2023.12.26 通販会社
広告規制激化の中、ヘルスケアD2Cはどう戦うか?Jフロンティアと探る広告運用術
D2Cにおいて各種広告規制などが強まり、WEB広告による新規獲得が難化の一途を辿っている。各社とも現況を打破すべく模索している状況だ。そんな中、「酵水素328選 もぎたて生スムージー」といった置き換え食品などをヒットさせているジェイフロンティア(株)はLPに徹底的にこだわり抜き成果を出している。近時は漢方薬商品が次なるスター商品に育ちつつあるという。同社で実際にWEB広告運用を手掛けているヘルスケア事業本部のWEB通販事業部・浜田智早部長に話を聞いた。
スター商品育成のカギはタイミング掌握
ーーまずはご自身の立ち位置についてお伺いしたい。
浜田智早部長(以下、浜田):当社はEC・通販向けの広告代理業を祖業とし、健康食品や化粧品の自社D2C事業とオンライン診療・オンライン服薬指導・薬の宅配を一気通貫で行う医療分野のプラットフォーム「SOKUYAKU」を展開する事業会社です。自社D2C事業は私の所属するヘルスケア事業本部の管掌となり、そこからオンラインとオフラインチャネルで事業部が分かれています。オンライン部門の責任者を私がやらせていただいている形です。社歴としては10年超で、当社が広告代理業を主としていた時代から自社D2Cを拡大していく流れもすべて見てまいりました。自社D2Cは初期から実際の広告運用の現場仕事を手掛けてきました。現在もWEB広告まわりについて自分自身も手を動かしながら責任者としてみています。
ーーD2C事業が拡大していった要因についてどうとらえているか。
浜田:強いスター商品を持てたことが一番の要因だと考えています。そして、スター商品は世のトレンドの影響を受けながら誕生するものだとも実感しました。ですので、トレンドを掴み良きタイミングで商品の投下や広告展開を適切に強化できるかどうかがスター商品が育つカギだと思います。
ーー具体的に聞きたい。
浜田:当社でいうと「酵水素328選 もぎたて生スムージー」という商品が2018年からスター商品となっています。WEBではないですが、テレビショッピングのQVCでも売れ行きが好調で2023年に過去2年以内に大きく成長した商品を表彰する「ライジング・スター・アワード」も受賞しておりオンオフ問わずに強いスター商品となっています。ヒットのきっかけはやはり「タイミング」でした。
はるな愛さんの起用が奏功
ーーそのタイミングとは。
浜田:2018年ごろから健康食品関連の広告規制が激化をはじめており、いわゆるダイエットサプリメントの広告展開が難化しはじめていました。そしてWEB広告のトレンドとして「置き換え食」に注目が集まるようになっていきました。そんな中、当社では置き換え食にあたる「もぎたて生スムージー」という商品をすでに発売していたのですね。当時、プロテインなど置き換え食の商品自体はD2Cにありましたが大きなヒットを出しているというものはまだなく、スムージーも爆発的な人気が出る少し前でした。トレンドがはじまるタイミングに間に合う時点で適切な商品があったということです。
ーースター商品へ育ったストーリーは。
浜田:広告で他社商品との差別化をしっかりと訴求できたことにあると思います。最大の訴求ポイントであり差別化を実現したのは、当社が従前から強みを持つ「キャスティング活用」にありました。同商品にはタレントのはるな愛さんを起用しているのですが、商品のお客さまとなる層への訴求力が強力だったのです。というのも、はるな愛さんは年代問わず女性からの支持や共感性が高く、美しくあるための努力を続けていらっしゃいます。同商品は「自力で頑張りつつも補助するものがほしい」といった層に向けて開発された商品です。そのため、はるな愛さんの起用によって「自分で頑張りたい、という気持ちや姿勢を真剣に支える商品」であることがしっかり伝えられたのだと思います。またお客さまにとっても”あるある”と思ってもらえるようなコンテンツを、はるな愛さんからも発信していただけたことによって、良い意味で身近に感じていただけ「自分もやれそう」という思いを後押しすることができたのです。こうした共感を引き起こすコンテンツをLPに落とし込んでいくことで、沢山のお客さまからご支持いただけるスター商品に育っていきました。
「酵水素328選 もぎたて生スムージー」のLPなどに使用されているはるな愛さんの素材(ジェイフロンティア提供)
漢方薬を次なるスター商品に
ーー次なるスター商品の育成はどうか。
