12月に入り、デパートや家電量販店、各種ECサイトでの年末セールが盛況だが、今年は例年のセール商戦と異なる様相を呈している。その要因は、ソフトバンクグループがキャッシュレス市場に満を持して投入した新たなスマホ決済サービス「PayPay」の20%還元キャンペーンだ。PayPayが利用できるビックカメラには、キャンペーン初日の4日に開店前から行列ができ、通常はセールの対象にならないアップル製品が飛ぶように売れた。アップル製品の在庫がなくなる店舗が出るほどの爆発力で、PayPayとその加盟店舗が年末セール商戦の主役に躍り出た。
PayPayキャンペーンに消費者が殺到
ここ数年の年末セールは、Amazonの「サイバーマンデー」や楽天市場の「スーパーセール」など、ネット通販の大型セールに小売店舗がシェアを奪われる状況が続いてきた。多くの消費者が、Amazonや楽天市場などの大規模セールに備え、消費活動をセーブするのが恒例だった。しかし、PayPayの「100億円あげちゃうキャンペーン」が4日から開始されると、多くの消費者がECモールの大規模セールを待たず、われ先にとPayPayの20%還元キャンペーンに参加し、欲しかった高額商品に飛びついたのだ。
このキャンペーンでは、PayPay加盟店のコンビニエンスストアや家電量販店、飲食店でPayPayを利用して決済すると、一律で支払額の20%(上限は月額5万円)が還元されるほか、40回に1回の割合で支払額の100%が還元される(上限10万円)。この100%還元は、Yahoo!プレミアム会員は20回に1回、ソフトバンクとワイモバイルユーザーは10回に1回と、ソフトバンクグループのサービス利用者は当選確率が高くなる。
ビックカメラでは約30%の還元も
また、ビックカメラでは20%還元に会員カードによる8%の還元を加えると、実質的に約30%程度が還元されることになる。全商品が実質的に約30%オフになることから、キャンペーン初日となる4日には、高額商品を販売するビックカメラに行列ができ、4日の昼間(12時45分頃~56分頃まで)と夕方(18時14分~31分頃)には、アクセス集中による障害でサービスが利用できない状態に陥った。
このアクセス障害についてPayPayの広報担当者は「昼間と夕方にテレビで(PayPayについて)報道があり、アクセスが跳ね上がった。PayPayアプリの起動と決済も同時に増えたため、急激なアクセス増によりつながりにくい状況になった」と話した。
SNS上でも、TwitterにPayPayを利用して100%還元に当選した人の投稿写真が続出するなど、PayPayが話題となった。
ビックカメラ全店舗で売上大幅アップ
初日の4日に都内のビックカメラ店舗を訪れると、店内には至るところに20%還元を謳ったPayPayの看板が配置されていた。店員の1人に話を聞くと、店舗には予想を超える来客があり、アップルのiPadやiMacが飛ぶように売れ、アップル製品は在庫がなくなったという。同店舗のレジ係の1人は、「パソコンやテレビ、デジタルカメラなどがよく売れていた」と話した。また、「(初日の来客は)約4割以上がPayPayでの決済だった」と語った。
ビックカメラの店内の看板
ビックカメラの広報担当者によると「キャンペーン初日には全店舗で売上が大きくアップした。アップル製品だけでなく、任天堂の『Switch』、ドライヤー、冷蔵庫、洗濯機など、家電製品全体の売れ行きが好調だった」と語った。また、在庫状況について聞くと、「店舗によって在庫の種類は異なるが、早い段階でメーカーと交渉し、全社的に需要に対応すべく準備を進めてきた」と話し、一部店舗では在庫切れとなったものの、PayPayでの需要を見込んだ在庫を用意していることを明かした。
初回のPayPay決済で100%還元に成功!
試しに筆者もPayPayを利用してみたところ、QRコードを読み取ることで、スムーズに決済ができた。大手メーカーのスチームアイロン(7376円)を購入したところ、ソフトバンクユーザーだったこともあり、なんといきなり100%還元が当選した。レジ係に話を聞くと、100%還元を見たのは3人目(4日・21時54分時点)という幸運だった。その後、ビックカメラやファミリーマートで2日間にわたり合計5回PayPayを利用したところ、ビックカメラで再び100%還元が当選。打率4割のアベレージで100%還元の恩恵にあずかることができた。
初回のPayPay決済時に100%還元に当選。
再び2回目の100%還元に当選。
キャンペーンは長期化も?その理由とは
こうなると、関心はいつキャンペーンが終了するのかだ。同キャンペーンの開催期間は2019年3月31日までだが、期間中に還元金額が合計100億円に達した場合、途中で終了することになる。PayPayの広報担当者は、キャンペーンの終了時期について「まだ始まったばかりで先が読めない。今後は落ち着いてくるかと思う」と話し、現在放送中のテレビCMの影響も含め、現状ではキャンペーンの終了時期は予測がつかないようだ。
また、PayPayへの取材によって、キャンペーンの新たな事実がわかった。今回のキャンペーンで還元される100億円は、20%還元・100%還元を含め、PayPayを利用して発生したすべての還元金額の合計だと思われていたが、Yahoo!プレミアム会員・ソフトバンクユーザー・ワイモバイルユーザーが100%還元に当選した場合、100億円とは別予算で還元されるという。
要はキャンペーン還元額の総計は、100億円+ソフトバンク系サービス利用者の100%還元額(1回の決済につき上限10万円)ということだ。100%還元が10回に1回の確率だと、すぐに還元額が100億円に到達してしまいそうだが、ソフトバンク系ユーザーの100%還元が100億円の対象外ということであれば、話は異なり、キャンペーンは短期間で終わることはなさそうだ。
PayPayの今回のキャンペーンは、ソフトバンク系ユーザーのうち、特に10回に1回100%還元となるソフバンクユーザーとワイモバイルユーザーが有利な内容になっている。コンビニでお茶やコーヒーを購入し、ランチやディナーでの外食、買い物など、1日のお金を使う機会は3~7回程度はあるだろう。これをすべてPayPayで支払えば、2日に1回程度の確率で100%還元が当選することになる。
Amazonサイバーマンデーと直接対決へ
PayPayは17日にミニストップで利用できるようになるほか、12月中にはジーンズメイト、LACOSTE(ラコステ)、アウトドアスポーツ、earth music&ecologyなどの店舗でも利用が可能となる予定。
PayPay特需に沸くビックカメラでは、セール時期でもあることから、元々が競争力の高い価格が設定されていた。さらに約30%が還元されたり、100%還元が当選すると、地球上で最も安い価格となる。この状況に、地球上で最もお客様を大切にする世界のAmazonが黙っているとは思えない。より競争力のある価格を打ち出してくる可能性もある。Amazon VS PayPayの直接対決で、消費者はどちらを選ぶのか。Amazon最大の年末セール「サイバーマンデー」は、明日7日からスタートする。
(山本 剛資)
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