業績が好調なファンケルが、化粧品の増産体制を整えた。(株)ファンケルの完全子会社でグループ製品を製造する(株)ファンケル美健は、約30億円の建設費をかけ、主力製品である『マイルドクレンジング オイル』専用の生産工場(ファンケル美健千葉工場6号館)を、千葉県流山市に新設。4日には新工場のお披露目会を開いた。単一製品の専用工場は業界でも珍しい。今後の受注拡大と見越し、グループ全体の生産能力を大幅に拡大させた新拠点の全容に迫った。
『マイルドクレンジング オイル』専用生産工場の外観
3秒に1本売れ散る『マイルドクレンジングオイル』
ファンケルの『マイルドクレンジングオイル』は、不要なものを落としながら潤いは落さないクレンジオイルとして、クレンジング・メイク落としの定番商品となっている。1日の販売本数は3万本、3秒に1本売れているヒット商品だ。国内だけでなく、中国・香港・韓国・シンガポールなどのアジア地域や、アメリカでも販売を拡大させている。特に2016年からはンバウンド需要もあり、売上が急増している。
ファンケル美健ではこれまで、千葉工場・滋賀工場・群馬工場の3拠点でそれぞれ『マイルドクレンジング オイル』を生産していたが、各工場を合わせた年間生産量は合計900万本。将来的に需要に対する供給が追い付かなくなる可能性もあり、ファンケルの化粧品工場としては約20年ぶりに、新工場を新設するに至った。専用工場の新設により、年間1200万本、設備の増設で最大2400万本の『マイルドクレンジング オイル』が生産可能となった。
お披露目会でのテープカットの様子。左から、ファンケル上席執行役員 化粧品事業本部の
佐藤由奈本部長、ファンケル美健の柳澤昭弘社長、ファンケルの島田和幸社長
島田社長「何としても販売能力を高めたかった」
お披露目会で島田社長は「単一製品の専用工場というのは、これまでのファンケルからは考えらない。どちらかというとファンケルは、新鮮、作り立てを売りに、多品種を少量作る製造ラインが中心だったが、3秒に1本売れているというマイルドクレンジングオイルの圧倒的な販売量を支えるために、何としても生産能力を高めたい、というのが発端です。3工場でマイルドクレンジングオイルの製造が増えていることで、他の製品に影響が出てきたのが1年前のこと。急遽、短期での専用工場新設を命じることになったが、あっという間にできてしまった。これから販売を強化していきたい製品についても、問題なく製造できる」と話し、増産体制を構築したことで、他の製品の販売をさらに強化していく方針を示した。
3拠点で生産していた『マイルドクレンジング オイル』を新工場にまとめ、最新鋭の設備の導入や製造ラインを自動化したことで、これまで1日35人(3工場合計)が担当していた製造工程が8人に縮小。大幅な生産コストを削減したほか、3工場で製造ラインに余力を生み、他の製品の生産量を増加させることができるようになった。新工場の建設により、ファンケルグループの化粧品売上が1.3~1.4倍になったとしても対応できるという。
それぞれの製造工程に最新設備や新技術導入
マイルドクレンジングオイルの製造は、調合→送液→包装→梱包という工程を辿るが、それぞれの工程で新たな設備や技術などが導入され、少人数で効率的に大量生産できる環境を実現した。
最大サイズとなる3トンの調合釜
「調合」は原料を混ぜ合わす工程で、原料貯蔵タンクは、10トンのタンクを4台導入したほか、2種類の主原料を自動的に秤量・投入するシステムをファンケル化粧品工場で初めて導入した。また、これまでは水飴状態の原料の投入に時間がかかっていたが、原料メーカーの協力により主原料に溶かした状態にする「プレミックス原料」を開発。調剤肯定の工数削減と作業者の負担を低減した。調整釜はファンケルの化粧品工場で最大サイズとなる3トン釜を2台導入。1日あたり6トンの生産が可能となった。
充填・包装ラインは3倍の能力
充填機
充填・包装ラインには、医薬品にも準拠し国内トップスピードの能力を持つ高速一貫ラインを導入。従来にくらべて3倍の能力があり、1分間で180本を充填できる。
包装ライン(箱を形成する工程)
包装ラインから梱包ラインへ
梱包ライン
3工場での作業量を77%削減
「梱包」の工程は、これまで手動だったが、ファンケルの化粧品工場では初となる高速の自動梱包機とパレット積載機を導入し、全自動化した。このように、作業工程を全自動化し、効率化を図ったことで、3工場合計で1日35人かけて行っていた作業を27人分(77%)削減。1日あたり189時間の作業時間を創出した。
マイルドクレンジングオイル専用生産工場の敷地面積は1861平方メートル、延床面積は2403平方メートル。生産能力は1日5万本、年間1200万本、設備増設で最大2400万本まで拡大できる。通常だと建設に1年以上の期間が必要だが、建設会社の大成建設(株)の全面協力で建設作業を効率化し、約9カ月の工期で完成した。
ファンケル化粧品は直近の2020年3月期第3四半期連結決算(19年4~12月)で、売上高が約10%増に上っている。業績が伸長しているなかでも、『マイルドクレンジングオイル』の販売数の拡大は際立ち、グループ全体の生産キャパシティを超えるほどに迫っていた。『マイルドクレンジングオイル』専用生産工場という単一製品のみを製造する工場新設するという、思い切った判断により、ファンケルはコストを抑えながら短期間で生産能力を30~40%拡大させることに成功した。増産体制を整え、グローバル展開を含めたさらなる成長を加速させそうだ。
(山本剛資)
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