不正取引被害は増加傾向
インターネットを使った取引が急増するなかで、不正取引による被害も増えています。「クレジットカード不正利用被害額調査」(一般社団法人日本クレジット協会)によると、2020年のクレジットカード使用における不正利用被害額は、2014年から約3倍増えていることが報告されています。
近年、EC・通販界隈では、ゲームの新機種など希少価値の高い商品が転売目的で購入され、高額で販売されるケースが多発しています。そのほか、健康食品や化粧品などのサブスクリプション型(定期型)では、初回購入限定で大幅な割引があったり、定期購入の際に定価より大幅な割引をするなど段階によって価格差をつけているモデルも、転売目的で不正購入が多発する傾向にあるようです。見込み客が転売商品を購入することで、企業は間接的に損害を受けることもあります。
なお、2019年にはチケット販売禁止法が成立しました。この法律は、コンサートチケットなどの不正転売の防止を目的としています。一方、その他の通販が販売する商品に対しては規制が甘いのが現状です。
これらの問題に対して、不正検知サービスは購入者の一定の特徴を検出し、不正取引が行われた際に抽出する仕組みを備えています。不正検知サービスによって転売を防ぐことができれば、自社商品のブランド価値を守り、商品価値を高めることで、売上確保につながります。
ブランド品だけではなく、低価格商品も転売目的で購入されるケースも目立っているため、こうした被害を未然に防ぐために不正検知サービスはますます必要になってきています。
クレジットカードのチャージバックとは?
「チャージバック」は、不正に取得したクレジットカードによる不正取引から消費者を守る仕組みです。消費者からの申し立てにより、不正に使用されたクレジットカードの支払いを取り消すことができます。
チャージバックは、クレジットカードの所有者が、使用した覚えのない支払いが発生したときに使われます。クレジットカード会社は売上を取り消して、カード所有者に返金します。これによって、企業への支払いがなくなります。
このとき、すでに商品を発送してしまった場合、商品は戻ってきません。売上がなくなるだけでなく、商品もなくなってしまい、二重に被害を被ることになるのです。
"チャージバック"のニュース検索結果
チャージバックが増えている背景には、以下の理由が挙げられます。
▽EC市場の拡大と転売の増加
個人間のインターネット取引(CtoC取引)が拡大していることもチャージバックの増加に影響しています。近年は特にフリマアプリ市場の成長によって簡単に個人間取引が可能になったため、フリマアプリで転売することを目的に購入されることが多くなっています。
▽クレジットカードの不正利用の増加
インターネットで購入する際の決済方法では、クレジットカード払いが圧倒的なシェアを占めています。一方、クレジットカードの不正利用被害額は年々増加しており、最も被害額の大きかったケースは番号盗用によるものです。
企業側はチャージバックに異議申し立てもできます。商品の未発送や商品に対するクレームなどを理由として、チャージバックの通知を受けたときなどは異議申し立てが可能です。
ただし、最終的な判断はクレジットカード会社側にあるので、異議申し立てが認められない場合もあります。
21年クレジットカード不正利用額、30%増の330億円…過去最高の被害額に
主要な不正検知サービスを比較!
