楽天(株)は、「楽天市場」で商品購入に送料が無料となる送料ライン「3980円(税込)」の適用開始を、2020年の3月18日に設定した。19日に配信した出店者に向けたメールで明らかになった。また、商品の発送元が沖縄・離島などの場合は、出店者が送料無料ラインを独自に設定できるように、ガイドラインを同日に変更した。
出店者に通知されたお知らせの一部(読者提供のキャプチャ画像)
「送料無料ライン」の統一は避けて通れない課題
送料無料ラインの統一に関しては、一部の出店店舗などから否定的な意見が寄せられるなど、さまざまな声があったことから、予定通りに20年3月中旬に実施されるのかに注目が集まっていた。今回の予定日の発表により、計画通りに実施される方針が明確になった。
楽天市場の送料無料ラインの統一は、楽天会員から、店舗ごとに送料無料ラインがバラバラで「送料がわかりにくい」という声が上がっていたことから、対応を開始したもの。送料の統一性がないことで購入をやめる人が増えていたこともあり、楽天では避けては通れない課題として位置づけ、さまざまな意見が出ることを承知の上で、送料無料ラインの統一に踏み切った。
出店者のさまざまな要望を反映
ただ、楽天はこうした状況から出店者との対話を重視し、1月の新春カンファレンスで送料無料ラインの統一を発表して以降、出店者からのさまざまな要望を受け入れてきた。8月にRakuten Optimismで、送料無料ラインを3980円(税込)にすると発表した際には、出店者の声を反映し、家具などの大型商品、冷凍冷蔵の商品を対象外とした。
その後、さまざまな場所で出店者への説明を続けるなか、10月30日に送料のガイドラインを改定。地域によって送料が大きく異なることを考慮し、沖縄・離島などが配送先になった場合は、購入料金が9800円以上で送料無料にするように取り決めた。
また、酒類など、他の商品と同梱が困難な商品についても、対応を要望する声が多かったことから、11月28日に「酒類」を送料無料ラインの対象外にする内容をガイドラインに追加した。そして、12月19日には、商品の発送元が沖縄・離島などの場合は、出店者が送料無料ラインを独自に設定できるように、ガイドラインを再び改訂した。
このほか楽天では、昨今の物流費の高騰に対応するため、出店店舗向けの総合物流サービス「楽天スーパーロジスティクス」や、日本郵便との連携で楽天出店店舗向けの特別運賃プログラムの提供、集荷・持込サービスなどの、物流面でのサポートを実施してきた。
送料無料ラインを3980円に決定する根拠となった実証実験では、送料無料ラインを3980円に統一することで、購買金額が約15%増、店舗あたりの新規獲得客は約14%増となった。実際に送料無料ラインを3980円に統一した店舗では、「売上が上がった」という声も寄せられているという。
一部の報道では、送料無料ラインの統一が、独占禁止法が禁じる優越的地位の乱用に該当するのでは? という指摘も出ていたが、この点について楽天は「関係当局とは日頃からやりとりをさせていただいております。公正取引委員会から調査協力依頼などがあれば、真摯に協力してまいりたいと考えております」とコメントした。
今後について楽天広報は「今後も引き続き本施策について理解・協力頂けるよう、出店店舗との対話を重ね、幅広い店舗の個別の意見に真摯に耳を傾け、店舗とユーザーの双方にとってより良い施策となるようにしたい」と話している。
EC・通販業界は、市場の変化のスピードが早く、消費者もより賢くなっている。EC関係者によれば、スマートフォンの普及により、現在は商品購入までの時間短縮が、売上に直結してくるという。スマホで商品を購入する際、送料無料ラインが統一されていれば、それぞれの商品ごとの送料をチェックする必要がなくなり、商品購入の時間が大幅に短縮される。ユーザーのニーズに応えられないプラットフォームに待っているのは、「衰退」の2文字。約3カ月後に迫っている「送料無料ライン」の統一は、「楽天市場」で史上最大のチャレンジと言われている。成長か衰退か、楽天市場の出店店舗が足並みを揃えることができるかどうかに、注目が集まる。
(山本 剛資)
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https://www.tsuhannews.jp/shopblogs/detail/63120
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