コロナ禍の影響が多方面に及んだ2020年度。(株)帝国データバンクが調査した上場アパレル企業45社の業績調査によると、対象企業の8割が減収、7割が減益を訴えていた。ただ、集客面で落ち着きがみられる可能性もある21年度は、6割超が増収増益を見込んでいる。
コロナ禍で客足減少で8割超が減収に
上場アパレル企業45社を対象とした調査によると、20年度の決算では、5~12月に決算期を迎えた企業は12社で、21年1~3月に決算期を迎えた企業は33社。約7割が2月と3月に集中していた。うち、増収企業は8社(構成比17.8%)に対し、減収は37社(同82.2%)。コロナ禍の影響による客足減少を主要因として、8割超が減収となっていた。
増収企業8社をみると、増加の幅は10~20%が2社、10%未満が6社。ワーキングウェアや作業服を扱い、新業態「#ワークマン女子」で話題となった「ワークマン」と、子供服のほかベビー用生活必需品など取り扱う「西松屋チェーン」が10%以上。ファッションマスクが好調だった「クロスプラス」、衛生用品の受注獲得で「ユニフォームネクスト」、店舗の郊外立地が多く巣ごもり需要を取り込んだ「しまむら」などが小幅ながら増加した。
「三陽商会」「ラピーヌ」などのスーツ・フォーマルウェアが苦戦
減収企業をみると、37社のうち減少幅が10%未満は7社、10~20%は8社、20~30%は17社、30%以上は5社。「三陽商会」「ラピーヌ」「銀座山形屋」「タカキュー」「東京ソワール」が30%以上で、スーツ・フォーマルウェアが苦戦した。
営業利益面では、黒字企業が21社(構成比46.7%)で、赤字企業は24社(同53.3%)。黒字企業のうち、増益企業は8社(うち1社は赤字から黒字へ転換)、減益企業は13社となり、約7割が減益となった。赤字企業のうち、黒字から赤字となったのは13社、2期連続赤字は11社だった。増減率を明示している19社のうち、増加幅が50%以上となったのは4社、減少幅が50%以上となったのは6社だった。
62%が21年度は増収増益を予想
21年度の業績見通しを発表した企業は37社(構成比82.2%)で、8社(同17.8%)は未定。公表した企業のうち、増収増益(前年度で純利益が赤字から黒字に転換している企業も含む)の見通しを示したのは28社(同62.2%)、増収減益(赤字も含む)は5社、減収増益(黒字転換も含む)が3社、減収減益は1社となった。
帝国データバンクによると、20年度はレナウン(元・東証1部)が5月15日に民事再生手続き開始決定を受けるなど、大型倒産も発生。緊急事態宣言解除後は回復の兆しもあったが、暖秋・暖冬となったことに加え、秋以降には再び感染が拡大。秋冬商戦ピークの1月に緊急事態宣言が再発出され、全体を通して実店舗での販売機会が大幅に減少した。
EC販売は多くの企業で前年超過も店舗をカバーしきれず
一方、多くの企業がEC販売は前期比増となったものの、実店舗の大幅な売上高の減少をカバーするほどではなく、在庫処理のセール販売で苦戦する状況がみられた。また、コロナ禍におけるライフスタイルの変化による影響もみられた。
もともと縮小傾向にあったスーツ・フォーマル市場は在宅勤務の推進、冠婚葬祭の延期や中止で、さらに需要が縮小。一方で、ゴルフ人気によるアスレジャーなどストリートブランドが好調となる面や、巣ごもり需要によるホームウェアのほか、一部カジュアルウェアの需要に回復の兆しもあった。ワクチン接種の広がりなどで集客面の落ち着きが期待されている。
この続きは、通販通信ECMO会員の方のみお読みいただけます。(登録無料)
※「資料掲載企業アカウント」の会員情報では「通販通信ECMO会員」としてログイン出来ません。