(株)矢野経済研究所が15日発表した『国内のウォッチ(腕時計)市場調査』の結果によると、コロナ禍の影響は大きく、2020年はコロナ禍前の19年比で約3割減。21年も同じく19年比で2割減と大幅減を予測。市場を支えてきたインバウンド需要の消失は大きいが、高級ウォッチをオンラインで購入するというトレンドも生まれているという。
実物資産として高価格帯ウォッチの需要は向上
調査は21年11月~22年1月。時計関連企業(メーカー・卸売業・小売業)、関連団体などから聴取した。20年までの市場規模データは、(一社)日本時計協会の資料から引用した。
同協会のデータによると、20年の国内ウォッチ市場規模は小売金額ベースで、前年比70.2%の6227億円。コロナ禍の影響による店頭販売機会の減少や、インバウンド需要の消失などで、前年から約3割減少した。
しかし、コロナ禍でも実物資産として高価格帯ウォッチの需要は高まっており、高級ウォッチをオンラインで購入するというトレンドが生まれた。これまで浸透してこなかったオンライン販売が、コロナ禍をきっかけに伸長する結果となった。ただし、一部の特定ブランドに人気が集中するなど二極化が進んでおり、優勝劣敗の傾向が強まっている状況もある。
海外旅行や会食の制限で富裕層の消費がブランド品購入に
20年のウォッチブランドの業績を支えたのは富裕層の存在。近年、株高の状況に加え、海外旅行や会食などの制限で、富裕層の消費がブランド品購入に向いたことが大きな要因だ。そのため、富裕層を顧客に持つブランドや、富裕層が好む商品を展開するようなブランドには追い風となった。
ブランドサイドも改めて顧客との関係を見直し、いままで以上に手厚いフォローを行うブランドが増加。百貨店の外商顧客へのアプローチも強化しており、外商催事への積極的な参加に加え、ブランド独自のおもてなしプランを提供するなど、富裕層の取り込み戦略は活発化している。一方、百貨店サイドも従来の外商顧客より若い30代~40代といったニューリッチ層の取り込みを始めており、こうした世代の好むブランドとの関係強化を図っている。
ただし、たとえ富裕層でなくても、そのブランドのファンといえる顧客の存在に助けられたブランドも多く、その消費力が失った売上をカバーするには至らないまでも、大きな落ち込みには至らないということが証明された。今回のコロナ禍で、改めて顧客の存在を認識し、重要な存在としてコミュニケーションを図っていこうとする動きが広がっている。
オンライン接客やライブコマースなどで顧客接点が多様化へ
21年の国内ウォッチ市場(小売金額ベース)は前年比114.0%の7100億円と予測した。コロナ禍前の19年比では約2割減と引き続き厳しい状況にあるが、コロナ禍を前提とした施策の遂行でプラスに推移することが見込まれる。
今後はさらにDX対応が進展し、オンライン上での接客やイベント、ファンミーティング、ライブコマースなどで顧客接点の多様化が進む見通し。こうしたな取り組みにより、会員組織などファンコミュニティなどでの日本人富裕層への手厚いサービスや、インフルエンサーの起用による若い世代へのアプローチがより強化されると考えられる。
また、商品はウォッチとしての王道を追求した保守化の傾向が強まっているため、原点回帰をコンセプトに、それぞれのブランドの特徴を打ち出したシンプルなデザインの商品ラインアップが増えている。一方で、テクノロジーの競争は激化しており、新素材や新機構の採用がより活発化していくことを予測している。
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