2024.01.24 マーケティング
なぜD2CがMIYASHITA PARKで期間限定店を仕掛けるのか?THE [ ] STOREの狙い
都内、渋谷区立宮下公園を三井不動産㈱が再整備し、公園・商業施設・ホテルが一体となった新しい形のミクストユース型施設「MIYASHITA PARK」。その中にある商業施設「RAYARD MIYASHITA PARK」内に、2023年7月、「THE [ ] STORE(ザ・ストア)」がオープンした。同店舗は、週単位で出店ブランドが入れ替わる。統合コマースプラットフォーム「ecforce」を開発・提供する(株)SUPER STUDIOと三井不動産がOMOソリューションとして提供する初のリアル店舗だ。EC/D2Cブランドが週単位で出店する次世代型ショップ「THE [ ] STORE」の狙いに迫る。
(本稿は2023年12月8日に都内で開催されたカンファレンス「SPIDER SUMMIT for EC(主催:(株)Spider Labs)」内の講演レポートとなります)
(本稿は2023年12月8日に都内で開催されたカンファレンス「SPIDER SUMMIT for EC(主催:(株)Spider Labs)」内の講演レポートとなります)
hyakki/koyoiなど気鋭ブランドが出店
昨夏にオープンした「THE [ ] STORE」は週単位で出店ブランドが入れ替わる。店舗名である「THE [ ] STORE」の「[ ]」には、出店するブランド名等を入れる想定でこのようなネーミングとした。これまでに、大人気ロックバンドKing Gnuのフロントマン・常田大希氏が主宰するクリエイティブレーベル「PERIMETRON(ペリメトロン)」のブランドプロジェクト「hyakki(ヒャッキ)」や低アルコールD2Cブランド「koyoi(コヨイ)」、ストリートアパレルブランド「MEQRI(メクリ)」やスキンケアブランドの「KEIKO INFUSION(ケイコ・インフュージョン)」、撮影エンタメスタジオの「GINGAGA(ギンガガ)-SPACE MOVIE STUDIO -」などが出店した。
12月の「SPIDER SUMMIT for EC」では三井不動産のベンチャー共創事業部 共創事業グループ宮地大樹氏と、SUPER STUDIOの取締役CRO真野勉氏が登壇。「SUPER STUDIOが提供するOMOソリューションを事例で解明!EC/D2Cにおけるリアル販路展開の戦略と価値」と題して「THE [ ] STORE」の狙いなどについて語った。
カルチャーの発信地でリアルの接点作りを
「THE [ ]STORE」は、EC/D2Cブランドへの総合的なブランド経営支援として、リアルでの顧客接点を用意することの必要性を感じ、構想を練っていたSUPER STUDIO側からの提案で実現した。SUPER STUDIOは「最初から渋谷のRAYARD MIYASHITA PARKという“カルチャーの発信地”といえるロケーションを狙っていた」(真野取締役CRO)という。独自の強い世界観を持つEC/D2Cブランドが、リアルでの顧客接点づくりを行うのにRAYARD MIYASHITA PARKは絶好の地と見ていたという。
一方三井不動産は、RAYARD MIYASHITA PARK以外にも「ららぽーと」や「三井アウトレットパーク」など全国各地に大型商業施設を抱える。オンラインの取り組みとしては、三井ショッピングパーク公式通販サイト「&mall(アンドモール)」を運営している。しかし、EC分野のデータ活用やノウハウの保持については、課題もあったという。加えてコロナ禍の影響もあり、三井不動産は街づくりにおいてオンラインを活用しリアルの価値を高める取り組みをより加速させようとしていたところだった。「そんな折にSUPER STUDIOさんと縁があり、RAYARD MIYASHITA PARKで仕掛けられるというタイミングがあって実現した」と宮地氏は「THE [ ] STORE」立ち上げの経緯を振り返った。
THE [ ] STOREが提供する3つの価値
THE [ ] STOREが提供する価値は
①EC×リアルに最適化されたソリューション
②総合的なブランド経営支援
③大企業とベンチャーが生み出すシナジー
としている。
例えば食品であれば試食、アパレルであれば試着といったリアルならではの体験を通して、商品の魅力やブランドのストーリーなどを伝えることができる。これまでECでは実現できなかった顧客接点の強化を行いながら、オフラインであってもECさながらのデータ蓄積を可能とし、総合的なROIを加味したブランド経営の支援に資するとしている。土台として、リアル店舗への出店を可能とする場、そしてECのシステムをソリューションとしてリアル店舗でも利用する。加えて三井不動産グループという“リアル店舗展開のプロ”である大企業と“ECのプロ”であるSUPER STUDIO、そして「ecforce」を導入するEC/D2Cブランドの掛け合わせによって生み出されるシナジーに価値があるとし…
❶オンラインとオフラインのデータ連携強化
❷来店データの解析と活用
❸顧客ロイヤルティ向上施策の拡充
に繋げられると考え、THE [ ] STOREは展開されているという。
また出店側の課題となる…
1⃣コストと運営における人的な負担
2⃣一般的にデータ取得が難しいリアル店舗での購入顧客
3⃣デジタルだけでは壁がある顧客実態の把握
を一挙に解決できるソリューションであることも解説。
「THE [ ] STORE」は、常駐スタッフが接客対応するため、スタッフ雇用が不要。また、ブランドイメージや用途に合わせてカスタマイズできる可変式の什器や、どんなブランド・商品を陳列しても馴染むモノトーンを基調とした内装デザインであるため、内装工事も不要だ。「限りなくブランド側の負担が低い状態でリアル店舗の出店や振り返り、可視化ができる」(真野取締役CRO)と言う。
また、お客様が商品を購入する際は、「ecforce」を利用し購入するため、リアル店舗での購入者データをecforceに蓄積できる、顧客の資産化が可能となる。リアル店舗の出店における経済合理性を、マーケテイング指標ベースやLTVベースで評価できるともいう。
リアルならではの強みとして、顧客の一次情報を収集・把握可能で深い顧客理解にも繋げられる点が挙げられた。前述したような、試食や試着での反応といった情報もデジタル側のパフォーマンス改善に生かせるということだ。
試着や試食などリアルの強さで越えるハードル
カンファレンス開催時までの事例についても言及した。EC/D2Cブランドとして第一弾の出店となった、漫画やアニメなどをはじめとしたコンテンツIPとのコラボレーション商品を展開するストリートアパレルブランド「MEQRI」は、試着ができるといったリアルならではの取り組みも奏功し、「非常に良い結果が出せたと思う」とした。RAYARD MIYASHITA PARKは、世界中から注目を集める日本の流行発信地・渋谷という立地もあり、「インバウンドで来日している海外の方の来店や購入も目立った」とし、インバウンドユーザーのリピート購入の促進や他言語対応の検討など、ブランド成長のきっかけとなる前向きな課題も見つかったとした。
食品の出店例では「購入者数といった面などで、思った以上の結果だった」と振り返る。「EC/D2Cブランドの食品は、スーパーに並ぶ食品などと比べて単価が高めになりがちなため、味を確認せずにECだけで購入するというのはハードルが高い。リアル店舗で試食できると『美味しい!』といった体験を通して、その場ですぐご購入いただけることがある」とリアルならではの提供価値についても語った。
両社では、今後の展望としてスタートアップ企業との連携強化や数カ月の運営を経て見えてきた課題などに対応し、ソリューションの強化を図っていくという。加えて、まだ出店のないジャンルや商材にも活用を広げられるようにしていくと語った。
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