これからECモールへの出店を目指す場合、出店先の選択が重要となる。その有力候補の1つに「楽天市場」がある。ほかのECモールと比べて、どのようなメリットやデメリットがあるのだろうか?サヴァリ(株)のECマーケティング事業部マネージャー・大山悠帆氏に詳細を聞いた。
最大のメリットは「圧倒的な集客力」
楽天市場はほかのECモールと比べて出店料が高く、気軽にネットショップを開設できるわけではないが、その分、売上をつくりやすいと言われている。サヴァリ(株)のECマーケティング事業部マネージャー・大山悠帆氏は、楽天市場へ出店するメリットとして10項目を挙げる。
1点目は、圧倒的な集客力。大山氏によると、「最大のメリットはこの圧倒的な集客力に尽きる」という。
楽天会員ID数は1億3000万に達し、日本の人口と同程度。流通額を見ると、2021年の楽天グループ国内EC流通総額は5兆円で、前年比10.4%増と拡大を続け、大手百貨店の売上の約9.3倍もある。ネット通販市場全体に占める楽天市場のシェアは28.0%と非常に高く、購買意欲の強いユーザーが集まっている。
つまり、楽天市場への出店は、圧倒的な集客力を持つECモールでネットショップを開設することを意味する。
楽天ポイントでリピート訪問を促進
2点目は、セールやキャンペーンの開催。楽天市場では定期的に「楽天スーパーSALE」や「お買い物マラソン」など実施し、モール全体のリピーター獲得につなげている。
3点目は、楽天ポイント。楽天市場で買うだけでなく、「楽天カード」や「楽天モバイル」の支払いなど、楽天グループの様々なサービスで貯めることができる。「せっかくポイントが貯まっているのだから、何か使わないと」という心理が働き、楽天市場にリピート訪問するきっかけにつながる。
また、楽天市場ではSPU(スーパーポイントアッププログラム)を実施している。楽天グループのサービスを使えば使うほど、楽天市場のポイント倍率が高まるため、楽天グループの各サービスから楽天市場への集客が可能なことも強みだ。
サヴァリ(株)のECマーケティング事業部マネージャー・大山悠帆氏
専任ECコンサルタントが売上アップをアドバイス
メリットの4点目として、楽天市場へ出店すると自動的に「アフィリエイト」サービスを介した販促が可能なことを挙げる。
多数のユーザーが、楽天市場の商品を自身のサイトやブログでアフィリエイトによって紹介している。この効果が、楽天市場の集客力を高めている強みの1つとなっている。
5点目は、楽天市場に出店すると、専任の「ECコンサルタント」が付くこと。ECコンサルタントは、ネットショップの売上向上施策の相談や、トラブル発生時などにも相談できる心強い味方だ。「ネットショップの目的は開設ではなく、売上を上げること。楽天市場では開設後にも、専任のサポートが付くので、それぞれのショップに沿った売上アップのアドバイスをもらえる」(大山氏)。
ほかのネットショップサービスでは、開設までのサポートは充実しているものの、開設後のフォローが手薄なケースが多い。開設後のサポートが手厚いことも、楽天市場の魅力という。
成功しているショップからアドバイスも
6点目は、出店店舗を対象に、ネットショップのノウハウを提供する講座「楽天大学」を提供していること。楽天大学講師のほか、各分野の専門講師による講座も受講できる。
Eラーニング形式の講座「RUx」や、チャットをしながら楽しく学べる「まなびLIVE」も提供し、これらはいつでも無料で受講できる。「RUx」は約900本の動画を用意。ネットショップ運営で必要なナレッジやノウハウを他店舗の事例などを通して、いつでも学ぶことができる。
メリットの7点目は、「NATIONS(ネーションズ)」という特別プログラムの提供。これは、売上を伸ばしたい店舗に対し、すでに出店して成功している他店舗がアドバイスやノウハウを伝え、売上アップに役立ててもらうという取り組みだ。
ECコンサルタントのサポートに加え、楽天市場で成功している他店舗からもアドバイスをもらうことが可能で、店舗運営にすぐに活かすことができる。
大山氏は「ECモールの中でも店舗同士のつながりがあるのは珍しく、楽天市場ならではのサービス」と話している。
「楽天スーパーロジスティクス」が物流の悩みを解消
