2024.05.17 通販支援
「うなぎ」が一番売れるタイミングは? 推計データから見る「日本EC市場」の今と未来
Nintは3月21日、電子書籍『日本EC市場の今と未来がわかる―アフターコロナ分析と未来予測2024』を発売した。本書では、「Nint推計データ」を活用し、アフターコロナと呼ばれる2023年の動向を振り返り、2024年以降の分析、予測をしている。そんな本書の見どころをはじめ、ECにおけるデータの重要性について、書籍を担当したNintの山本真大氏に話を聞いた。
株式会社Nint
山本真大氏
株式会社明治の菓子営業としてキャリアをスタート、IT業界・流通業界・他業界のメーカー職を経験し、オフライン市場における、製造・流通に携わる。EC業界の今後に魅力を感じ株式会社Nintへ入社。営業・カスタマーサクセスを経て現在のアナリスト業務を行う。データ分析を用いた企業ブログ記事の執筆を中心に、電子書籍の執筆も担当。
アフターコロナの影響は? 2023年の動向を振り返る
――はじめに、書籍で活用されている「Nint推計データ」 について教えてください。
Nint 山本真大氏(以下、山本):「Nint推計データ」は、各ECモールの売上ランキングをベースに、弊社が独自のアルゴリズムで売上推計を算出しているものです。
リアル店舗の場合は、POSデータというわかりやすい販売記録データあるにも関わらず、国内ECの7割を占めるといわれている3大ECモール「Amazon」「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」においては、自分たちのショップ以外の売上に関するデータが非常にわかりづらい状態です。
そこで、Nintでは独自のアルゴリズムによって、ECモールにおけるショップやカテゴリごとの売上、販売数量などを推計し、データとして提供しています。
推計データの最小粒度は、ショップの1SKU単位で、それが積み重ねによって、上位階層にあたるショップの売上や、モールごとに分類されているジャンルごとの売上なども推計でわかるようになっています。
――書籍でも触れられていますが、推計データからわかる2023年の動向について、1例を教えてください。
山本:2023年に特徴的な動向を見せているのが「ビール、発泡酒」ジャンルです。実は同ジャンルは、前年割れを起こしており、アフターコロナと呼ばれる2023年の影響を大きく受けているともいえます。
コロナ禍からの反動もあり、昨年は、家ではなく外で飲酒する機会が増えた方も多いのではないでしょうか。さらに、2023年10月には酒税法の改正もあったため、月ごとの売上を見てみると、10月頃の売上が鈍化していることがわかります。
また、市場調査を進めていくと、世界的な流れとして、「ソバーキュリアス(お酒は飲めるけど、あえて飲まないスタイル)」という文化が日本にも定着しつつあることが、売上に影響を与えていることがわかりました。
――耐久財についても教えてください。
山本:耐久財は、「マッサージ機器」のジャンルが前年割れを起こしているのが特徴的かと思います。
要因のひとつとしては、2022年から好調だった「マッサージガン」の売上が停滞気味になっていることが挙げられます。これに続く、人気商品が出てきていないことが「マッサージ機器」ジャンル全体の売上に影響を与えています。
ただ、2023年は外出機会が増えたこともあり、「フットマッサージャー」が少しずつ復調の兆しを見せています。この傾向は2024年の動きに直接つながってくると思いますので、今後の変化について、関連事業者さまは注視していく必要がありそうです。
書籍では、このような社会の変化と今のEC市場の状況というのを照らし合わせ、いくつかのジャンルについて、詳しくまとめています。
アフターコロナの変化というのは、なんとなくで感じ取れる部分はあるかもしれませんが、実際にデータ、数値を見て、今後のECビジネスにおける意思決定をすることが大事だと考えています。
EC市場でも「季節性」が重要になっている
――書籍ではEC市場における季節催事に関するテーマがあります。
山本:もともとECにおける買い物は「すぐに買って使う」ではないため、リアル店舗と比較すると、季節催事やハレの日といった考え方は強くありません。それよりも各モールのセールタイミングなどでの販売戦略が重視されてきました。
しかし、Nint推計データを見ると、モールのセールのタイミングに関わらず、売上の高いジャンルというのが存在することがわかりました。
そこで弊社では、モールにも季節性があるのではないかと考え、今回書籍で季節催事と売れるタイミングを知っておく重要性について、解説しています。
たとえば、「加湿器」は12月に最も売れ、2月になると急激に売れなくなる商品ですが、このタイミングを知っておくだけで、仕掛けるタイミングというのがわかります。
また、「うなぎ」の需要期は、6月の土用の丑の日です。少し前の売上が一年の3割程度を占めています。なので、このタイミングを逃すと、1年の売上にも大きく影響するため、売れるタイミングと売れないタイミングをしっかり理解してくことが重要です。
――気温の変化なども激しくなっている昨今は、今までの常識も通用しなさそうです。
山本:そうですね。実際に、昨年は暖冬だったため、ヒーターなどの暖房器具が売れ始めるタイミングが例年より遅くなっているという傾向がありました。
書籍では「季節指数※」をグラフにし、需要の高いタイミングを可視化しています。需要期がわかれば、その商品の売りを強化すべきタイミングがわかります。こういった季節催事の市場規模が今、どれほどの大きさになっているのかを、パッと見でわかるようにしたいと考え、書籍に盛り込んでいます。
※季節指数は一定期間(今回は各年1月~12月)の売上や、販売数量の平均を100とし、100以上であれば需要が高い月、100以下であれば需要が低い月として判断する指標の一つ。
――EC市場における「季節催事」重要性は今後も高まるのでしょうか?
