているといわれています。日本では欧米ほど浸透していませんが、近年になって導入する企業が増えてきています。
NPSの計算方法
実際にNPSをどのように算出するのか、計算方法をみていきましょう。
1.顧客へ質問する
「あなたはこの商品やサービスを友人や知人に勧める可能性はありますか?」という質問に対して、顧客に10段階で回答してもらいます。点数が高いほど商品やサービスに対する評価も高いと見なします。この1つの質問のみで顧客ロイヤルティを測る点がNPSの特徴です。
2.回答の数値を3つのグループに分類する
回答結果を以下の3つのグループに分類していきます。
0〜6で答えた人:商品やサービスに不満を持っている「批判者」
7、8で答えた人:商品やサービスに満足もしていないし不満も持っていない「中立者」
9、10で答えた人:商品やサービスに満足している「推奨者」
3.推奨者から批判者の割合を差し引く
推奨者から批判者の割合(%)を差し引くことでNPSを算出します。
たとえば、10人に回答してもらった結果、推奨者が2人(20%)で批判者が4人(40%)の場合、以下の計算からNPSが算出されます。
NPS = 20 – 40 = -20ポイント
NPSでは、グループに分類する段階で批判者にあたる数値が0〜6と幅広いことから批判者の割合が多く、マイナスの値になることが一般的とされています。なお、実際にNPSを活用する際には一定数以上の回答を集めることが推奨されています。
NPSと顧客満足度との違い
NPSと同様に、顧客が満足しているかどうか測る指標として、顧客満足度が挙げられます。両者の違いは大きく以下の2点です。
1.NPSは世界共通の指標として扱われ、ルールが整備されています。一方、顧客満足度には世界的な基準が存在しません。
2.NPSは友人や知人に勧めるかという直接的な質問を数値化した指標であるため、顧客の評価や企業の業績、売上との相関関係がより高いとされています。一方、顧客が満足したからといって他の人に勧めるとは限らないため、顧客満足度だけでは企業の売上との相関性を導くことが難しいです。
以上の違いをまとめると、NPSが企業の収益向上に焦点を当てているのに対し、顧客満足度では事前期待と知覚価値のギャップを計測しているといえます。
NPSを活用するメリット
NPSを活用することで得られるメリットとして、大きく以下の3点が挙げられます。
・競合他社との比較材料になる
・社員のモチベーションアップにつながる
・導入コストが低い
実際にNPSがどのような場面で活用されるのか、あわせて確認していきましょう。
◇競合他社との比較材料になる
NPSは世界共通で使用されている指標です。そのため、競合他社との比較が容易である点がメリットです。NPSでは評価がポイントで可視化されるため、自社の商材が競合他社のものと比較して、どのくらい優れているかが分かります。一方で、競合他社より劣っている場合には、どの部分を改善すべきか検討するきっかけになります。
また、NPSを開始したあとは定期的に調査を続けつつ、経過を確認することが大事です。結果をもとに改善を進めることで、収益性の向上もねらえるでしょう。
◇社員のモチベーションアップにつながる
顧客と接することのない内勤の社員などは、生の声を聞く機会が少なく、仕事のやりがいを感じづらい傾向にあります。こういった社員にNPSの結果を知らせることで、モチベーションアップにつながる効果が期待できます。顧客からの評価が可視化されることにより、自身の業務がどのように貢献できているのか考える機会にもなるでしょう。
また、顧客の声を直接確認できることはサービス向上にも役立ちます。結果的に、社員全体のモチベーションアップにつながる効果も期待できるでしょう。
◇導入コストが低い
NPSは1つの質問で調査できるため、導入コストが低く抑えられるメリットもあります。質問がシンプルであるため、顧客からの回答も引き出しやすいです。企業にとっても回答結果の分析が容易で、集計にかかる余計な手間が省けます。
さらに社内でNPS導入について検討する際にも、シンプルな構成のため導入目的などを簡単に説明できます。このように手間や時間などのコストが低く、導入がスムーズに進められるといった点もNPSのメリットです。
NPS活用の際の注意点
NPSを活用する際に注意しておきたいポイントとして以下の2点が挙げられます。
・売上と結びつかないケースもある
・そもそも批判者がターゲット層かどうか見極める
それぞれ確認しておきましょう。
△売上と結びつかないケースも
売上との相関関係が高いとされるNPSですが、売上と結びつかないケースもあることに注意が必要です。あくまでも質問であって、実際に顧客が他の人に勧めたかどうかまでは確認できないためです。
また、勧められたユーザーが、実際に商品やサービスを購入するとも限りません。本当に売上に結びついているのかは、中長期的にNPSの実施と改善を繰り返して確認していくしかないことを念頭に置いておきましょう。
△批判者がターゲット層かの見極め
回答の結果、批判者に該当したユーザーが、そもそも自社商品やサービスのターゲット層でない場合もありえます。ターゲット層でない批判者に合わせて改善策を検討したとしても、本来のターゲット層である推奨者にとって改善になりません。批判者の割合を減らす努力はもちろん大事ですが、そもそもターゲット層の顧客なのかどうか見極める視点も重要です。
また、仮にターゲット層と異なっていた場合には、意図していない顧客に商品やサービスを提供してしまっているとも捉えられます。このような場合には、ターゲット層に届くような改善案の施策も検討しましょう。
NPSを上手く活用するコツ
最後に、NPSを上手く活用するためのコツについて、以下の2点をご紹介します。
・PDCAサイクルに取り入れて定着させる
・導入する際には社内で事前に情報共有する
NPS活用を成功させるために、しっかり確認しておきましょう。
PDCAサイクルも活用して
NPSによって顧客からの評価が得られた後に、どのようにアクションに移していくのかについて、事前にPDCAサイクルに当てはめて考えておきましょう。NPSは実施することが目的ではなく、結果をいかに次の施策に活かせるか検討することが重要になります。
そのため実施後には改善策を検討し、次のアクションに移すまでの仕組みづくりを事前にしておきましょう。NPSを一過性のもので終わらせない工夫が大事です。
導入する際には社内で事前に情報共有する
NPSを導入する際には、社内で導入目的やメリットを事前にしっかりと共有しておくことが重要です。そのためには、まずNPSの担当者が導入や運用の目的を明確にしたうえで、経営陣や他の社員に説明する必要があります。
他の社員に負担が増えると思われないように、モチベーションアップにつながるといったメリットや、実際のフィードバックを公開するなどして、不満が出ないよう工夫することも重要です。
まとめ
今回はNPSの計算方法とメリット、顧客満足度との違いや活用のコツを解説しました。1つの質問で得られるポイントによって、顧客のロイヤルティが測れるNPSは、導入コストが低く社員のモチベーションアップにつながるなど、企業にとってメリットがあります。また、世界共通で使用されている指標のため、競合他社との比較も容易です。
一方で、実際の売上と結びつかないケースがある点や、批判者が本来のターゲット層とマッチしているのか見極めが必要な点など、注意も必要です。上手く活用するためには導入前に社内で入念に打ち合わせをし、PDCAサイクルに取り入れるなどして一過性のもので終わらないような工夫をしましょう。この機会にNPSの実施をぜひ検討してみてください。
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