リリースから今まで常に前月比115%を達成
――はじめに「ECのプロ」の成長率について教えてください。
WUUZY 代表 竹中星矢氏:2022年7月のリリースから1年半で、プロの登録者は3,500人を超え、また、リリース当初の案件商談数は月10~20件程度でしたが、ありがたいことに今では案件商談数も月に200件以上に成長しました。
売上ベースでいうと、リリースから今まで毎月、前月比115%以上を達成し続けており、右肩上がりで成長を続けています。
――人手不足という時代にマッチしたサービスかと思います。このようなマーケットニーズの高さが、今の成長につながっているのでしょうか?
マーケットのフィットバランス自体はめちゃくちゃ高かったと思います。単なる人材サービスではなく、「人材サービス×EC」というビジネスだったので、砂漠でコーラを売るみたいな感覚はありました。
近年、EC事業者の数は急速に増えていて、2018年に250万店舗だったのが、今ではその倍の約500万店舗にのぼります。それだけ増えているにも関わらず、EC化率はそれほど上がっていないんです。つまり、売上を堅実に築けているEC事業者は実はそんなに多くないということ。
ここ10年間の間に、ぶっちゃけECサイトそのものは誰でも簡単に立ち上げられるようになって、どんどん民主化されるにつれ、その技術的難易度も劇的に低下しました。
ただ一方で、売上を上げる方法には多くの人がアクセスできていない。なので、「ECの売上を上げる方法を提供する」というマーケットの可能性は非常に高いと感じます。
さらに、ECは人材のアセスメント (良し悪しの見分け方) が非常に難しいです。小売業態というのは、アパレル・化粧品・お菓子など取り扱う商品ジャンルによって、マーケティングの方法も違うし、売り方のセオリーも変わります。そのため、専門性を持った人材がそろっている場所とのマッチングは、難易度は高いものの時代背景的にまさに必要だと考えました。
成功要因の8割が「オペレーション」や「コスト意識」
――「EC」だけでも、「人材」だけでもダメだったんですね。
そうですね。ですが、こういったマーケットの良さだけが成長要因ではなかったかなと思います。
弊社の成長要員の一つは、なによりも愚直に行ってきた「オペレーション」にあると考えています。僕自身会社を経営する上で、「オペレーショナル・エクセレンス」を目指すということを一番の軸にして、社内のオペレーションやマニュアル、部署や目標設計のつくり方など、かなり注力してきました。
正直、感覚的には成長要因の8割がこのオペレーションの愚直さですね(笑)
――具体的にはどのようなことを行ってきたのでしょうか?
ざっくり例を挙げると、「営業の初回着座から受注までは何%なのか」「初回の着座から契約までは何回の商談をするのか」「どのようなプロをどのような案件にマッチすると成果が出るか」など、まずはそういったデータを全部取ってから、そのデータに対して、受注率を1%高めるためには何をしたらいいのかなどの分析をひたすらして、無限に繰り返すみたいなことです。
ビジネスとして一発ホームランを狙うというコンセプトでもないので、例えばタレントを起用した広告やテレビCMへの出稿などもしていません。弊社の中では、やるべきことをやって、売上を出し、利益を出して還元するという、当たり前の商売を当たり前にやってきたという感覚が大きいですね。
基本的な部分だとは思うので、もちろん我々に限った話ではありません。ただ、弊社はそこを死ぬほど愚直にやってきたというのが、今の成長の根幹にあるところです。
――社内やスタッフにもその考え方が浸透しているのでしょうか?
弊社はまだまだ小さな会社ですし、日ごろから僕がそういった考え方やコストの意識みたいなのを伝えてきたことで、今は当たり前のように浸透していると思います。
例えば、展示会では誰よりも早く会場へ行って、自分たちでブースをつくっています。全部DIYでやろうよと(笑)
ボードなども業者に制作を依頼すると、1ボードにつき数万円もかかるので、町の印刷所へ行って、数千円ぐらいで印刷して経費削減をしています。
そういったコスト意識に加え、スタッフ全員が「今回の展示会で成果が出なかったらウチ(会社)はなくなる」という危機感を共有しているので、会場で一番小さいブースでも一番たくさんのアポを取るという意識につながっていると思います。
実は、この姿勢や意識は会社が少しばかり成長した今も変わっていません。展示会のブースは全部DIYで行っていますし、危機感も緩まないように「ウチなんかまだまだまだまだ挑戦中のスタートアップだよ、勘違いしちゃ駄目だよ」と伝えています(笑)
「何からやったらいいかわからない」ところから一緒に解決
――次に「ECのプロ」の利用企業について教えてください。どの程度の規模感の利用が多いのでしょうか?
