法人向けサービスへと変貌
――サービスの提供開始から現在までの20年間を振り返ると?
寺井秀明氏(以下、寺井):「カラーミーショップ byGMOペパボ」は2005年2月に提供を開始し、20周年を迎えました。元々は、当社が運営する レンタルサーバー「ロリポップ!レンタルサーバー byGMOペパボ」のオプション機能でした。その機能のうち、ハンドメイド商品や産直品を売買する部分を切り出して、商品を並べやすくし、カート機能を付けて、ホームページを構築する機能として独立させたサービスが「カラーミーショップ byGMOペパボ」の始まりです。
そうした経緯があり、20年前にサービス提供を開始した当時は、個人が物品販売をホームページ上で行うために活用するケースが大半でした。その後、個人で販売していたユーザーさんが法人化し、さらに30人~40人規模の法人へと成長されていくのですが、カラーミーショップ byGMOペパボも多機能化し、法人向けサービスへと進化を遂げてきました。
現在では、ユーザーさんの約7割を法人が占めています。近年の導入事例を見ると、そのほとんどが法人です。

GMOペパボ株式会社 EC事業部 部長 寺井秀明氏
――過去20年と言えば、通信やインターネットを取り巻く環境が大きく変わってきましたが、どのような対応を行ってきたのですか?
寺井:20年前に「カラーミーショップ byGMOペパボ」のサービス提供を開始した直後に、フィーチャーフォン(ガラケー)に対応する機能をリリースしました。これに加え、ユーザーさんの事業規模が拡大した場合に必要となる機能をどんどん整えていきました。
2010年代に入りiPhoneが普及し、当社もネットショップ運営をスマートフォンで対応できるアプリの提供を開始しました。2016年ごろからは、Amazonさんや楽天さんのIDを使って決済する機能も普及し始めたことから、我々も導入しました。
さらに、SNSで販促する動きが2015年後半から2020年にかけて一気に広がりました。インスタグラムやXなどのSNSを活用する動きが出てきたため、SNSと連携できる機能の提供も進めてきました。
2019年には、『カラーミーショップアプリストア』を開設しました。それぞれのネットショップの事情に合わせて、例えばMAツールやCRMツールなどの導入を支援しています。かなり早い段階で、機能拡張についても提案できたと思います。
――具体的な実績についてお聞きできますか?
寺井:現在の利用者数は5万店舗以上です。流通額は年間2000億円以上となり、成長が継続しています。
直近でもっとも影響が大きかったのは、2020年のコロナ禍でした。気軽に外出できないという、今までなかった世界が訪れたわけですが、ECを手がける事業者が急増した結果、それを支援する「カラーミーショップ byGMOペパボ」の普及も急速に広がりました。
今後については、国内のEC化率が10%を切っている状況を考えれば、小売業者さんが生産性を上げようとする際に、ECチャネルの重要性を強く認識することになり、引き続き、「カラーミーショップ byGMOペパボ」に対するニーズも拡大していくと予想されます。
――コロナ禍もそうですが、成長を遂げる上でターニングポイントとなったことは?
寺井:やはり、2010年代のスマートフォンにスイッチしていくという動きは、大きなトピックでした。当時、購入者の視点に立って、ショッピングカートのシステムをリニューアルしたり、ID決済との連携を手厚くしたりするなど、ネットショップを作るだけではなく、購入しやすくするための機能強化にこだわりました。
もう1点は、iPhone向けに、スマートフォンでネットショップを管理できるアプリを提供するにあたって、「カラーミーショップ byGMOペパボ」のAPIを整備したことです。「カラーミーショップ byGMOペパボ」が外部と連携するための仕組みができたことは、エポックメイキングだったと思っています。
WordPressを無料で設置する機能も
――事業が成長していく過程で競合サービスも増えてきたわけですが、どう対応してきたのでしょうか?
寺井:我々の事業活動が世の中に見えるように、2014年に「カラーミーショップ大賞」というアワードを開始しました。初開催時の受賞店舗さんが上場する規模の企業に成長されるなど、このアワードもショップさんが成長するためのモチベーションにつながったのではないかと思います。

