MM総研がこのほど公表した個人消費動向に関する市場規模調査の結果によると、2018年度の個人消費市場規模の推計は約298兆円で、このうちのEC市場規模は18兆円余りと推計され、全体の6.2%となった。
18年の個人消費市場規模は298兆円2480億円
市場規模の算出は、MM総研の独自アンケートに加え、内閣府と総務省のデータを活用。消費税率が引き上げられる中、キャッシュレス決済市場の拡大の動きが活発化している。消費全体を13分野にわけて、各分野の(1)市場規模、(2)EC市場規模、(3)決済手段別の市場規模について分析するとともに、今後のキャッシュレス決済市場を展望した。
18年度の個人消費市場規模は298兆2480億円と推計した。うち、13分野の主な商品ジャンルは、「食料品・非アルコール飲料/外食」(52兆9620億円/17.8%)、「日用品・消費財」(11兆6150億円/3.9%)、「アルコール飲料・たばこ」(7兆1800億円/2.44%)、「被服・履物・装飾/美容・理容・エステ」(12兆1760億円/4.1%)、「宿泊・旅行」(14兆4170億円/4.8%)。※(かっこ内の%は構成比)
「住居・電気・ガス・水道」(75兆7830億円/25.44%)、「家具・家庭用機器・家電、家事代行サービス」(8兆1270億円/2.7%)、「保健・医療」(12兆320億円/4.0%)、「交通」(30兆5250億円/10.2%)、「通信(携帯電話・インターネット回線・固定電話・郵便)」(13兆550億円/4.4%)、「娯楽・レジャー・書籍・新聞・趣味・文化」(24兆1710億円/8.1%)、「教育・学習」(7兆8620億円/2.6%)、「その他」(28兆3430億円/9.5%)。
個人消費市場内容のEC市場規模は18兆5680億円
個人消費市場に占めるEC市場規模は18兆5680億円と推計、全体の6.2%となった。EC市場における利用デバイス別の金額を分析した結果、パソコ12兆1350億円(65.4%)、スマートフォン5兆3370億円(28.7%)、その他 1兆960億円(5.9%)となった。
EC市場をけん引するのはスマートフォンであり、2024年度のEC市場は27兆760億円(18年度比45.8%増)に拡大。そのうちスマートフォン利用が12兆6500億円となり、パソコン利用を抜くと予測する。携帯電話サービスの3G回線停波や5Gサービス開始に伴うスマートフォン利用のさらなる活性化によっては、もっと早期にスマートフォンによるECが主流となる可能性も高い。
スマホ決済の利用率は20%
現金とキャッシュレス決済手段の利用状況については、「ほぼ毎日利用」「週に数日利用」「月に数日利用」「上記より少ない頻度で利用」の合計を利用率とした場合、キャッシュレス決済はそれぞれ、「クレジットカード」77.3%、「デビットカード」が13・8%、「カード型電子マネー」48.5%、「モバイル電子マネー」23.7%、「スマホQRコード決済」20.1%となった。
「週に数日利用」以上の頻度に限定しても、「クレジットカード」は34.0%と約3人に1人が普段使いとして利用していることが判明した。「スマホQRコード」は7.3%となった。MM総研では20~79歳のスマホQRコード決済サービスの利用経験者は1870万人と推計する。
商品購入やサービス利用の場所別にどの決済手段を利用するかを複数回答形式で質問した。「現金」が相対的に多い傾向となったが、「オンラインショッピング」「家電量販店」「ホテル・宿泊施設」「ガソリンスタンド」では「クレジットカード」が「現金」の利用を上回り、「オンラインショッピング」「家電量販店」「ホテル・宿泊施設」「デパート」では50%超と高くなった。
キャッシュレス決済手段を利用する理由、1位が「現金を持ち歩かなくてもいい」
各種キャッシュレス決済を比較すると、「クレジットカード」の利用がいずれの場所でも最も多く、「カード型電子マネー」が続き、その他の決済に大きな差はなかった。スマホQRコード決済は「コンビニ・スーパー」「ドラッグストア」「飲食店・カフェ・居酒屋」「家電量販店」での利用が目立った。これは、スマホQRコード決済サービスを展開する事業者が各種キャンペーンを実施した場所と一致しており、キャンペーン効果が顕著に表れた結果と推察できる。
ユーザー調査でキャッシュレス決済手段を利用する・利用しない理由を質問。利用する理由としては「現金を持ち歩かなくてよい」が最も高かった。クレジット利用では「高額決済でも利用できる」、スマホQRコード決済では「キャンペーンやポイント特典がある」が、次いで高くなった。利用しない理由としては「興味がない」が最も高く、次いで「情報漏えいや不正利用が心配」。特に「スマホQRコード決済」で高くなったが、調査時期として7Payの不正アクセス問題も影響したようだ。
スマホ決済認知・利用の1位は「PayPay」
最新のキャッシュレス決済手段の一つとして、18年度後半からの大型キャンペーンなどで注目を集めるスマホQRコード決済の認知・利用状況について質問した。その結果、利用率は「PayPay」が最も高くなった。次いで「d払い」「LINE Pay」「楽天ペイ」と続いた。
スマホQRコード決済の利用者を対象に金額ベースで最も利用するサービスを質問したところ、「PayPay」27.2%が最も高く、「d払い」23.1%、「楽天ペイ」15.6%、「LINE Pay」13.8%の順となり、上位4サービスで約80%となった。
NTTドコモとKDDIは、自社の顧客基盤を活かして、それぞれ「d払い」「auPay」サービスを獲得しているのに対し、ソフトバンクは特定のキャリアと意識させることなく、全ての消費者をターゲットとして会員獲得と利用促進に成功した結果であると分析する。
18年キャッシュレス決済市場規模は65兆円
18年度の個人消費市場に占めるキャッシュレス決済市場規模は65兆3720億円でキャッシュレス比率は21.9%と試算した。内訳として、クレジットカード57兆7460億円、デビットカード1兆1520億円、カード型電子マネー4兆6610億円、モバイル電子マネー1兆4700億円、スマホQRコード決済3430億円となった。
19年度以降のキャッシュレス決済市場規模について予測した。19年度は73兆8170億円、20年度82兆900億円、21年度88兆2280億円、22年度93兆2100億円、23年度98兆4110億円、24年度104兆1680億円、25年度111兆9690億円となり、24年度に100兆円を突破。個人消費市場規模(298兆2480億円)が一定と仮定すると、キャッシュレス比率は25年度に37.5%にまで拡大する見通しだ。
25年度市場規模を18年度比でみると、スマホQRコード決済は32倍の10兆円超に急拡大。金額規模ではクレジットカードが90兆円超となり、キャッシュレス決済に占める構成比は減少するが依然として8割程度を占めると予測する。
携帯電話会社を中心に18年度に一気に認知度・普及率が急速に高まるスマホQRコード決済だが、最終決算手段としてクレジットカードと双璧をなすほどの規模に成長することは現段階では想定できない。同調査では、スマホQRコード決済の更なる飛躍には(1)EC利用、(2)クレジット志向が強い高額商品・サービス決済利用、(3)友人・知人での飲食店利用(店舗への支払および個人間送金による割り勘)、(4)都市部・地方を問わず小規模店舗(非チェーン店)や個人商店での対応――がポイントとなるだろう、としている。
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