2025.01.23 行政情報
機能性表示食品制度の改正“第2弾”…告示(案)から浮かび上がるポイントとは?(後)
紅麹問題を発端とする機能性表示食品制度の改正“第2弾”が、4月1日に施行される。消費者庁が1月17日に公表した告示(案)を通して、通販業界に大きく影響しそうな改正ポイントを紹介する。後編は、最終製品を用いたヒト試験や新規成分の届出などについて考える。
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機能性表示食品制度の改正“第2弾”…告示(案)から浮かび上がるポイントとは?(前)
改正・機能性表示食品制度の告示(案)を公表、4月1日施行…順守事項など法令化
科学的根拠の質向上、法令化で担保
機能性表示食品の届出の約5%は、最終製品を用いたヒト試験の結果を科学的根拠としている。従来から、届出ガイドライン(現・マニュアル)には、ヒト試験を実施する際の留意点が示されていたが、ガイドラインの大部分が4月1日の施行に向けて法令化(告示)される。
ヒト試験に重大な問題があれば機能性の根拠として不十分と判断されるが、これまで消費者庁は届出者とやり取りを行いながら、時間をかけて届出の撤回を促してきた。しかし、4月1日以降は法令化となるため、明らかに内閣府令や告示に抵触するケースは機能性表示食品の要件を欠くと判断され、機能性がうたえなくなる。
注目される4月以降の対応
機能性表示食品制度は、最終製品を用いたヒト試験を実施するにあたり、臨床試験公開データベースに研究計画を事前登録することを必須としている。ヒト試験の透明性の確保が目的だ。
1月17日に公表された告示(案)では、事前登録後に、機能性の実証に関する「主要アウトカム評価項目」「副次アウトカム評価項目」「試験デザイン」などを変更した研究は、機能性表示食品の科学的根拠とすることができないと規定した。
例えば、ヒト試験で最も明らかにしたい「主要アウトカム評価項目」で有意差が出ずに、補足的な指標である「副次アウトカム評価項目」で有意差が出たとしても、機能性表示食品の科学的根拠として使用できない。ヒト試験には少なくとも1000万円前後の費用がかかることから、「副次アウトカム評価項目」を「主要アウトカム評価項目」にすり替えたいという心理が働く可能性があるが、発覚すると機能性表示食品として販売できなくなり、一般消費者の信頼も失うことになる。
また、過去の動きを見ると、ヒト試験の結果を論文化する際に、試験デザインを改ざんするケースもあった。
事前登録の内容を変更したり、論文化の際にごまかしたりする行為は、機能性表示食品制度に対する信頼を損なう要因となる。
従来のガイドラインによる制度運用の下では、疑義が生じても消費者庁との押し問答で逃げ切ろうとする届出者が散見された。しかし、明らかに問題があるケースについては今後、法令に基づく厳しい対応が取られると予想される。
新規成分につきまとうリスク
紅麹原料を配合した機能性表示食品の問題をめぐり、新規成分の安全性リスクが問題視された。これを受けて、消費者庁は機能性表示食品制度の改正により、4月1日から、新規成分による届出を対象に厳格な事前チェックを行う。必要に応じて医学・薬学などの専門家の意見を聞く仕組みを導入する。
専門家からは、届出資料に記載された医薬品との相互作用や関与成分同士の相互作用が、製品パッケージに表示する「摂取をする上での注意事項」に適切に反映されているかどうかなどについて、助言してもらう考えだ。成分の安全性評価の実施は想定していないという。
専門家に意見を求めるケースでは一定の時間が必要となるため、届出の提出期限を通常の60営業日前から120営業日前とする。120営業日前とする場合は、届出から約2週間以内に届出者に連絡する。
告示(案)によると、新規成分は、(1)これまでに消費者庁による公表がされたことがない機能性関与成分、(2)これまでに消費者庁による公表がされたことがない複数の機能性関与成分の組み合わせ――と定めている。由来(成分を抽出した動植物)の違いなどは、「届出者の考え方をベースに、消費者庁でもチェックする」(食品表示課保健表示室)という。
原料メーカーから通販事業者に向けて、「オリジナル原料を開発」といったセールストークによる営業が行われるが、健康被害発生のリスクに加え、発売計画が大幅にずれ込むリスクも考慮して判断することが必要となる。
順守事項のチェックリストを公表
4月1日から施行される新たな施策として、順守事項の自己点検・報告も注目される。届出者は1年ごとに、順守事項に対する取り組み状況を自社で点検・評価した上で、その結果を消費者庁へ報告する。
告示(案)には、順守事項の自己点検・報告のチェックリストを記載。チェックリストでは、健康被害情報の収集・報告やサプリメントのGMP管理などに加え、関与成分の安全性・機能性に関する新たな知見を得た際に「遅滞なく消費者庁長官に報告」することも挙げている。
届出者は、チェックリストにあるすべての事項について報告しなければならない。消費者庁は報告内容をチェックし、必要に応じて調査などを行う。その結果、順守事項が守られていないと判断されると、製品に機能性を表示できなくなる。
事実上の“更新制”に該当し、通販事業者にとって特に留意しなければならない施策の1つとなる。
(了)
(木村 祐作)
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