薬機法の規制は、「広告について」だけではありません。薬局をつくるときや、化粧品を製造するとき、危険な薬物を取り締まるときのルールも定められています。
ここでは、製造・販売業者も消費者も押さえておくべき、大麻取締法における規制と薬機法のルールについてご紹介します。
救急搬送相次ぐ、合成薬物成分が検出された大麻グミ
ここ最近「大麻グミ」という言葉をよく聞くようになりました。というのも、今月に入ってから東京や大阪などでグミを食べた人が体調不良を訴え、救急搬送される事件が相次いでいるからです。
厚生労働省の検査によって、この「大麻グミ」は大麻由来の成分に似せた合成化合成分「HHCH」を含んだものということがわかりました。厚労省からは、危険なので摂取しないようにとの注意喚起が出たにもかかわらず、なぜこのような危険な成分が入っている商品が市場に流通しているのでしょうか?
それは「HHCH」という成分については規制が及んでいなかったからです。
現在は指定薬物に「HHCH」が指定されることが了承されたため、12月2日から「HHCH」を含む製品は販売や所持、使用が禁止されます。
「HHCH」とは、大麻に含まれる成分「THC」に似せてつくられた合成成分です。「THC」は幻覚作用や記憶への影響、学力低下などを引き起こすことから、指定薬物として規制されています。
規制されていなかったから安全というわけではありません。THC同様に人体に危険な作用を及ぼす可能性があります。このような危険性のある成分は先に規制したいところですが、1つの成分を規制すると次の合成成分がつくられ、それが規制されると、また次の合成成分がつくられます。このように、合成成分を先んじて規制するということはできず、対処が後手に回ってしまうのです。
直近では2023年8月4日から、THCHを「指定薬物」として指定する省令が施行されました。それ以前にも「THCO」「HHCO」を2023年3月20日、「THCP」「HHC」を2022年3月17日に、指定薬物として指定する省令が施行されています。
このようないたちごっこが続いているため、厚労省は「HHCH」を指定後に類似の合成成分が出回る可能性を踏まえ、類似の構造をまとめて禁止する「包括指定」も検討しているとされています。
「CBD」と大麻取締法の関係
大麻に由来する成分というと、近年流通が拡大している成分があります。それは「CBD」です。CBDも大麻成分ではあるものの、規制はされていません。
CBDはTHCと化学構造は似ているものの、人体への影響は異なり、精神作用がないとされてるためです。
海外では、CBDを有効成分とする医薬品も医療に用いられており、日本でも医療用大麻の解禁として法改正が進められています。
ただし、CBDであっても、大麻の抽出部位によっては規制があるので注意が必要です。
大麻取締法では、大麻を部位によって規制しています。「大麻」は法律上「大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く」と定義されています。
大麻取締法による規制部位 (厚生労働省資料より引用)
CBD製品でも、大麻草の成熟した茎又は種子から抽出されたCBD製品は販売することができますが、規制されている部位(葉、花穂、枝、根等)から抽出・製造されたCBD製品は、「大麻」に該当してしまうので注意が必要です。
薬機法違反とならないような広告表現を
CBDにはストレス軽減、リラックス効果、抗酸化作用、抗炎症作用があるとされています。ただし、商品広告でこれらの効果をそのまま謳えるわけではありません。
理由は、医薬品としての認証を経ていない“未承認医薬品”の広告において、医薬品かのような誤解を与える表現をすることを薬機法が禁じているからです。
CBDを配合した食品では、医薬品かのような誤解を与える表現を避け、化粧品では化粧品として販売するにあたって認められている表現の範囲を超えないように広告しなければなりません。
広告というのは、ネット上だけではなく店頭のPOPやチラシも含みます。実際に、食品なのに病気を予防する薬かのように宣伝し、店頭で販売していたことで、薬機法違反として逮捕者が出た事例もあります。
どのような商品を販売する際も薬機法の理解は欠かせません。
(この記事は、著者がnoteに経緯した記事をリライトしたものです)
著者プロフィール:かなで行政書士事務所 代表行政書士 ひらさこ
D2C・単品通販における薬事コンサルティング。化粧品メーカー内マーケティング・薬機法景表法チェック担当、薬機法許認可申請代行業務に従事していた経験から、メーカーに寄り添った視点で商品開発、PR、広告制作アドバイスを行っています。
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