アスクル(株)が17日発表した2020年5月期第3四半期(19年5月21日~20年2月20日)の連結決算は、売上高が前年同期比3.8%増の2994億3900万円、営業利益は63億3500万円(同160.5%増)、純利益は41億1600万円(同268.90%増)となった。
eコマース事業は増収増益
主力分野の「eコマース事業」は、BtoBとBtoCの両事業を合わせた売上高が2935億2900万円(前年同期比3.4%増)。差引売上総利益は、オフィス生活用品やMRO商材などの増収や収益力の高いオリジナル商品の拡充に加え、 「LOHACO」の売上総利益率の改善などで、702億5600万円(同4.2%増)となった。「LOHACO」は20年5月期の利益計画達成と、23年5月期までの黒字化実現をめざす。
売上高配送費比率が減少し、前期に「ASKUL Value Center 日高」の固定資産を減損したことにより減価償却費が減少したため、販売費及び一般管理費が前年同期比1.2%減少の638億4000万円となり、営業利益は64億1500万円(同128.3%増)となった。
BtoBは駆け込み需要・マスク需要を受け増収
BtoB事業は、同社で購入経験のない顧客がサーチエンジンで商品を検索した際に同社のWEBサイトが上位に掲載される施策(SEO)や、インターネット広告を強化したことにより、新規顧客の利用が増加した。さらに、ビッグデータやAI(人工知能)を活用したWEBサイト上の検索機能の進化や、名前が分からない商品でも検索できる画像検索機能などにより、従来からの利用者の購入点数・単価ともに増加した。
商品の種類別では、店舗などで頻繁に利用される日用消耗品や消耗紙、オフィスで利用される飲料などの生活用品が成長を牽引。注力分野である医療・介護施設向け商材、ロングテール商品を含むMRO商材の売上高も順調に拡大している。
BtoB事業合計では、消費税増税前の駆け込みによる需要増や新型コロナウイルス感染症予防のための衛生用品などの急激な需要増もあり、売上高は前年同期比で125億5400万円増収の2469億6400万円(同5.4%増)となった。
「LOHACO」は減収減益
BtoC事業は、「LOHACO」で独自価値ECへの転換を着実に進めてきた。独自価値商品としては、19年9月に原料や製法にこだわったパン「LOHACO BREAD」の販売を開始。同年10月には、「LOHACO」ならではの独自デザインはそのままに、新たに「サステナブル」をテーマに加えて開発された新商品を揃えた「暮らしになじむLOHACO展2019」を開催した。同年10月に「LOHACO」は、ヤフー(株)が新たに開始した「PayPayモール」に出店を開始した。
こうしたことから、「LOHACO」の売上高は、前年同期比で35億7500万円減収の353億2000万円(同9.2%減)となり、 BtoC事業合計でも、同27億6900万円減収の465億6500万円(同5.6%減)となった。
利益面では、広告などのフィー収入の増加や、19年1月に実施した「配送バー」改定後の購入点数の増加と同年7月から始めた「ひと箱eco」サービスなどの構造改革の効果が表れてきており、売上総利益率の上昇と売上高配送費比率の低下が同時に進み、損益の改善が予定通り進んでいる。
「ロジスティクス事業」は好調、新型コロナで品切れ対応
「ロジスティクス事業」は、(株)ecoプロパティーズの物流施設のアセットマネジメント事業の売上高が増加し、営業損益は大幅に改善。一方、来期受託開始予定の新規立ち上げ案件で、、準備期間中の地代家賃などの費用2億2300万円が先行して発生していることから、販売費及び一般管理費が増加した。この結果、売上高は53億1300万円(同28.3%増)、営業損失は1億800万円(前年同期は営業損失4億100万円)となった。
第3四半期終了前後に新型コロナウイルスの影響が表れ、急激な物量増に対しての緊急措置として、3月4~6日の48時間は受け入れ停止を余儀なくされた。家庭紙などの急激な受注増加に対する緊急対応をはじめ、現在でも衛生用品(マスクや消毒液)の品切れ対応に迫られている。
今後に関しても、在庫商品アイテム数の2割超が中国製で、供給不安は拭えていない。また、テレワークの推進やサービス業などの停滞が及ぼすBtoB需要の低下も懸念される。こうしたことから、今期業績は計画を上回る状況で推移しているが、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響が不透明として、19年7月公表の連結業績予想を据え置いた。
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