(株)矢野経済研究所が公表した「国内スポーツアパレル市場調査」によると、2000年の国内出荷額は全カテゴリーで前年割れ。コロナ禍でウエアの需要は急速に縮小した。21年は20年を上回るものの、コロナ禍前の19年の水準にまでは戻らないものと予測している。
2020年の市場規模は486億円の見込み
20年のスポーツアパレル国内市場規模は、メーカー出荷金額ベースで前年比86.7%の4868億7000万円を見込んだ。部活動の休止、スポーツスクールや公共体育館の営業休止など、スポーツの場やプレー機会が失われたことで、スポーツウエアの需要が落ち込んだ。盛り上がりを見せる新学期需要も縮小するなど、小売店の販売は全国的に落ち込んだ。
販売店からの発注キャンセルなど相次ぐ
販売不振に陥った小売店からは、スポーツ用品メーカーに対して商品の発注キャンセルや納品の後ずらしに関する依頼や相談が続出。将来的な販売先の減少を懸念したメーカーも依頼に応じたため、出荷金額が前年を大きく下回る見込みだ。需要減退による国内出荷金額は全カテゴリーで前年割れと、極めて厳しい結果が見込まれる。
出荷金額のトップの座を維持してきたトレーニングウエアに代わり、アウトドアウエアがカテゴリー別で最大となる見込みだ。近年、普段着として着用するライフスタイル需要の拡大により、高成長が続いてきた。アウトドア環境で求められる高い機能性を持ち、都市生活向けにも快適で、スポーツ量販店やファッションセレクトショップなどでの展開が強化されている。
特に認知度が高い「ザ・ノース・フェイス(TNF)」や「パタゴニア」といった有力ブランドは、カジュアルファッションシーンでの人気も高く、ブランドを代表するアイコニックな定番のアパレルは品薄状態が続く。こうしたブランドのアイテムを取り扱うショップも増えており、消費者との接点の増加がさらにブランド認知を高めるという好循環が生まれてきた。
アウトドアウエアもマイナス成長に
こうした背景から拡大を続けてきたアウトドアウエアだが、他のカテゴリーと同様、コロナ禍の影響を避けられず、マイナス成長の見込みだ。ただ関心は依然として高く、「3密」を避けようと都心を離れてキャンプに出掛ける消費者の需要にも支えられた。各種スポーツシーンの場が失われて需要縮小が著しいトレーニングウエアと比較すると、アウドドアウエアは前年からの落ち込み幅を抑えられ、カテゴリー別で最大の出荷規模となる見込みだ。
来年は回復見込むも旧品処分が課題に?
21年のスポーツアパレル国内市場規模は、メーカー出荷金額ベースで前年比111.1%の5411億円を予測した。コロナ禍が今年の春先ほどにまで拡大しないことが前提となるが、20年の水準を大きく上回る見通し。ただ、特に春夏は各小売業態ともに大量の旧品処分を優先するシーズンとなりそうだ。
20年は特に春夏物の店頭販売が大不振となったことで、業態を問わず在庫が積み上がっている。小売店はセールを増やし、メーカーも直営ECや直営アウトレットで大幅割引をするなど、可能な限り在庫を消化しようとしているものの、いずれの業態ともに春夏物の在庫は例年以上であることから、多くの商品が21年に持ち越される模様だ。
また、近年はメーカーとしても旧品との違いを打ち出せる新たなアイテムの提案が進んでおらず、過去モデルと類似の新作投入が多くなっている。似たような新品と旧品が店頭に並んだ場合、低価格の旧品を購入する消費者が多い。こうした傾向も踏まえ、21年の春夏シーズンは持ち越された旧品処分を最優先にして、新たに提案する品番数や品番ごとの投入数量を減らすというメーカーも多い。こうした要因から、21年の国内出荷金額は20年を上回るものの、コロナ禍前の19年の水準にまでは戻らないものと予測している。
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