Zホールディングス(株)がこのほど発表した2020年3月期(19年4月~20年3月)連結決算は、売上収益が1兆529億円4300万円(前年同期比10.3%増)、営業利益が1522億7600万円(同8.4%増)、四半期利益が816億7500万円(同3.8%増)となった。
ショッピング事業取扱高は34.5%増の1兆347億円
売上収益は旧ヤフー時代を含めて初めて1兆円を超え、営業利益も増益となった。税引前利益、四半期利益については、主に「PayPay」への積極的な投資による223億円の持分法投資損失などの計上があったが、営業利益の増加や販促費などの投資効率化、 PayPay(株)の持分変動利益108億円の計上などにより、前年同期比で増となった。
セグメント業績では、ヤフオク!やYahoo!ショッピング、アスクル(株)、(株)ZOZOなどの関連サービスや、クレジットカードの決済金融サービスを含む「コマース事業」は、売上収益が7427億円(同14.3%増)、営業利益は807億円(同44.7%増)。全売上収益に占める割合は70.5%となった。eコマース取扱高は2兆5936億円(同14.3%増)。物販取扱高は同14.4%増の2兆1473億円。うち、ショッピング事業取扱高は1兆347億円(同34.5%増)だった。
19年11月に(株)ZOZOを連結子会社化したことに伴う拡大をはじめ、アスクルグループの売上収益、Yahoo!ショッピングでの広告売上収益、(株)一休の売上収益の増加や、PayPayモールのオープンなどで全体を押し上げた。クレジットカード取扱高は2兆217億円(同55.2%増)で、政府のキャッシュレス・還元事業や、PayPayとのシナジー効果などによる。
メディア事業は売上全体の約3割に
検索連動型広告やディスプレイ広告などの広告関連サービス「メディア事業」は、売上収益が3086億円(同1.7%増)、営業利益は1543億円(同9.5%増)となり、全売上収益に占める割合は29.3%となった。プレミアム広告の売上収益が営業施策の効果で増加したことや、検索連動型広告の売上収益が、表示オプションの改善などにより増加したことなどに伴い、広告関連売上収益が前年同期比で増加した。
ソフトバンクグループ(株)を親会社とし、「Yahoo!JAPAN事業」を展開するヤフー(株)を
傘下に持つZホールディングス(旧ヤフー)にとって、19年度は「組織再編と数多くの新サー
ビス立ち上げなど、未来創造の種まきを行った1年」だった。同社はそれを受け、20年度の経
営方針を、「19年度にまいた種を育てる1年」と位置付けている。
PayPay決済回数は前年比17倍の3億7500万回
ソフトバンクと旧ヤフーによる「PayPay事業」は、サービス開始1年半で急成長。直近4四
半期の決済回数は、前年同期比約17倍の3億7500万回に達した。加盟店数は220万か所を数え、同約4.2倍。登録者数は2800万人を超え、同約4.5倍となっている。
子会社に加わったZOZOのファッション通販サイト「ZOZOTOWN」もPayPayモールに出店。すでに全ストアで圧倒的1位となり、コマース事業の増益とeコマース取扱高の増加に寄与している。Zホールディングスは、短中期の展開として、ZOZO事業とソフトバンクをはじめ、ヤフオク!、やPayPayフリマなど複数の事業との連携で、ユーザー拡大やリユース事業などによる相乗効果を見据えている。
コロナでEC物販は39%増もPayPay決済回数は減少
こうした動きはEC事業の強化拡大に直結し、さらにコミュニケーションサービスLINE(株)との経営統合も10月に控えている。LINEの月間利用者8300万人という利用者基盤を活かし、eコマース、メディア、決済の各事業でのシナジー創出も展望。こうした取り組みを通じ、23年度には過去最高となる営業利益2250億円の達成を掲げている。
新型コロナウイルス感染拡大の影響は、4月の集計で、外出自粛に伴う宿泊や外食の需要減でO2Oが前年同期比7.4%減となっている一方、EC物販は同39%増、スマホ経由ログイン利用時間が同32%増と、副次的なプラス要因も生じている。決済・金融はクレジットカードの取扱高が同30%増だが、PayPay決済回数の減など限定的影響を受けている。
現時点では収束が見通せず、生産性の低下や設備投資の増加などの内的要因や、売上収益の減少などの外的要因により、業績に影響が出る可能性があることから、21年3月期(20年4月~21年3月)連結業績についての算出は困難のため、「未定」とした。
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