楽天(株)は28日、楽天の事業戦略を楽天市場の店舗に発表する「楽天新春カンファレンス2021」をオンラインで開催。三木谷浩史会長兼社長が2020年の楽天市場の流通総額が3兆円を突破したことを発表し、30年までに10兆を目指す構想を明らかにした。
初のオンライン開催となった今回の新春カンファレンスには、楽天店舗や関係者ら3万人以上が参加。三木谷氏はコロナ禍での社会改革や今後のEC業界、楽天モバイルなどについて、今後展望を語った。
三木谷氏「現在は100年に1度の社会改革期」
三木谷氏は講演の冒頭「こんなにコロナが長引くと予測している人は誰もいなかったと思う。ワクチンがさまざまな国で接種されるようになった。これからはwithコロナなど、疫病を想定しながら世界は進んでいく、我々はそなえないといけない。2020年、21年の世界的なパンデミックは、世界を大きく変えた。
100年に1度の社会変革が進もうとしている。もしインターネットやビデオ会議のシステムなどがなかったら、この大パンデミックよる被害はもっと大きかった。その意味ではインターネットがあってよかった。デジタル化は10倍くらいのスピードで加速した。社会改革が進み、あらゆる産業、サービスがインターネットにつながってくるだろう」と話し、今後の社会情勢やEC業界について、(1)高付加価値サービスの転換、(2)デジタル化の一層の加速、(3)サステナビリティ社会へ、の3つ観点から説明した。
新たなチャレンジを続ける楽天が変革期を突き抜ける存在に?
三木谷氏は、150年前の明治維新、75年前の戦後改革に続き、現在はデジタル改革という100年に1度の社会変革が起きているとし、この変革期の成功者として、同氏の友人である米・テスラ社のイーロン・マスク氏を例に挙げ、変革期の現在は失敗経験を称賛する文化を認めざるを得ない状況で、新たなチャレンジが時代を突き抜けるキーになるとした。
楽天グループとしては、「これまで、誰もネットでは物を買わないという時代にインターネットショッピングモールを作り、事業への集中が叫ばれるなか、トラベルや銀行、クレジットカード事業、銀行などのエコシステムを作り、誰もやっていない英語の社内公用語化、そしてモバイルにもチャレンジしている。これがすべてつながっていく」という新たなチャレンジを続けている点を強調した。
EC業界での今後の変化については、オンラインとオフラインの境目がなくなること、中国でのライブコマース市場の拡大などを例にコミュニケーションがテキストからイメージ&ボイスが主流になっていくことなどを挙げた。その一例として、あらゆることが1つのアプリでできるのがスーパーコミュニケーションアプリ「Rakuten Link」について解説した。
楽天市場のリピート購入率が75%に
デジタル化が一層加速することによって、消費のデジタル化、モバイルがあらゆる日常へ浸透、ゼロキャッシュ時代、の3つが起きるという。
実際、楽天市場の12月流通総額は50%増に上ったほか、4~6月に楽天市場で商品を購入したユーザーの75%が、7~9月にもリピート購入しており、楽天市場では購入額・定着率が順調に拡大し、成長が加速している。20年の楽天市場流通総額は3兆円を突破した。また、コロナ禍の旅行業界は流通総額が4~5月の落ち込みがピークとなり、その後、徐々に回復してきているが、楽天トラベルは業界全体よりも回復が早く、楽天カードはコロナ禍でもプラス成長を維持し、成長率もコロナ禍以前の水準に回復してきている。
その要因として三木谷氏は、UI&UXや安心・安全への取り組みなどQUALITY向上の取り組みや、多様性と統一性を両立する仕組みづくりなどを挙げた。
自社物流網が物流費高騰の抑止力に?
宅配クライシスによる物流費が高騰を契機に、「いざとなったら自分たちで配送する」という気概を持って、物流関連に約2000億円を投資。三木谷氏はこの自社物流機能の強化は、「(物流費高騰の)相当な抑止力につながっている」とした。
3900円以上の購入で送料が無料となる「送料込みライン」導入については、導入店舗が12月85%に達し、導入店舗の流通総額は全体の89.4%に達している。導入店舗は未導入店舗と比較して、前年対比で約25ポイントの成長の差が出ているという。
楽天モバイルは、全国人口カバー率96%の目標を約5年前倒し予定で、回線エリアを順調に拡大。楽天モバイルと楽天エコシステムとのシナジー効果も高く、楽天モバイル加入後の楽天市場ユーザー1人あたりの月額流通総額は44%増となり、楽天モバイル契約者の55.1%が20年12月に「楽天市場」で商品を購入した。三木谷氏は「(楽天モバイルは)エコシステムのなかで重要な役割を担っている」とした。
「オンライン勉強会」参加ショップの成長率が52.6ポイント増
記者向けの説明では、楽天執行役員コマースカンパニーの野原彰人氏が20年の取り組みについて説明した。同社では20年に「オンライン勉強会」を62回実施し、合計1846店舗が参加。勉強会は店舗の月商100万円突破が目的で、初めて月商100万円を突破した店舗は前年同期比で20.7ポイント増となった。また、勉強会不参加店舗と12月の売上を比較すると、参加店舗の成長率が52.6ポイントプラスとなった。店舗とECコンサルタントの商談もオンライン化され、商談数は52.8%増に上った。
楽天で成功しているリーダー店舗がチャレンジ店舗を育成する「NATIONS」もオンラインで開催され、47都道府県をカバーしたことで参加店舗は4200店舗に伸び、目標達成店舗の売上は前年同期比2倍以上を記録した。8月に開催された「楽天オンラインEXPO」は参加店舗数が9721店・参加人数が1.3万人に上り、楽天新春カンファレンスもオンライン開催によって3万人が参加した。
「コマース交渉部」「楽天市場サービス向上委員会」を新設
2021年2月に施行される「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」に関しては、コマースカンパニーの下に弁護士資格を持つ実務担当者やコンプライアンス責任者らで構成される新たな組織「コマース交渉部」を設立し、行政と円滑なコミュニケーションを図る。
また、楽天市場の出店者で構成される団体「楽天市場出店者 友の会」との意見交換の場となる「楽天市場サービス向上委員会」を新設。「楽天市場」のサービス改善を図る。同委員会は物流、地域・コミュニティー、楽天市場のシステム、サステナブル・SDGsなどを議題に分科会を設け、3月から始動する予定だ。
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