楽天グループ(株)が12日発表した2023年12月期第1四半期(23年1月~3月31日)連結決算は、売上高にあたる売上収益が前期比9.3%増の4756億3500円、営業損失が761億9400万円(前年同期は営業損失1131億8400万円)、四半期損失が826億2000万円(前年同期は四半期損失925億2500万円)となった。
国内EC流通総額は12.2%増の1兆4150億円
売上収益は「インターネットサービス」「フィンテック」「モバイル」の全セグメントで増収となり、第1四半期で過去最高の4756億円を計上したが、楽天モバイルの営業損失1026億円が影響し、826億円の四半期損失を計上した。ただ、楽天モバイルの損失は前年同期をピークに4四半期連続で減少。減価償却費を加えたモバイルセグメントEBITDAは570億円の損失となり、前年同期から損失幅を360億円と大幅に縮めた。
インターネットサービスの売上収益は前年同期比8.7%増の2711億円で、このうち楽天市場や楽天トラベルを含む国内EC流通総額は、同12.2%増の1兆4150億円となった。
同社の三木谷浩史会長は国内EC流通総額について「他社は結構苦戦しているが、我々は12.2%成長と好調」と話し、新型コロナの影響力が薄まったことでEC業界全体の成長が鈍化するなか、楽天が2桁成長していることを強調した。
広告事業の売上は15.8%増の483億円
国内ECの売上収益は同12.1%増の2050億円で、「楽天市場」の購入者はコロナ拡大以前の20年第1四半期比で29.1%増、購入単価は16.6%増となった。
その他、特に好調だったのは「楽天トラベル」と「広告事業」。広告事業の売上収益は同15.8%増の483億円と大きく成長した。同事業は23年度に売上収益2000億円を目指すという。三木谷氏は「広告は各社が苦戦しているが、楽天はEコマースの広告で、より消費者が買うところに近く、前年比15.8%と力強く成長している」と話した。
国内月間アクティブユーザー数は同10.3%増の4000万、直近1年でグループの全サービスのうち2サービス以上利用した割合は76.1%となり、楽天エコシステムがサービス全体の利用率を押し上げた。特に楽天モバイルからのクロスユースの貢献度が高く、MNO契約をすると平均で年間3万8541円を楽天市場で利用するシナジー効果があった。
フィンテックの売上収益は同7.6%増の1680億円、Non-GAAP営業利益は同20.4%増の266 億円となった。「楽天カード」のショッピング取扱高は同22.3%増の4.9兆円に到達した。
「Rakuten最強プラン」で早期黒字化へ
モバイルの売上収益は同25.7%増の963億円となった。ネットサービスやフィンテックの約3倍の成長率となった。営業損失は1027億円(前年同期は営業損益1323億円)を計上したが、22年第1四半期をピークに減少している。
楽天モバイルはKDDIと新たなローミング協定を締結。この契約で23年の設備投資を1000億円削減できる見通しとなった。財務を安定させつつ、通信品質を向上させる体制を整えた。6月から人口カバー率を99.9%に高め、データ使用量を無制限にしながら料金体系を維持した新プラン「Rakuten最強プラン」を開始する。
ただ、2023年中はモバイル事業単体での営業黒字化には至らない見通し。顧客満足度を向上させ、契約率の減少・契約者獲得に注力し、早期の黒字化を目指す。
中長期経営計画「Vision2030」で売上収益5兆円も
今回の決算発表では、中長期経営計画「Vision2030」の目標数値を公表。インターネットサービスでは2030年度Visionの目標として「売上収益2兆7000億円」・「Non-GAAP営業利益4100億円」を設定。30年に流通総額10兆円・営業利益率15%を目指し、品質革命・クロスユース強化などの施策でEC市場でのシェア拡大を目指す。また、アド&マーケティングでは、楽天ポイント関連サービス・メディアを新規開発する。
フィンテックの2030年度Visonは、「売上収益1兆6000億円」・「Non-GAAP営業利益3300億円」とした。営業利益率を20%に引き上げ、「楽天カード」を軸にフィンテックサービス間のシナジー効果を強化する。
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