山本:はい。もしかしたら、一部の季節催事は、インターネットならではの需要が起きる可能性があるかもしれません。
たとえば、ふるさと納税の返礼品のそのケースのひとつとして挙げられます。さきほども例に挙げた「うなぎ」は、ふるさと納税の返礼品に入ることもあります。
そのため、土用の丑の日以外のところで、売上を上げられるタイミングが2024はあるかもしれません。
このように書籍では、EC市場が急速に変化したコロナ禍前である2019年、もしくはコロナ禍である2020年とアフターコロナを迎えた2023年を比較し、EC市場における催事の構成比の変化というものも掲出していますので、過去と比較し、その構成比が上がっていれば、売りを強化していくべきですし、そこが下がっていれば、新しい別の売り方を考えなければなりません。
2024年は、このような季節催事を含めた季節性というのは要チェックなポイントだと考えています。
ECにおける「セール」は売上を上げるだけの短期的施策ではない
――書籍の終盤では、ECにおける「セールの考え方」について解説されています。
山本:はい。ECにおけるセールのメリットについて、コラムとして掲載しています。もちろんセールのメリットは、当然ながら売上が短期的に上がることです。
ただ、セールのメリットを長期的に見ると、自分たちのショップへの流入きっかけになり、新規顧客との接点が増加し、そこからさらにリピーターになるといった効果もあります。
ですので、短期的な売上だけをセールの結果としてみるのではなく、長期的な効果も視野に入れる必要性について書籍では触れています。
もちろん、セールにはただのっかるだけではなく、セール時には商品名称のところに「今だけ」といった文言を入れて、上位表示を狙うなど、細かい工夫も必要です。
――推計データは、セールのタイミングでも活用可能なのでしょうか?
山本:はい。一番は在庫管理に活用できる点です。さきほど、1SKU単位でわかるといったように、最終的に過剰在庫にならないで売り切るにはどうすればいいかといった推計データがありますので、そのデータをもとに、欠品予防や在庫過多を防ぐことが可能です。
――最後に、書籍のポイントやオススメしたい方について教えください。
山本:そもそも本書は、全体が見えづらいEC市場というものに対して、多くの人に、今の市場規模や売上を知ってほしいと想いを軸につくっています。
ですので、まずはECに関わっている方は全員にオススメできる一冊となっています。EC市場がどうなっているのか、具体的な数値やデータで見たいという方や、ぜひご一読ください。
EC事業者さまは、日々の業務に忙しく、全体感を把握するといった点までなかなか手が回らないことも多いと思います。ジャンルの売上規模がどう変わっているのか、競合がどの程度売上を上げているのかなど、なかなか日々の業務の中では知ることができません。
本書では、そういった市場の規模感などのデータを数字で確認することができるので、自分たちの立ち位置や業界の状況をしっかりと把握していただき、この先どうなるかわからない状況の中で、市場予測していくためものとしてお役立てください。
また、ECではなく、リアル店舗では催事に関わっている方にもオススメです。リアル店舗とECの違いというのを感じていただけると思います。
<電子書籍の詳細>
書籍タイトル:日本EC市場の今と未来がわかる―アフターコロナ分析と未来予測2024― Kindle版
発売日:2024年3月21日(木)
価格:550円(税込み)
詳細ページ: https://www.amazon.co.jp/ebook/dp/B0CTZ8YCWZ/
※外部Amazon Kindleページへリンクします。
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