また、これまでの間にカート事業者さんなどが増えてきましたが、当社では、利用料金や決済手数料も含め、トータルで見たコストパフォーマンスなどのバランスが一番整っていることを目指してきました。
ECの需要はどんどん伸長し、これに伴って、さまざまな事業者さんが参入しています。業界全体が盛り上がる中で、我々が提供できる価値を最大限発揮できるように動いていくというのが、当社のスタンスです。
――競合サービスと比べ、「カラーミーショップ byGMOペパボ」はどのような点が違いますか?
寺井:当社は、元々レンタルサーバー事業でスタートした経緯があります。その知見やインフラを生かして、ネットショップと同じドメインでWordPressを設置することが無料でできる機能を提供していることも、特長の1つです。自社ECの運営でマストとなっているコンテンツを手厚くする上で、月額料金をかけずに支援できるところは大きなアドバンテージとなっています。
競合他社さんと比べても、WordPressをはじめ、SNSやYouTubeとの連携など、ECを表現する上でのサポートがとても手厚いと自負しています。
太田優氏(以下、太田):「カラーミーショップ byGMOペパボ」の強みとして、コストパフォーマンスに加え、導入後のサポートの手厚さも挙げられます。競合サービスの多くは、例えば電話対応が希薄です。これに対して「カラーミーショップ byGMOペパボ」は、AIを活用したチャット対応だけでなく、実際に画面を共有してもらいながら電話でサポートするサービスも提供しています。
また、上位のプラン(プレミアムプラン)の場合、アドバイザーが付くサービスも用意しています。そうした形によって事業者さんと二人三脚で、確実にEC事業を成長させる体制を整備していることも、強みとなっています。
GMOペパボ株式会社 EC事業部 マネージャー 太田優氏
――複数のプランを用意していますが、ユーザーさんのニーズは?
太田:やはり、最初はレギュラープランから導入するユーザーさんも多いですね。売上がある程度伸びると、事業者さんのみの力では頭打ちになってしまい、客観的なアドバイスがほしいという需要から プレミアムプランに移行するケースが増えてきています。
また、初めて取り組むケースで、アドバイザーが付いていた方が安心できるというユーザーさんも少なくありません。最初からプレミアムプランを選択し、アドバイザーとともにネットショップを作り、成長させていくというパターンなどもあります。
AI技術の活用を重視
――AIを活用したチャット対応の話がありましたが、AIの活用状況をお聞かせください。
寺井:AIを用いた機能拡充を進めているところで、商品説明やSNS投稿の文章作成支援などでAIを活用しているのが現状です。また、電話の自動応答サービスの提供も開始しています。今後、国内の労働人口がシュリンクする方向にあり、事業の生産性向上が課題となっています。生産性を改善するために、当社ではEC支援の面で、AIの活用方法を模索しながら各機能に取り込んでいるところです。
例えば、ECショップでは、お問い合わせやセールスなどでかかってくる電話への対応に多くの時間が割かれ、業務が中断されるという課題があります。そこで相談内容を振り分けて、内容に応じて自動応答で対応したり、担当者へ転送したり、録音したりする形で対応できるオプションも提供しています。
――今後の予定についてお聞かせください。
寺井:労働人口の問題や配送の課題などに対応し、生産性を向上させることが必要となる中で、AIの活用については強く意識しています。ユーザーさんの支援に繋がりますので、この部分は積極的にチャレンジしていきたいと思います。今後は、EC運営で人が動いている部分があれば、そこをAIで支援できないかという発想の下、取り組んでいきます。
また、一昨年前から提供を開始したECアドバイザーが付くプレミアムプランについて、提供の範囲を広げていきたいと考えています。
法人向けサービスが現在の姿
――最後に、EC業界へ向けて伝えたいことは?
寺井:「カラーミーショップ byGMOペパボ」について20年前からご存知の方がおられることはとてもうれしいのですが、その一方で、当時の印象が残っていて「カラーミーショップ byGMOペパボは個人向けだよね」と言われる方もいます。しかし、現状はまったく異なり、法人需要がほとんどを占めています。売上規模の大きいショップさんによる活用も多いです。
中小企業をはじめとした広い層の企業で活用していただいているという現状を訴求しながら、プレミアムプランをもっと使っていただけるようにしていきたいと思います。

太田:寺井が話したとおり、元々個人向けのイメージがあったのですが、現状は法人向けサービスとなっていることをEC業界に伝えていきたいですね。
寺井:国内の中小企業さんを支援したいというのが、我々の願いです。まだまだ日本各地に優れた事業をされている方々が数多くおられます。「カラーミーショップ byGMOペパボ」は、中小企業さんをはじめ、さまざまな法人をしっかりと支援できるサービス内容となっていますので、今後もより多くの企業さんをサポートしていければと思います。
――ありがとうございました。