近年、企業のDXが加速する中で、注目度が高まっているのがPIM(Product Information Management:商品情報管理)だ。商品情報を一元管理することで、業務の効率化だけではなく、顧客の満足度向上、さらには売上にも直結する。昨今は、日本企業の導入や問い合わせも増えているという。そんなPIMについて、Contentserv セールスマネジャー 小菅 徹哉氏に詳しい話を聞いた。
CRMの商品版? PIM(商品情報管理)とは何か
――はじめに「PIM」について教えてください。
Contentserv 小菅 徹哉氏(以下、小菅):PIMとは、商品情報を一元管理、可視化し、その商品情報を基にブランド力や購買体験、顧客満足度を高める仕組みです。
顧客情報を管理するCRMと考え方は似ており、乱暴な言い方をしてしまえば、CRMの商品情報バージョンがPIMといえます。この10年間、多くの企業がCRM(顧客情報管理)には莫大な投資をしてきたのですが、商品情報については、縦割り組織の中でバラバラに管理されているままというのが実態です。
これまで放置されてきた商品情報の問題が顕在化したきっかけは、コロナ禍で起こったタッチポイントの変化です。外出制限などで、顧客との接点がデジタルのみで完結するようになったことで、商品情報を最適なタイミングで最適な顧客に提供することが必要になりました。
そういった課題に対して、PIMを活用すれば、組織内で横断的な商品情報の共有を行い、カスタマージャーニーに応じた最適な情報提供が行えるようになります。
業務効率化だけではないPIMの効果
――PIMを導入することでどのような効果が生まれるのでしょうか。
小菅:PIMは、商品のスペック、価格といった情報だけではなく、プラットフォームやチャネルごとに必要な画像や動画など、商品に関わる全てのデータを一元管理することができるようになります。
実店舗やECモールなど各チャネルに連携できるので、PIMの情報だけをメンテナンスすれば、すべてのチャネルに反映されます。
特にECなどの場合は自社ECやモールごとに、掲載する画像のサイズが決められていて、それぞれに合わせた画像をつくらないといけないなど、対応に必要な作業量は莫大です。そういった細かいところも、PIMにあらかじめセットしておけば、半自動化することができます。
もちろん管理業務の効率化だけではなく、顧客へ提供する情報の一貫性や正確性を担保することもPIMの役割です。情報の一貫性や正確性による顧客体験の向上は、コンバージョンにも影響しますので、売上アップに直結する重要な要素だと考えています。
――情報に一貫性を持たせるというのは、ブランディングにもつながりそうです。
小菅:そうですね。商品情報というのはさまざまな部署が扱いますので、そこを管理する部分が整っていないと、同じようなコンテンツを別々でつくっていたり、同じ商品に対して全然違う文脈でコンテンツがつくられていたりすることも珍しくありません。
PIMは、全社で横断的にご活用いただける仕組みですので、組織の横ぐしを通して、情報を共有することができます。なので、PIMが管理している情報を使って、それぞれの部署がコンテンツをつくるようにすれば、全部署で一貫したコンテンツ制作、発信が可能になります。
PIMとデジタルアセット管理(DAM)を統合したContentservクラウドソリューション
また、ECから少し話が離れますが、たとえば複数の事業を展開しているメーカーさまだと、別事業部で販売している商品が全くわからず、別事業部の商品の販売チャンスがあっても、それを逃してしまうといったケースも多くみられます。
そのため、商品に関するセールス方法や販売ノウハウといった情報までも管理し、営業のナレッジ共有のために、PIMをご活用いただいている事業者さまもいらっしゃいます。
まず商品情報管理を「効率化できること」を知ってもらいたい
――日本においてPIMの認知度は、どの程度あるのでしょうか。
小菅:先ほど述べたように、EC業界に限らず、商品情報管理のニーズは高まっており、世界的にみても、アジア地域、特に日本からの問い合わせは増えています。
ただ、まだまだ事業者の規模感によって、PIMの認知度に差があるというのが現状です。そもそも大規模事業者さまは、その規模の大きさから商品数も多く、販売チャネルも多岐にわたるので、効率化をしないと業務自体が滞ってしまいます。そのため、PIMの重要性をいち早くご理解いただいて、導入されるといったケースも多いです。
逆に、そういった商品情報管理が人の手だけで、なんとか回っているという事業者さまに関しては、まだまだ認知度が低いと感じています。
――現状、人力で管理できていたとしても、PIMは必要になるのでしょうか。
小菅:はい。人力で商品情報を管理できているとしても、昨今は商品に関する情報やチャネルはどんどん拡大していく傾向にありますし、人手不足社会にもなっているので、商品情報の管理業務がボトルネックになる(もしくはすでになっている)可能性は高いです。
「商品情報の管理が大変だから」という理由で、出店するモールが限られてしまったり、出品数を増やしたくても増やせなかったり、という状態にはなっていないでしょうか?
商品情報の管理がボトルネックになると、顧客に伝えるべき商品情報が不足し、返品やクレームになるなど、大きな機会損失にもつながります。逆にいうと、そのボトルネックが解消されれば、商品数を増やして顧客との接点をつくるなど、新しい機会創出につながります。
ただ、今まで人力で管理できている事業者さまは、それが当たり前になっており、そもそも商品情報の管理をシステムで効率化できるといった感覚を持たれていないケースも多くあります。なので、まずは「効率化できる」という事実から知っていただきたいですね。
――逆にPIMの効果が感じられにくい事業者さまはいらっしゃるのでしょうか?
小菅:商品数が極端に限られている場合や、そもそも商品情報が存在しないオーダーメイド商品を展開されている事業者さまは、扱う情報が限られていることから、PIMの効果は感じられにくいと思います。
仕入先の情報登録からEC反映までが最短15分に
――PIMを活用している事業者さまの事例を教えてください。
小菅:ECの事例ですと、大手ドラッグストアチェーンさまがPIMによる業務の半自動化を実現されています。
この事業者さまは、もともとECで商品を販売する際に、それぞれの仕入先さまから商品情報を受け取って、それを自社ECや各モールへ手動で登録を行っていました。
しかし、非常に時間も手間もかかる作業だったため、PIMの導入を決めていただきました。
仕入先さまからセルフサービス的に商品情報を登録いただくことで、ドラッグストアさまのほうでは最終チェックのみで、自動的に自社EC、各モールへ登録されるといった仕組みを構築。結果的に、仕入先さまからデータが登録されてから、最短15分で各ECへ登録が可能になり、効率化・省人化につながりました。
――最後に、読者へメッセージがあればお願いします。
小菅:EC市場は、日々成長はしているものの、競争も非常に厳しくなっています。そういった中では、充実した商品の情報の提供というのは、顧客にとって当たり前の条件になってきます。
その上で、顧客の期待に沿った情報をどのように効率的に提供していけるかというのは、重要な差別化ポイントになってくると思います。もちろん迅速に市場に情報を提供するということは大事ですが、さらに市場の変化に合わせて情報を提供していく柔軟性も必要な時代です。
そういった柔軟な姿勢が、顧客満足度を高めるところにもつながっていくと思いますので、PIMをうまくご活用いただければと思います。また、弊社では生成AIなどとの連携にも積極的に取り組んでいます。
たとえば、商品の分類を自動化したり、商品の紹介文書のドラフトを生成AIが作成したり、AIに任せられる領域というのも増えてきていますので、より事業の効率を高めていきたいという事業者さまは、ぜひお役立てください。
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