右肩上がりで拡大を続けるEC市場。それに伴って、企業間でECのプロ人材の争奪戦が勃発している。通販企業が自らプロ人材を見つけようとすると、手間がかかる上、採用後に「期待していたスキルがなかった」と後悔することも。一方、プロ人材が自力で有力クライアントを探すこともハードルが高く、困難な状況にある。プロ人材の仕事探しをサポートするWUUZYのタレントマネジメントグループで、グループリーダーを務める大戸誠氏に、EC人材市場の最新事情について話を聞いた。
1案件で90~120万円の収入
――まず、貴社の取り組みについてお聞かせください。
大戸誠氏(以下、大戸):当社は2019年8月に創業し、6期目を迎えました。「全ての人に強みを生かせる機会を」をミッションに掲げ、「ECのプロ」というサービスを展開しています。これは国内最大のECプロ人材提供サービスです。
登録済みのECのプロ人材は現在4,000人を突破しています。登録済みの4,000人超の中から、当社が面談を行ってスキルなどを確認した上で、求人企業が抱えている課題にマッチしたプロ人材を紹介します。
企業からの案件数が多い点も特長です。企業からの年間相談件数は2500件を突破しました。
ECマーケターのプロ人材はとても貴重な存在ですが、年収は決して高いわけではありません。これに対し、「ECのプロ」では、フルリモートの形で1件あたり90~120万円の収入を得られる案件を紹介しています。継続して案件を手がけることで、独立して生計を立てている方もいます。
――EC人材市場の現状は?
大戸:2019年時点のEC店舗数は約270万件で、市場規模は18兆円ぐらいとされています。現在、店舗数は400万件強、市場規模は22兆円を超えています。このように店舗数は1.5倍に増えていますが、市場規模はそこまで拡大していません。
次にEC人材について見ると、ある人材紹介サービス事業者のデータでは、100万人の登録者のうちEC経験者は0.7%で、7000人程度にすぎません。これはCTOやCFOの経験者よりも少ない割合です。このことからも、ECマーケターの希少性が浮かび上がります。
このように店舗数が増加する中、ECマーケターの需要も拡大していますが、ECマーケターの供給量が圧倒的に少ないため、引き続き、採用の激化が進むと予想されています。
最近の傾向として、EC人材市場が細分化していることが挙げられます。人材を求める企業には潤沢な予算があるわけでなく、担当者も1人しかいないケースも少なくありません。このため、マルチに対応できるプロ人材について相談されることがあります。しかし、ECのプロ人材を分解すると、事業戦略や販促戦略が得意な人もいれば、開拓が得意な方、広告運用に特化した方もいます。さらに細かく分けると、商品登録やカスタマーサービス対応を得意とする方なども。
スキルを横軸に広げると自社EC、楽天、Amazonなどの各チャネルで必要なスキルも違います。
従来、ECのプロ人材と一括りにしてきたものが、今では細分化される状況となっています。
一方、企業ではそうしたスキルの細分化について理解が進んでないケースもあるため、、EC人材を募集する際に、面接で「何ができるのか」「何が得意なのか」といった見極めが困難です。面接・選別にかかるコストも上昇し、ミスマッチも生じやすくなっています。
株式会社 WUUZYタレントマネジメントグループ グループリーダー大戸誠氏
細分化された案件に対応可能
――企業が直面している課題に対し、「ECのプロ」はどのように応えていますか?
大戸:ECのプロ人材を求める企業では、チャネルの売上強化や集客戦略の実行などで、実際に手を動かしてもらってサポートしてほしいというニーズがあります。「ECのプロ」の場合、紹介したプロ人材が企業のチームの1員として課題解決にあたることになり、そうした企業の声に応えています。
また、「ECのプロ」は登録者数が4,000人を突破する規模となり、様々なスキルを持ったプロ人材がたくさんそろっています。このため、ニーズが細分化された案件にも対応が可能です。
地方創生の案件も多く、地方の企業が求めるプロ人材には、「自分たちの商品を理解してくれる方」「一緒に取り組んでもらえる方」という共通点があります。「ECのプロ」に登録済みのプロ人材の半数以上を地方で活躍中の方が占め、地元への貢献を意識した方がたくさんいるため、そうした要望にも応えることが可能です。
――競合他社のサービスと比べて、どのような点が違いますか?