メリットの8点目には、「楽天スーパーロジスティクス」の提供を挙げる。これは、商品を預かりユーザーへ安全に届けるという、出店店舗向けの物流アウトソーシングサービスだ。
出店者は出荷梱包作業から解放され、即日発送対応も可能となる。365日稼動で土日も出荷できるなど、物流関連の悩みを解消できる。
9点目は、「RMSサービススクエア」という店舗運営支援サービスの提供。信頼できる撮影・制作会社や、便利な制作支援ツールを効率良く探せて、直接購入できる。
画像素材やページデザイン、店舗管理、運営強化など、様々なカテゴリーのサービスを提供している。「売れる」ネットショップへの近道となり、楽天市場公式サービスのため、安心して利用できる。
信頼性と安心感
最後の10点目は、高い信頼性。ネットショップは信頼性が重要であり、聞いたことのないECモールにクレジットカード情報を登録して利用するユーザーは少ない。総務省が発表した調査結果からも、「ネットショッピング事業者の信頼性が低いから」「セキュリティに不安があるから」という理由で、ネットショッピングを利用しない消費者が多いことがうかがえる。
楽天市場ではユーザーが安心して買い物をできるように、2014年に「品質向上委員会」を設置。最も安心・安全なECモールを目指して、ショップや商品の品質を守るための様々な対策を実施している。
模造品対策もその1つ。模造品の疑いがある商品については、ブランドの権利者や団体などに協力を依頼して調査する。ルールに違反した店舗には、サービス停止や出店契約解除など厳正に対処している。
出店料が高いというデメリット
次に、楽天市場へ出店するデメリットとは何か?まず、ほかのECモールよりも出店料が高いことがある。この点について、大山氏は次のような考え方を示す。
「どれだけ良い商品を扱っていても、その商品の存在を広く知ってもらわないと売上につながらない。商売を成功させるためには、多少賃料が高くても、人の往来の多い場所に店を構えることが定石となる。楽天市場の売上規模は大手百貨店グループの4倍以上もあり、東京の一流店舗に負けない集客力がある」。
人の往来が少ない場所で開業しても、ユーザーからのフィードバックが得られにくくなり、店舗運営を改善するためのPDCAサイクルを回しづらくなる。その結果、競合他社に差を付けられてしまう。
できるだけ素早くPDCAサイクルを回し続けて、改善のヒントを得ることが大切だ。このため、「最初に開業する場所は、思い切って人の往来の多い場所を選んだ方が得策」(大山氏)と説く。
一部のプロモーションが自由にできない
デメリットの2点目は、一部のプロモーションが自由にできないこと。例えば、楽天市場では、店舗の管理画面からユーザーのメールアドレスをダウンロードできない。
このことについて、大山氏は「逆に言えば、ECモール全体の信頼を高めるため、個人情報の漏洩防止に力を注いでいる」という見方を示している。
1つのショップが誤ってユーザーの個人情報を漏洩してしまうと、そのショップだけの問題で済まず、ECモール全体の問題となり、出店しているすべてのショップの売上にも影響する。
個人情報の漏洩はシステム側の問題だけでなく、人為的なミスによっても起こる。例えば、ユーザーの個人情報をUSBメモリなどに保存し、そのメモリをうっかり紛失するようなケースは、システム側で防ぎようがない。
「人為的なミスによる個人情報の漏洩事故を防ぐためには、ユーザーの個人情報を容易に持ち出せないようにするしかない。そのため、楽天市場では購入者の個人 情報を出店者がダウンロードできない仕様を導入している」(大山氏)。
ただし、そうした仕様が原因で、マーケティング的なデメリットが生じるわけではない。ユーザーリストへメールマガジンを送るなど、様々なマーケティング施策が可能という。
後発店舗は売上をつくりにくい?
楽天市場で既に競合店舗が売上を伸ばしていると、新規ショップが肩を並べるのは難しいという見方もある。
大山氏は「それは間違いではないが、楽天SEOやページの作り込み、ユーザーのアプローチなどをコンサルとしっかり提携して築き上げていけば、シェアを伸ばすことができる」とし、プロに相談することを推奨している。
(通販通信ECMO編集部)
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