過去最高の流通総額(GMV)4兆円を突破して終了した、中国最大のECイベント「独身の日(11月11日=天猫W11)」を支えたアリババグループの「アリババクラウド」は20日、当日に使用された最新のコアテクノロジーなどを明らかにした。
タオバオや物流もAIで稼働
グループの基幹を担うアリババクラウドは、グローバルの顧客のオンラインビジネスと、グループのECのエコシステムに対応するクラウドコンピューティングサービスを提供する。
特徴の一つが、独自に構築したAIプラットフォームだ。その上では、ECサイト「淘宝(Taobao)」や物流サービス「菜鳥網絡(Cainiac)」など、グループの各種サービスが稼働。そうしたサービスから得た大量のデータをAIで分析し、サービスの改善やAIプラットフォームを強化する。こうした拡張性と堅牢性を備えたエコシステムの存在が強みでもある。
アリババクラウドによると、天猫W11を全面的に支えたのが第3世代XーDragonアーキテクチャだ。コスト効率を20%改善し、分散コンピューティングソースをオンデマンドで提供する仮想サーバーサービス・ECS(Elastic Compute Service)などとシームレスに統合する。
こうした強力な基盤を活用して極限の拡張性に対処し、イベントの開始直後の68秒間で10億米ドル相当のGMVを処理。開始から30分以内にGMVは100億米ドルに達し、24時間で2684億元(384億米ドル、4兆1602億円)という、新たな記録を打ち立てた。
1秒に54万件の注文処理
970ペタバイトのデータ処理能力を持つ最新鋭のデータ処理機能「Apsara Operating System」は、最大54.4万件/秒の注文を処理して新記録を打ち立てた。開発したデータベース「POLARDB」は、ピーク時に1秒あたり8700万件のリクエストを処理し、販売活動をサポート。POLARDBは、低コストで従来のエンタープライズ向けデータベースとの相互稼動性や可用性を一体化する性能を備えているという。
また、液浸冷却や浸水空冷をはじめとする自社開発のグリーンテクノロジーにより、EC取引1万件あたりの電力消費量を2kWhまで低減。これにより、天猫W11のデータセンター全体の消費電力量を、昨年から70%%削減して20万kWh以上の省電力を実現した。
チャットボットが問い合わせの97%を処理
アリババ DAMO アカデミーの機械学習技術を活用したAI チャットボット「阿里小蜜(アリシャオミー)」は、アリババのECプラットフォーム「Taobao」や「天猫(Tmall)」で、オンラインの顧客の問い合わせの97%を処理した。このバーチャルアシスタントによって、アリババのプラットフォームに出店する数十万社の小売事業者も、インテリジェントな顧客サービスを提供できるようになったとしている。
例えば、ライブで動画 配信されている時も阿里小蜜はユーザーからの質問に回答でき、動画から回答を抜き出してチャット形式での対応もできた。阿里小蜜は11種類の言語で提供され、国境を越えた売り手と買い手の間のコミュニケーションをサポートする。今年のW11の開催中、機械翻訳サービスは16億6000万回使用され、2000億語以上の単語が中国語から他言語に翻訳さしたという。
Tmallに出店する数千社の小売事業者は、イベントまでに「天猫旗艦店2.0」にアップグレードした。最新バージョンには、ユーザーが洋服やアクセサリーをスマホアプリ上で試着できる3Dアバターを備え、豊富なコンテンツとオムニチャネル体験を通じてブランドが顧客エンゲージメントをさらに高めることができた。商品購入におけるコンバージョンレートは、昨年に比べて20%向上し、1000店以上の主要ブランドの旗艦ストアの販売に貢献した。
期間中のタオバオライブ(淘宝直播:Taobao Live)での売上は200億元(28億米ドル、3100 億円)に達した。化粧品や衣料品、食品、自動車、家電などを販売する天猫の出店事業者の半数以上がライブストリーミングを実施。いずれも堅調に売り上げを伸ばし、室内インテリア商品については400%の伸びを達成した。
音声注文が100万件を突破
Taobaoは今年新たに、アリババクラウド上でリアルタイムのオーディオ・ビデオコミュニケーションフレームワークを開発した。5~7秒あったネットワーク遅延を1.5秒まで低減し、放送元とユーザーの間でのリアルタイムな双方向性の体験を改善。また、ビデオAI がライブストリーミングの中で言及された商品を特定し、視聴者の画面には同時に商品のリンクを表示させることができた。
今年の天猫W11では、アリババ AI ラボのスマートスピーカー「天猫精霊(Tmall Genie)」 を介した音声コマンドで処理された注文数が100万件を超えた。1日で卵81万個、米140万トン、液体洗剤76トンが購入されるなど、中国ではあらゆる年代で音声ショッピングの人気が高まる兆しが見られたという。
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