楽天(株)が13日発表した2020年12月期第1四半期(1~3月)の連結決算は、売上高にあたる売上収益が前年同期比18.2%増の3314億4300万円、240億5400万円の営業損失(前年同期は1136億6200万円の営業利益)、353億1900万円の四半期損失となった。
国内EC流通総額は9.8%増の9721億円
楽天市場を中心とした国内ECの流通総額は同9.8%増の9271億円と好調だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、楽天トラベルのキャンセルが1月下旬から相次いだことや、物流・モバイル事業に大型の投資をしていることから、353億円の四半期損失を計上。また、モバイル・物流・投資事業の損益を除くと、営業利益は同50.9%増の243億円となる。
新型コロナの影響については、緊急事態宣言後に「巣ごもり消費」が活性化し、4月のEC流通総額が同57.5%増と急伸。楽天トラベル・スポーツ事業(プロ野球:楽天イーグルス・サッカーJ1:ヴィッセル神戸)・GORA(ゴルフ)・楽天チケットなどのマイナス分を相殺できる見込みという。
今後について同社の三木谷浩史会長兼社長は、「プラスとマイナスが綱引きをしている状況。今後については、緊急事態宣言がいつ解除されるのかによって変わってくる。中長期的には、在宅勤務を含めた働き方の多様化によって、生産性の向上、事務所経費を含めた経費の削減についてかなり大きな効果が出るのではと考えている」と話した。
「送料込みライン」の全店舗統一期限は延長の見込み
楽天市場で3月18日からスタートした3980円以上の購入で送料無料となる「送料込みライン」は、4月末の時点で全店舗の約8割が参加した。
ユーザーへの告知強化やポイントアップキャンペーンなどが奏功し、参加店舗の4月の流通総額は、前年同期比で不参加店舗を28.7ポイント上回る成果を上げた。ユーザーからは「いつも送料を気にしていたので、気兼ねなく利用できる」など、ポジティブな声が寄せられているという。
5月に今後の方針が示される予定だった送料無料ラインの統一について、三木谷氏は「今後はさまざまな状況をみながら。新規参入の店舗については元々3980円になっている。今の感じでいうと、ほぼすべての店舗さんが(送料無料ライン)に合わせた方が伸びるのではと。すべての店舗さんが自発的に3980円の送料無料ラインを導入していただくことが理想。根強く説得をしていく。その後については、店舗さんとの相談を含め、もう少し様子を見てから決定したい」と語り、当面は送料無料の全店舗統一はなく、店舗が選択できる現状を維持する見通しを示した。
モバイルの申込は96%がオンラインから
モバイル事業については、新型コロナの影響で実店舗は臨時休業となったが、全体の申込の96.5%がオンライン申込で、顧客数は堅調に伸びているという。通信基地局の建設は当初計画の前倒しで進んでおり、楽天回線エリアの人口カバー率は21年3月に70%に到達する見通しとなった。
モバイル事業開始から1カ月の所感について、三木谷氏は「1カ月が経過してわかったことは、安定性と拡張性、柔軟性については他社さんには真似ができないのではないもので、この事業に関する感触が非常に高まってきている。(申込は)年末までに(1年間通信無料対象者の)300万人を目標にしており、ほぼ想定通り」とした。
楽天グループとの相乗効果については、「新規加入者には楽天のサービスを利用していない人が多い。彼らが楽天グループのエコシステムを使ってもらうとさらに大きな価値が出る」(三木谷氏)と話した。
また、モバイル事業の海外展開については「仮想化モバイルネットワークは日本に留めておくのではなく、いかにプラットフォーム化して世界に展開していくかどうか。AmazonのAWSと似たような意味合いを持っているのではないか」(三木谷氏)と語り、今後はモバイルネットワークを海外に展開し、楽天エコシステムとは別の事業の柱にする見通しを示した。
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