中小企業さまから大手の企業さままで幅広くご活用いただいている印象を覚えます。規模的には、月商300万円〜のEC事業者さまが多くいらっしゃいます。というのも、「ECのプロ」を活用いただくとなると、月30~40万円ほどの人材を活用するくらいの予算や体力が必要になる点がポイントになっているかと感じます。
今後は、小規模の事業者さまでも、ノウハウが不足していて、そこを補っていこうという熱量や思いがあれば、ぜひご活用いただきたいと思っています。
ECのプロは、最も多くご利用いただいているお客さまであっても、売上占有率は約3%ほどとなっていて、一社さまから大きく売上を上げるというビジネスモデルではありません。できる限り多くの企業さまにご活用いただくことが、「すべての人に強みを活かせる機会を」という弊社のミッションにも繋がっていくと感じます。
――地方のEC事業者さまも、ノウハウ不足といった課題は多いのではないでしょうか?
そうですね。私たち自身、地方や地場の事業者さまの支援に対しては、かなり高いモチベーションを持っています。「ECのプロ」のビジネスモデルは、基本的にリモートでのご支援をベースとしているので場所の近さ・遠さは問題にはなりませんし、悩みごとや困りごとがあっても、知り合いに相談するくらいしか選択肢がない...という事業者さまこそ支援させていただきたい思いがございます。
先ほども申し上げましたが、弊社は「すべての人に、強みを活かせる機会を」というミッションを掲げています。なので、東京の第一線で活躍されているプロたちに対して、地方の事業者さまに知見や経験などを提供する機会が設けられるというのは、とても意義が大きいことだと感じております。
――利用者にはどのような課題感をお持ちの方が多いのでしょうか?
最も多い課題感は「何からやったらいいかわからない」というものです。
売上が上がらないという壁にぶつかっているけれど、どこが課題になっているのかわからない、課題をうまく表現できない、優先順位を決定できないという状態ですね。
例えば、「カートのカゴ落ちを改善したいんです」という特定された課題を持っているのであれば、僕らではなくて、ツールベンダーさまに相談して、ツールを見直したほうが良いパターンもあるかと思います。
一方で「そもそも何からやったらいいかわかんない」「チームを中長期的に成長させていきたい」というときに、実際チームや社内に入って一緒に課題から見つけ、隣で同じように手を動かして伴走していくというのが「ECのプロ」の利点かと思います。
我々も「この課題感を解決するためにこの人をアサインします。他のことはしません」ではなく、「ご契約企業さまの売上アップに繋げる」という目的志向かつ柔軟なスタンスで一貫してサービスを運営しています。
――具体的にはどのような提案をしているのでしょうか?
例えば、楽天モール売上アップのために、楽天職人のようなプロを紹介したとします。結果として戦略の策定からページの見直し・購入率の改善、広告運用など、一通りの型が6ヶ月でできたとします。
そういったタイミングで、「楽天モールは形になってきたし、現場の方々でもしっかり運用できるよになってきたので、次はamazonのプロにスイッチしてさらにグロースしませんか」と提案するなど、契約企業さまやプロにとっても、よりノウハウが提供できる機会を創り出すことを意識しています。
弊社のカスタマーサクセス部門の社員も、すべての契約企業さまとのチャットを見たり、電話したりして、そういったフォローを徹底するように心がけています。これは先ほどお伝えした愚直なオペレーションにもつながってきますね。
非常に光栄でありがたいことに、ECのプロに登録いただいているプロの方たちも、自分のノウハウや経験が、企業さまの売上に貢献できているならうれしい...という感覚を持っていただいている方が多い印象です。
ですので、バリューが全然出ていないのに無理やり契約を続けて、最終的に契約企業からの満足度が低いという状態は、プロの方にとっても避けたい事態ですし、そうならないように我々もしっかり毎日チェックして、しっかりと「強みを活かせる機会」を提案をするというのが職責だと考えています。
――利用者の課題感というのは、サービスリリース当初から変化していないのでしょうか?
