今回はリピート通販の代表的な価格設定アプローチに関して『顧客に選ばれ続ける強いリピート通販事業の作り方』という書籍から、抜粋してご紹介します。
一般に価格は安ければ安いほど顧客の満足を得やすいと考えがちですが、企業として適正な利益を確保できなければ事業を継続することはできません。さらに当然ながら、企業にとって得られる利益は多いに越したことはありません。
そのためには、どのように商品の価格を設定すべきか。大きく分けて次の3つのアプローチがあります。
▽前回の記事
リピート通販事業で企業が抱きがちな「10の誤解」
価格設定のための3つアプローチ
1. マークアップ価格設定
商品の製造にかかったコストに一定の利益額を上乗せして価格設定する方法です。市場に類似商品がない場合などは、この設定方法を採用するケースが多く見られます。基本的には製造コストを考慮するだけで、単純に価格設定するものです。
一方、需要予測や競合他社の価格などを考慮していないため、市場競争が激しい場合には、不向きな設定方法といえます。
2. ターゲットリターン価格設定
事業全体の目標とする投資収益率(ROI)を達成できるように価格を設定する方法です。商品の製造や広告費などを含めたコストおよび販売数量の事前予測が正確であれば、目標とするROIを達成することができます。
留意点として、決定した価格そのものや競合他社の価格が、販売数量にどの程度影響するかを考慮する必要があります。
3. 知覚価値価格設定
知覚価値とは、消費者が感じる製品の性能やサポート、また、提供企業の評判や信用などの感情面も含めた総合的な価値のことで、リピート通販の価格設定において、採用されることが増えている方法です。この方法は、競合商品と同じ価格帯に設定することが本質ではなく、消費者の知覚価値を基準にして、そのなかで利益が出るように価格設定するものです。
競合商品との間に価格差が生じる場合には、企業はその価格差の要因となる性能やサポート品質などの価値の違いを具体的に消費者に示し、説明することが重要です。
リピート通販事業の実際の価格設定においては、上記3つのアプローチを併用するケースが大半です。たとえば、「基本的には知覚価値価格設定を採用し、ターゲットリターン価格設定により一定の利益率を確保できる価格を探す」といったやり方です。どんなに優れた商品でも、競合商品と比べて価格を高く設定しすぎると数量を販売することが難しくなる一方、安く設定しすぎると事業開始当初は利益が出にくくなります。
あらかじめ設定した期間までに、事業の黒字化に必要となる売上と費用、つまり、損益分岐点など勘案すべき事項を見極めて価格を設定します。特に初回の販売価格については、1ステップ・2ステップなどの販売方法、定期・都度購入などの販売コース、さらにCPOやLTVを考慮して、総合的に判断する必要があります。
リピート通販ならではの購入回数に応じた価格設定
初回価格と2回目以降の価格に差をつけるというのは、リピート通販に固有の方法です。購入の入口となる商品(=フロントエンド商品)とそれ以降の商品(=バックエンド商品)の価格を分けるという考え方であり、ドラッグストアや飲食店などの販売ではありえません。
たとえば、初回価格を500円と2回目以降の価格をより低く設定したとき、初回販売のみで見ると赤字であっても、一定割合の顧客が2回目、3回目と購入し、それによって初期投資を回収できることが見込めるのであれば問題ありません。
一般にフロントエンド商品の価格を下げると、新規顧客獲得の効率がよくなります。実際に健康食品を展開するある企業が、同一商品を2通りの価格で販売するという「価格の弾力性テスト」を行なったことがあります。一方は初回定期購入価格を2,000円とし、もう一方は1,000円と設定して、同じ商品を販売しました。その結果、後者は前者のおよそ2.5倍の新規顧客獲得数を記録しました。
ただしLTVの観点から見れば、単純に「フロントエンド商品は安ければそれでいい」というわけではありません。たとえば、トライアル商品をフロントエンド商品として販売する場合には、トライアル商品と本商品の価格差が小さいほど、本商品の購入に対する心理的なハードルが低くなるため、トライアル商品購入者の本商品購入への移行(=引き上げ率)がよくなるという傾向があります。
つまり新規顧客の獲得効率を上げることだけを重視して、トライアル商品の価格をいたずらに下げればいいというわけではないということです。
書籍紹介
D2C時代のリピート通販ビジネスを徹底解説。リピート通販市場の現状から、成功のポイント、商品戦略、事業計画、広告戦略、CRM戦略、データ分析、組織・プラットフォームの構築までを網羅。業界のプロが教える、強固なリピート顧客を獲得する手法を提供。
顧客に選ばれ続ける強いリピート通販事業の作り方
著者:梅田哲平/山崎雄司/中居隆
定価:1848円(1680円+税10%)
発行:クロスメディア・パブリッシング
発売:インプレス
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