大戸:多くの企業がインハウス化を目指しています。例えばアマゾン、楽天、自社ECのどれについても、自社の担当者がきちんと回せるようにしておきたいというニーズが強まっています。
運用代行会社やコンサルティング会社に人材確保を依頼すると、運用代行会社では多くの業務を外注し、コンサルティング会社でも大部分の業務を巻き取ってしまい、依頼した企業にとってはノウハウが蓄積されません。
これに対し、「ECのプロ」の場合、プロ人材が企業のチームに入ります。例えば、若手社員をプロ人材に下に付けて、二人三脚で学ばせることができます。半年から1年ほどで、例えば楽天の広告やLP制作の仕方が理解できるようになります。
そうすると、次にアマゾンのプロ人材を入れて、若手社員にアマゾンに関するスキルを習得させるという手順を踏まえながら、インハウス化に向かっていくことが可能となります。ノウハウが社内に蓄積できる点が、「ECのプロ」の強みです。
もちろんインハウス化ではなく、実力のある方には社内の一員として長く支援して欲しいというニーズもあります。
プロからは実力次第で仕事が続いていくのでやりがいがあるというお声もいただいてます。
また、競合他社のサービスの場合、営業担当者の事前説明と、実際に入る人材に齟齬があるという話を耳にします。しかし、「ECのプロ」では、契約前にどのような人材なのかが詳細に把握できることから、期待値のギャップが大幅に低減されます。。
大手クライアントの仕事が見つかる
――「ECのプロ」に登録したプロ人材のメリットについてお聞かせください。
大戸:登録しているプロ人材の7割程度が、自分自身で法人を持っている方やフリーランスの方です。残り3割程度が複業の形です。「ECのプロ」を活用するメリットは大きく分けて4点あります。
1点目に、大手のクライアントとつながりを持てることが挙げられます。弊社から案件相談が来ること自体はもちろんメリットですが、個人で活動すると営業に時間が取られ、大手と仕事をする機会もなかなか得られません。プロ人材にとって、大手と大規模な仕事をする機会が見つけやすくなることは大きなメリットです。
2点目はキャリアップ。1つ事例を紹介しますと、もともと消防士だった方ですが、「ECのプロ」で仕事を受け続けて転身し、現在は独立してフリーランスとして活躍しています。
3点目として、プロ人材の交流会を開催し、プロ同士が情報交換できる場を提供していることがあります。専門外の分野のプロがどのような仕事をしているのかを知る機会となり、例えば、アマゾンのプロと楽天のプロが交流することもできます。
4点目は、契約周りや費用回収といった業務を当社が代行すること。これに加えて、企業のサポートに入った後にトラブルが発生したとしても、その対応も当社が行います。当社のカスタマーサクセスグループが一緒に入りますので、プロ人材の方が1人ですべてをカバーするのではなく、当社が介在することで心理的なハードルを低くしています。
登録者に毎週20件ほどの案件を提供
――登録することで、希望する仕事を継続的に見つけやすくなるわけですね。
大戸:「ECのプロ」では、プロ人材の方々にマッチした案件を毎週20案件ほどお届けしています。それぞれのプロ人材にカスタマイズした案件です。例えば、楽天のプロとして登録しているのに、アマゾンの案件がたくさん届くということはなく、楽天の案件が20件ほど届くという動きになります。当社で十分に精査しているので、この点についても期待してほしいです!
各案件の情報は、当社の営業担当者が求人企業から詳細にヒアリングしたものです。このため、プロ人材の方が応募後に、「これって自分にマッチしてなかった」という問題はほとんど起こりません。
さらに、先ほどお話したように、受注後、プロ人材の方にすべてを任せるのではなく、当社のカスタマーサクセスグループが伴走する形を取っています。これにより、企業とのコミュニケーションを円滑化し、仕事が継続しやすくなるようにサポートしています。
――機械的なマッチングサービスとは一線を画している。
大戸:そのとおりです。このほか、繰り返しになりますが、企業からの案件数が桁違いに多いことにも期待してほしいと思います。案件数だけでなく、ご相談内容の細分化率も競合サービスには見られないレベルにあります。
競合他社のサービスの場合、例えば、楽天の売上アップが可能なマーケター募集といった粒度しかなく、プロ人材のスキルが商材に合っているのか、バリューを出せる年商規模なのかなど、話を聞かないと判断できない状況にあります。これに対して「ECのプロ」では、楽天のどの商材で、どのくらいの目標で、どのくらいの転換率で…というように、すべてをヒアリングした上で情報を提供しています。
登録したプロ人材の方は情報を見れば、自分にマッチしているかどうかがわかります。エントリーしてから判断するという無駄がなく、スムーズに仕事を見つけることができます。
――今後のEC人材市場の動向予想と、貴社のサービス展開についてお聞かせください。
大戸:ECへの新規参入企業が増え続ける中、通販各社では社内に適切なECのプロ人材がいないというのが現状です。その結果、プロ人材の採用もますます激化すると考えられます。優秀なプロ人材の奪い合いは既に始まっています。人材を求める企業はしっかりとアンテナを張らないと、かなり苦労するでしょう。
当社も「ECのプロ」に登録されたプロ人材のスキルについて、より一層深く理解した上で紹介するという動きを強めていかなければならないと思っています。同時に、従来と比べてもっと多様なプロに案件を紹介できるようにしていきたいです。
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