どのような不正検知サービスが提供されているか、それぞれの特徴を以下にご紹介します。
不正検知サービスの比較の際に重要なことは、「不正取引を検知できる精度」です。それぞれのサービスの性能を単純に比較することは難しいですが、どのような仕組みで不正を検知しているのかを比較すると参考になるはずです。
【かっこ「O-PLUX」】
サービス名
O-PLUX
提供会社名
かっこ株式会社
料金
月額3万円~
シェア
導入実績No.1(※)
※2020年5月末日現在。株式会社東京商工リサーチ「日本国内のECサイトにおける有償の不正検知サービス導入サイト件数調査」による
かっこ株式会社の資料一覧
O-PLUXは、すでに20,000サイト以上で利用されており、利用加盟店内で情報を共有するなど、巧妙な不正を見逃さないシステムが整っています。
最新のネガティブ情報を審査に活用しており、手間いらずで導入できる不正検知サービスです。
また、多数のECシステムや決済業者と提携しているので、導入の手間も軽減されます。楽天、Amazon、Yahoo!ショッピングなどからの注文も審査できます。
【アクル「ASUKA」】
サービス名
ASUKA
提供会社名
株式会社アクル
料金
国内の被害規模にフィットした価格、価格は原則固定性
独自の認証ツールによって、不正を牽制または排除します。カード不正利用やチャージバックが非常に多い北米の事例を参考にしながら、現在のカード加盟店が抱える課題を効果的に解決できるソリューションを提供しています。
【マクニカネットワークス「sift」】
サービス名
Sift
提供会社名
株式会社マクニカ
料金
利用料に応じた月額後払い(1年契約)
シェア
全世界3万4000以上のWebサイト・モバイルアプリに採用
株式会社マクニカの資料一覧
機械学習でオンライン詐欺から守る「詐欺防止・機械学習プラットフォーム」を採用しています。
ECサイトやインターネット上で、取引相手が信頼できるユーザーかどうかを機械学習によって瞬時に識別します。アカウントの乗っ取りやなりすまし、盗難されたクレジットカードの利用や、偽アカウントの作成、スパムや違法コンテンツを流すなどの行動がみられるユーザーをリアルタイムに検知するため、オンライン詐欺を未然に防ぐことができます。
【Spider Labs「Spider AF」】
サービス名
Spider AF
提供会社名
株式会社Spider Labs
料金
月額3万円~
株式会社Spider Labsの資料一覧
最新のAI分析と独自のアルゴリズムを元に、アドフラウドを検知します。ピクセル解析によって広告掲載先を確認し、ブランド毀損リスクを最小限に抑えます。各ASPと連携して、アフィリエイト広告における不正ユーザーからの成果発生を防ぎます。
また、Spider AF計測タグで取得した情報を解析し、Googleリスティング広告やディスプレイ広告の不正なIPや配信先を自動的に除外します。レポーティングも充実しており、配信先ごとに不正なIPや配信面をレポートして透明性がある対策を行います。
「Spider AF」で検知したアドフラウド被害額は、半年間(2019年7月~12月)で約16.7億円。株式会社SmartHRなどでも導入されています。
【インフォコム「at score」】
サービス名
at score
提供会社名
インフォコム株式会社
注文の未払いリスク、サンプル品の不正転売リスクなどを検知して可視化する、高精度な与信を実現するサービスです。
AI与信エンジンと独自ロジックを用いた高い与信精度を誇るとしており、注文情報を分析し、その「注文の意図」を理解する与信エンジンを保有しています。人間の高度な知性と経験によって得られる情報(商品の目的、注文品のお届け先、住所、氏名、電話番号の整合性ほか)を抽出し「注文の意図」を感じ取って、そこから支払う可能性を予測する与信エンジンとなっています。与信スコアリングの自動化による与信効率の向上もサポートしています。
【NTTデータ「CAFIS Brain」】
サービス名
CAFIS Brain
提供会社名
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
複数の特許技術を活用し、エンドユーザーのデバイスを精度高く識別します。また、不正判定は700種類以上のルールを活用しており、不正取引を精度高く判定できます。
パソコンからの取引だけでなく、スマートフォン専用アプリケーションからの取引も、デバイス情報を利用した不正判定が可能です。