浜田:現在は、第2類医薬品の漢方薬に人気が集まってきています。「生漢煎 防風通聖散(しょうかんせん ぼうふうつうしょうさん)」という商品を展開しているのですが、お腹の脂肪を分解・燃焼・排出促進をする漢方で「肥満症・便秘・むくみ」訴求で獲得が進んでいます。ダイエット系の漢方というのは物珍しさもあり受けているのではないかと分析しています。また漢方という特性もあり、これまでサプリメントではリーチできていなかった層にあたっているという実感もあります。「健康食品は苦手だが、漢方なら…」という層にリーチできるというのでは、ということです。さきほどタイミングの話をしていますが、漢方のD2C展開についても良きタイミングを掴めたなと思っています。WEB広告で展開されている漢方はまだ少なく、ブルーオーシャンであると感じています。今後は「防風通聖散」を軸に漢方のラインアップを拡充しさらに獲得を進められればと考えています。
ーー漢方も含め広告運用を効率化する秘訣はどうか。
浜田:獲得しやすいLPをいかに用意し広告を回していくか、に尽きると思います。広告運用は時流に合わせたトレンドや商品特性による適合性など総合的に判断してLPのコンテンツを作る必要があります。例えばインフルエンサーマーケティングが最適な商品もあれば、アド系で充分獲得できる商品もあるということです。当社では広告を自社運用をしているわけではないのでパートナーさんとどれだけ密にコミュニケーションをとるかがカギになると思います。というのも成功の秘訣は結局、パートナーさんからあがってくる媒体やアフィリエイターさんからのニーズにどれだけ応えられるか、だからです。媒体ごとに特性が違いますので当然エンドユーザーのニーズや層も違い、求められる素材も変わってきます。これに対しスピーディーかつ柔軟に応えられるかどうか、がポイントです。そのため当社ではLPをかなり細かく更新していますし、媒体ごとや広告キャンペーンごとなどLPをそれぞれ用意することもあります。1商品あたりのLP自体の数は他社と比較しても多い方だと自負しています。
ーー媒体やアフィリエイターとの意思の疎通に心がけていることはあるか。
浜田:いかにエンドユーザーさんに寄り添うか、に重きを置いています。つまり、自らエンドユーザー側に立って自分事として捉えることを意識しています。例えば、自分が普段から見ていないメディアに出稿したり、自身がアクティブユーザーではないSNSで広告を回して獲得を狙うのは難しいと思います。私自身、商品開発にも携わっているので、余計に世間のニーズやトレンドには人一倍敏感であるべきだと思っております。チーム全員でも意識して「エンドユーザー側に寄り添い、仕事をする」ことに取り組んでいます。これが一番、外部パートナーさんとの意思の疎通をスムーズにする要素にもなります。獲得が進むLP作成のコツは愚直かつ誠実にお客さまや商品、パートナーさんと向き合うことに尽きると考えています。ニーズもトレンドも移り変わっていくものですので常に情報のアップデートとクリエイティブの改善が必要です。そのためにも、一生活者としてエンドユーザー側の気持ちに寄り添えるかどうかが大事なのです。
キャスティングの力がCTR/CVR貢献
ーーそのうえでCVRを高めるテクニックをできる範囲で教えてほしい。
浜田:キャスティングによる訴求力はやはりCTRやCVRの向上に直結します。タレントさんによる素材の力はやはり強いです。CTRが圧倒的です。
さらに言うと「実際に1カ月食べてみた」といった体験レポートのようなコンテンツは強力にCTRやCVRを後押ししてくれます。動画といったコンテンツであればなお強力に後押しができます。当社では半年にも及ぶ長いストーリーをタレントさんと一緒に作り上げ、お客さまからの共感を勝ち取りヒット商品を生み出した事例もあります。どんなコンテンツもいかにLPに落とし込んでいくかがカギとなります。
また広告運用を仕事としてやっていますと、獲得自体に目が行きがちなのですが世の中のトレンドとして「カスタマーサクセス」という観点も重要です。ただ新規がとれればいいのではなく、長く続けてもらうためにはどうしたらいいか、というところまで気を配った広告運用やクリエイティブ作りが大切です。
ここまでお話しした通り、愚直さや誠実さ、アンテナの感度の高さがモノを言う業界だとは思いますが、CTRやCVRを高める最後の一押しとして抽象化されたノウハウというのももちろんあります。当社は祖業の広告代理業で自社D2Cのノウハウを落とし込んだD2C支援も手掛けていますので、このあたりのサポートも行っております。
ーー最後に通販事業の展望について聞きたい。
浜田:商品の面ではこれからもスター商品を育てていきたいと思っています。漢方の分野は拡大できると思っていますのでこのあたり力を入れていきたいです。広告運用については先ほどもお話したとおり、エンドユーザーに寄り添ったクリエイティブ作りと運用を愚直に行っていきます。
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