ネットで販売を始める際に、モール(楽天市場やAmazonなど)へ出店するか、自社ECを構築するか迷われる方も多いのではないでしょうか?
両者にメリット・デメリットがあり、どちらを選択するかは事業の戦略次第です。
本記事では、特に大きな違いが見られる「集客」と「接客」の視点から両者の使い分け戦略についてご紹介いたします。
「集客」における違い
モールの集客力
モールは多くの事業者が集まる巨大なプラットフォームです。実店舗でいう人が集まる大きな市場や、ショッピングモールに出店するようなものなので、集客力は圧倒的。また、モール運営側で広告やキャンペーンを積極的に行ってくれるため、自社ECと比較して、より多くの方に商品を見つけてもらえるチャンスが多いです。
特に、楽天市場やAmazonといった大手モールでは、数千万人規模の顧客ベースがあり、信頼性も高いため、ショップ自体の知名度が低くても、モールのブランド力で、新規顧客を獲得しやすいという特長も。
ただし、長期目線では集客に苦戦することもしばしば。モール内で類似商品を扱っていることが多いため、商品での差別化が難しく、結果的に値下げ競争に巻き込まれてしまうケースも。
また、自社商品の露出を増やすためには、モール内でのSEOや広告配信、モールのキャンペーンに適切に参加するといった取り組みが必要になります。
例えば、楽天市場では「楽天スーパーセール」や「お買い物マラソン」といったキャンペーンに参加するためには、出店事業者が商品の割引やポイント還元といったプロモーション施策を展開する必要があります。これらの施策は集客には非常に効果的ではありますが、長期的には利益を圧迫することも多いので薄利多売にならないよう注意が必要です。
自社ECの集客戦略
一方、自社ECはモールと異なり、ゼロからの集客が必要で、実店舗でいうと人通りの少ない道にお店を出すようなもの。立ち上げ直後は認知度が低く、顧客を集めるためには独自で集客に取り組む必要があります。SEOやSNSを活用した情報発信、Web広告やインフルエンサーを活用した露出強化など、様々な施策を駆使してトラフィックを集める必要があります。
自社ECの集客には時間とコストを要するケースが多いものの、その過程でブランドの認知や信頼性を高めることができます。また、Googleのオーガニック検索や、SNSからの自然流入が安定すると、広告費用を抑えた長期的な集客基盤を築ける可能性があることも強みと言えるでしょう。
さらに、モールでの販売と比較して、出店料や販売手数料を安価に抑えられるため、そのコストを商品開発費用やプロモーション費用に充てるといったコントロールができるのも大きな魅力です。
接客目線での比較
モールでの接客
モールは、統一されたプラットフォームの中で、多くの事業者が同じデザイン、同じシステムを利用するため、接客におけるカスタマイズ性は限られています。そのため、ブランドの世界観を十分に伝えられず、他店舗との差別化を図れないケースが多いです。
みなさんもAmazonで商品を購入した際、「〇〇店で購入した」ではなく、「Amazonで購入した」という印象が強いのではないでしょうか?結果的に、商品は購入されるが、ショップやブランド自体の認知は向上していかないこともあります。
また、モールでは商品を購入してくれた顧客情報がモール側で管理されるため、出店事業者が顧客情報を自由に活用することが難しいのが一般的です。
そのため、売上拡大に欠かせない既存顧客へのマーケティングや、販促活動が制限される点もデメリットと言えます。
自社ECの接客
逆に、接客の自由度が非常に高いのが自社ECです。自社の世界観を表現したデザインで自由にサイトを構築できるため、顧客に独自のブランド体験を提供することができます。
また、見た目のデザインだけでなく、チャットボットを導入して24時間対応のカスタマーサポートを提供したり、かご落ちしそうなタイミングでクーポンを表示するなどターゲットに合わせたカスタマイズで競合他社との差別化も図ることができます。
さらに、顧客データを自由に活用できるのも大きな利点です。購入履歴はもちろん、商品ページの閲覧履歴や、メルマガへの反応率など、さまざまな顧客データを詳細に分析し、マーケティング施策を立てることができます。これにより、パーソナライズされた接客や効果的なリテンション施策が実現可能です。
例えば、誕生日に特別なクーポンを提供したり、購入履歴に基づいたレコメンドメールを送ることで、顧客とのエンゲージメントを高めることができます。また、実店舗がある場合は、オンラインとオフラインの接客をシームレスに連携させ、オムニチャネルでの売上向上にも繋げられます。
自社ECとモールの共存戦略
モールと自社ECのどちらを選ぶかは、事業者の戦略次第です。しかし近年では「両者の共存」を選択する企業が増えています。たとえば、初期段階ではモールを活用して集客と販売のベースを築き、その後、ブランド価値を高めるために自社ECを展開するケースが典型的です。
モールの圧倒的な集客力を利用して新規顧客を獲得した後、興味を持った顧客を自社ECに誘導する流れは非常に効果的です。
たとえば、モールでの売上や商品の知名度を高め、販売実績が蓄積されたタイミングで、自社ECに累計販売個数や顧客レビューを掲載して信用力を高めたり、自社EC限定の商品を販売する方法などがあります。こうした活用法は、利益率の向上と収益の安定化につながります。
また、「モールへの出店から始め、徐々に自社ECでの販売比率を伸ばし、利益率の向上を図った結果、安定した収益を得られるようになった」という成功事例も多く見られます。
さらに、自社ECでの販売が確立したあとに、モールを活用できるケースもないわけではありません。たとえば、モールでは価格競争に強い商品を展開し、自社ECでは独自性の高い高付加価値商品を販売することで、それぞれのチャネルの強みを最大限に活かすことができます。
もちろん、モールと自社ECの運営を両立させるにはリソースの確保が必要ですが、共存戦略をとることが売上最大化の近道となるケースが多いのではないでしょうか。
まとめ
モールと自社ECの違いを「集客」と「接客」の視点から考えると、それぞれに異なる強みがあることがわかります。モールは短期的な集客力が優れていますが、デザインやカスタマイズの自由度、顧客情報を活かした接客への制約が多いのが特徴です。一方、自社ECは集客に時間とコストがかかるものの、長期的なブランディングや顧客との関係構築において大きなメリットがあります。
これからECを展開する事業者のみなさんにとって、どちらを選ぶか、あるいは両者をどのように共存させるかを慎重に検討することが重要です。自社のリソースや事業のフェーズによっても戦略は異なってくるため、両者の特性を理解しつつ、最適なバランスを見つけることで、持続的な成長を実現させましょう。
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【筆者紹介】
太田優(おおたゆう)
GMOペパボ株式会社 EC事業部 マネージャー
北海道出身。岩手大学農学部を卒業後、世界一周の旅を通じて各国の文化を学ぶ。帰国後は個人でECサイトを立ち上げたのち事業売却。地方企業のマーケティングにも携わり、ECサイトの立ち上げから月商5,000万円規模への事業成長を支援した。その後、NPO法人での活動を経て株式会社わかさ生活に入社し、マーケティングの戦略立案から実行までを幅広く経験。現在はECサイト構築サービス「カラーミーショップ」のマネージャーおよびマーケティング責任者として活動中。
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