2020.09.04 調査・統計
2020年の国内化粧品市場、震災以来の縮小見込む…2兆5000億円台と予測
総合マーケティングビジネスの(株)富士経済が3日公表した「国内化粧品市場調査」によると、2020年は2兆5000億円台と、東日本大震災があった11年から9年ぶりの縮小を見込んだ。新型コロナウイルスの感染拡大による内外の需要減が大きく影響している。
19年は増税駆け込みの反動で1.1%減
スキンケア、フレグランス、ヘアケア・ヘアメイク、メンズコスメティックス、メイクアップ(ベースメイク・ポイントメイク)、ボディケアのカテゴリー別に調査。一部は4月以降の緊急事態宣言の発出に伴う影響を織り込み、市場の見直しを行った。
19年は、中国での新EC法施行に伴うソーシャルバイヤー(代理購入者)の買い控えや、円高・人民元安により、高価格帯品を中心にインバウンド需要の獲得に苦戦した。内需は化粧品が軽減税率の対象ではなかったことから、消費税の増税前に駆け込み需要がみられたが、その後の反動による減少も大きかった。化粧品の国内市場は伸びが前年より鈍化し、18年比1.1%増の2兆8149億円となった。
渡航制限・外出自粛で需要減…7.8%減
20年も市場は拡大が期待されていたことから、1~3月にかけて調査したスキンケア、フレグランス、ヘアケア・ヘアメイク、メンズコスメティックスは、年初時点で各カテゴリーとも前年比0.5~3.0%程度の伸びが見込まれていたが下方修正した。コロナ禍による渡航制限でインバウンド需要が激減、内需についても百貨店や駅ビルの休業、外出自粛に伴うメイクアップ機会の低下などの需要減少により、19年比7.8%減の2兆5948億円が見込まれる。
スキンケアは1000億円減に?
カテゴリー別動向をみると、スキンケアは、ほかのカテゴリーと比較してインバウンド需要が大きかったため、訪日観光客の減少の影響を受けたほか、タッチアップの自粛などでカウンセリングによる需要喚起が難しくなっている。市場は1兆1802億円へ下方修正し、19年と比較して1000億円以上の縮小が見込まれる。
フレグランスも2桁減見込む
フレグランスは、百貨店やライフスタイル提案型ブランドの直営店舗、バラエティショップなどの休業に加え、エントリー需要獲得を目的に行っていたイベント開催や試香の実施が難しくなり、市場は拡大が期待されていたものの、19年比で2桁減が見込まれる。
ヘアケア・ヘアメイクは、都市部を中心に一部の理美容室が休業したことに加え、消費者が理美容室利用を控えたことから業務用が苦戦しているが、市販用は必需品としての位置づけが強いことから需要減少の影響は小さく、市場縮小は小幅にとどまるとみられる。メンズコスメティックスは、外出機会の減少から顔拭きシートや、においケアを訴求する商品、シェービング料、 メンズスタイリング剤などの需要が減少し、市場が縮小するとみられる。
百貨店・訪販の高価格帯は13%減
価格帯別では、高価格帯は制度品系や外資系メーカーがポイントメイクアイテムをフックに若年層を中心とした新規需要の取り込みを行っているほか、パーソナル訴求の高付加価値ヘアケアブランドのラインアップ拡充、アンチエイジングブランドの好調などにより、19年の市場は拡大。高価格帯は百貨店や訪問販売での販売比率が高く、20年はその百貨店や訪問販売が休業や営業自粛を行ったこともあり、19年比13.3%減の7830億円が見込まれる。
中価格帯は、しわ改善機能を持つスペシャルケアアイテムが好調だが、機能性やプレステージ性の高い高価格帯 ブランドへの需要シフトや、低価格帯でも機能性の高いブランドの増加など競合は厳しさを増しており、19年の市場は微増にとどまった。20年は、メインチャネルとするドラッグストアやGMSは休業が少なかったことや、通販ブランドは需要を取り込んでいることから、市場は縮小するものの高価格帯ほどの落ち込みにはならないとみられる。
低価格帯は、価格志向の強まりから高・中価格帯からの需要シフトにより市場の拡大が続いていた。しかし、19年はゴールデンウィーク以降の長雨や台風によってサンスクリーンが、暖冬により、リップクリームやボディクリーム・ローションが伸び悩み、インバウンド需要ではソーシャルバイヤーの大量購入が落ち着いたことで人気の高かった洗顔料やシートパックなどが減少し、市場は縮小に転じた。
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