不正検知サービスと連携する決済代行など
上述した不正検知システムは、決済代行会社やEC構築ベンダーを介して導入するという方法もあります。たとえば、決済代行会社のSBペイメントサービス株式会社は、かっこの「O-PLUX」と同じデータベースを用いた不正検知を提供しています。アクルの「ASUKA」では、GMOイプシロンが販売代理を担う以外に、国内の主要決済代行会社やEC構築ベンダーも販売代理を実施。加えて、主要カード会社も「ASUKA」の紹介を取り扱っています。
【ソフトバンクペイメントサービス】
サービス名
SB Payment Service
提供会社名
SBペイメントサービス株式会社
シェア
取扱高3兆5361億円
SBペイメントサービス株式会社の資料一覧
かっこ株式会社の不正検知サービス「O-PLUX」と同様のデータベース、検知エンジンを用いています。前述のようにO-PLUXは、20,000サイト以上に利用されており、そのデータベースは最新のネガティブ情報が審査に活用されています。
SB Payment Serviceは多面的・重層的な不正使用対策を実施しています。「不正検知サービス」に加えて、不正使用に有効なサービス(本人認証・セキュリティコード・属性・行動分析・配送先情報)を備えています。
たとえば、属性・行動分析では、過去の取引情報に基づくリスク評価を実施して、不正取引を判定しています。
【GMOイプシロン】
サービス名
イプシロン
提供会社名
GMOイプシロン株式会社
チャージバックが発生しても、加盟店は不正利用による請求額(上限100万円/月)を負担せずに済みます。イプシロンと保証会社の株式会社アクルが提携し、加盟店の替わりに株式会社アクルがチャージバックの請求額を負担する仕組みです。
【クロネコwebコレクト】
サービス名
クロネコwebコレクト
提供会社名
ヤマト運輸株式会社
クレジットカード決済の利用時に、注文時の購入者情報や取引時の傾向から不正利用の疑いがある取引を判定、その結果を指定のメールアドレスに通知します。
また、商品の発送時にヤマト運輸が提供する送り状発行システムB2クラウドを併用すると、届け先の住所情報による判定も簡単に導入できます。
【ペイジェント】
サービス名
PAYGENT
提供会社名
株式会社ペイジェント
多くの決済手段が用意され、決済画面をメール送信する方法からシステムへの組み込みまでさまざまな利用方法を選択できます。また、多くのECサービスと標準で連携しているので、スムーズに導入できます。
よくある質問
Q1.どうやって不正を検知するのですか?
A1.
ユーザーのどの情報を用いて不正を検知するのかはサービスによって異なります。一般的には、電話番号や住所、メールアドレスなどの注文ユーザー情報をチェックして各社がもつ過去の不正利用情報などと照らし合わせて不正利用かどうかを検知します。
Q2.EC事業者にとって不正利用のリスクはどれほどあるのですか?
A2.
一般社団法人日本クレジット協会が2022年4月に公表した「クレジットカード不正被害の集計結果」によると、1年間の不正被害総額は前年比30.5%増となる330億1000万円に拡大。そのうち
ECの不正注文に影響の大きい番号盗用被害額の割合が94.4%にあたる311億7000万円(海外被害額を含む)となっています。偽造カード被害額は大きく減少の一途を辿っており、番号盗用被害が増えていることからも、ECサイトでの不正注文リスクが高まっているといえます。
不正検知サービスに関するまとめ
不正検知サービスは、近年増加しているクレジットカード決済による不正取引やチャージバックリスクを防ぐサービスです。
クレジットカード利用者を守るための制度であるチャージバックは、企業側にとって損害が大きく、未然に防ぐ必要があります。
自社の商品価値を高め、今後の売り上げを確保するためにも、リスクに対する備えを万全にしたいところです。
不正検知サービスに関するお役立ち資料
通販通信ECMOでは、不正検知サービス導入を検討するうえでお役に立つ資料を多数揃えています。選定を迷われている担当者の方、具体的な導入を検討されている場合は、ぜひ一度ご覧ください。
不正検知サービスに関するお役立ち記事
「不正検知」に関して、対策や事例紹介などの記事を掲載しています。最新の情報を収集して、どの企業がどのような対策を取り成果をあげているかなど、ECサイト他社の動向も知ることができます。
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