現在はこのような上流の課題解決に寄り添う形が多いですが、今後は人手が足りないといったニーズへの対応も増えてくると考えています。
実際に、課題解決のためにやるべきことはわかっているけど、人手や手数が足りなくて推進速度が遅いし、人を新しく採用できるほどのリソースもない、という課題感を持つ契約企業さまも増えています。
そういった企業さまに向けての最適なパッケージも、今後しっかりと対応していけるようにしていきたいと考えています。
社内にノウハウを残し、契約終了後にも自走できる組織に
――逆に「ECのプロ」を利用しても成果が出にくいケースはありますか?
ノウハウが足りていないという訳ではなく、本当に作業をするだけの人が欲しい、プロの持つ専門性は不要だよという場合はマッチしにくいと思います。
あとは、プロとの距離感でしょうか。プロの方たちと密にコミュニケーションを取って、同じチームとして一緒に連携できるような組織体制がないと、プロの方たちを上手く活用することは難しいかもしれません。
――アウトソーシングではなく、社員の1人のようにプロを活用する。
そうですね。弊社もコンサルタントや顧問といったスタンスで、プロをアサインしているわけではありません。二人三脚で課題を解決していくというスタンスをお互いが持てるようにしています。
――ECのプロから放出されたノウハウは社内に残るのでしょうか?
もちろんです。そこは弊社のこだわりでもあり、徹底しているポイントです。契約が終了した後に、企業の売上が下がるということが無いようにしたいと考えています。
時代の変化スピードもどんどん速くなっています。先月うまくいった方法が今月うまくいかなくなるといったリードタイムはどんどん短くなるので、組織自体が学習できる組織を持つということが非常に重要だと思います。
「ECのプロ」では、プロの考え方や作業内容を、契約企業さまに普通に開示しています。
隣で作業してくれた人がいなくなった途端に、その人が実際に何していたかわからないというのは、組織的にも問題がありますよね。
博報堂大広グループへの参画で事業はさらに拡大
――今年2月に大広へM&Aを実施いたしました。
はい。大広グループへ参画をしましたが、実際には経営陣も変わらずで、これからもより良い事業作りを目指していきます。もともとサービスリリース当初から、こういったアライアンスは構想しており、今後のサービス拡大を考えたときに、今のタイミングがベストだと判断しました。
大きなグループとして長年蓄積してきたネットワークや信頼というものがありますので、そこを毀損しない形かつ、サービスがカニバることがないような、別軸で「ECのプロ」をご提供できたらよいと考えています。
僕らは特定のプロダクトを持っているわけではなく、課題に対してニュートラルな解決策を、お客さまに最適な形でご提案できます。なので、「ECのプロ」よりも、大広さんグループが持つサービスのほうがお客さまに最適であれば、そちらをご提案するといったことも今後はできると思いますので、そういった柔軟な心は今後も持ち続けたいです。
――今後の展望は。
日本は人口動態も良くない国なので、こういうノウハウやナレッジを持っているプロたちと、それを必要としている事業者さまをつなげられるというのは、サービス提供側として大きな社会的意義を感じられます。
まだできてない部分はたくさんありますが、今まで以上に愚直に進めていき、もっともっと多くのプロの方の人生を変えて、もっともっと多くの事業者さんの売上を上げたいです。
「ECのプロ」に登録をいただいている方に話を聞くと、「ECのプロ」があるから会社を辞めた、独立したみたいな人は結構多くて、それを聞くと素直にうれしいですし、弊社の意義を感じます。人対人の関係で成り立っているサービスなので、そうやってどんどん人の人生を良い方向に変えていきたいと思います。
あとは弊社がこれまで連携させていただいたEC業界の様々な先輩方や企業さまには、感謝しかないので、今後はこの恩をもっとしっかり返せるようにしていきたいです。
EC業界は、まだ若くてそれほど大きくない業界ですので、業界内で手を取り合うことで、シナジーを生み出して業界全体を活性化していかなければならないと考えています。
ECのプロ
https://www.ecnopro.jp/