2012.01.18 コラム
★成功ネットショップ:『ワイシャツ専門サイトozie』(1)
理念あるリニューアルで前年比140%のYシャツ店
インターネット消費の一般化とともに拡大を続けるEC業界。だが流通大手やメーカーの相次ぐ進出で、生き残りは厳しさを増している。他を寄せ付けない“強いECサイト”は何を考え、何を実行しているのか? いま注目のECサイトの運営者に、EC事業の戦略から具体的なマーケティング施策まで話を聞く。
たった1枚の白いワイシャツも、襟型の違い、素材の違い、カフスの違いなどによって、何百、何千通りのデザインができあがり、それぞれの表情はずいぶん異なる。2002年にオープンしたワイシャツ専門店『ozie(オジエ)』は、すべての商品を自社で企画し、そのほとんどを数量限定で販売するECサイト。バリエーションの豊富さは、トップページを見れば一目瞭然だ。
「ワイシャツは、『シャネルの〇〇番』などと指名買いする商品ではありません。『なにかいいワイシャツはないかな?』とサイトを訪れるお客さまに、『うちは、これだけのデザインの商品が揃っていますよ』とアピールして、初めて興味を持ってもらえます。そこで、2004年からは、最低でも週に1種類は新商品を出す! という“ノルマ”を自らに課しています」(店長の柳田敏正氏)
毎週発売される新商品はすぐさまメールマガジンで顧客に告知する。ワイシャツは季節によって需要が大きく変動するので、2月の閑散期は週に1、2種類の新商品をアップ、長袖・半袖の両方が揃う6月の繁忙期は多いときで20種類もの新商品を投入するという。
随時、新商品を企画し、小ロットでもすぐに形にできるのは、母体である(株)柳田織物がもともと大正時代から続くシャツ専業メーカーであり、国内外に製造委託工場を持つ事業基盤があったからだ。
「それでも、毎週欠かさずに新商品をアップし、6年続けるのは正直骨が折れました。繁忙期に、新たな商品を10点、20点とアップするときは、スタッフが悲鳴を上げ、職場は“戦場”と化します(笑)。だけど、地道にコツコツと努力した結果、『常に新しいデザインのワイシャツが手に入る』とファンになってくれるお客さまが確実に増えました。それをモチベーションにモノ作りに励んでいます」
現在、ネットショップで販売する商品は、シャツだけで常時500点以上。ネクタイなどの小物も合わせれば1000点を超えるまでになった。
“手作りサイト”の限界を超えたozieの課題
商品点数が増えるにつれ問題となったのが、日に日に複雑になるサイトデザインだ。
「オープン当初はお金もありませんでしたから、自作で、手探りでサイトを作っていました。2005年に、さすがにトップページのデザインだけは外注に出しましたが、それっきり。何の手入れもできないまま6年が過ぎ、その間、商品アイテムは増え続け、商品カテゴリの整理は収拾がつかないところまできてしまったんです」
なるほど、確かに以前のサイトの[メンズシャツ]という大カテゴリをのぞくと、[白シャツ][黒シャツ]など明快なカテゴリもある一方、[背ダーツ入り細身シャツ][ニット鹿の子シャツ]など、どんなシャツなのかイメージしにくいカテゴリも点在している。
さらには、[商品一覧1][商品一覧2]といった謎のカテゴリもある。増え続ける商品アイテムに対応するため、便宜上、作らざるを得なかったとはいえ、不明瞭なカテゴリはせっかくの顧客を逃してしまいかねない。
カテゴリ以外でも問題があった。目玉商品をバナーで露出する、ランキングや新着情報で更新感を出すなど、苦心の跡は十分にうかがえるものの、あれもこれもと詰め込み過ぎてしまい、「結局、どの商品がウリなのか分からない」という皮肉な結果を生んでいるのだ。
こうした状況を常々打破したかったという柳田さん。「餅は餅屋。プロの指南を仰ぐべき」と考え、ネットショップ専門のコンサルティングに定評のあるゴンウェブコンサルティングにリニューアルを依頼。かくして2010年8月から、二人三脚でサイトの大改造に取りかかったのである。
今年1月、全面リニューアルした新しい「ozie」は、4月には同月前年比の40%増、月商換算で540万円もアップするなど、驚異的な売り上げを記録した。
「理念」の見直しから再出発
サイトのリニューアルに際して柳田さんたちがまず見直したのは、商品の分類でもデザインでもなく、会社の理念だった。理念とは、会社のあるべき姿。ozieに当てはめれば、「ワイシャツという商品を通して、ozieがお客さんに何が提供できるか」を追求することになる。
理念は、会社の土台ともいうべきものだ。新商品の仕入れを検討するときも、既存商品の取り扱いを見直すときも、理念に照らし合わせれば、やるべきか、やめるべきか、自ずと答えは出るし、商品のラインアップにもブレがなくなる。当然、会社の姿勢にも一貫性が出る。それを、サイト作りに反映させていくことが肝心なのだ。
柳田さんは、2002年のオープン当時から、ワイシャツ=伝統的という固定概念に囚われず、もっと自由な発想で商品を提供したいと思っていた。伝統をきわめて重んじるシャツ業界では異色のことだ。
「シャツは、もともとイギリスで正装時の下着として生まれ、スタイルや着こなしには伝統的なルールが残っています。その良さは残しつつ、現代のファッションに合うシャツを模索したかったんです。日本では、シャツの代表格といえば、サラリーマンが背広の下に着るワイシャツですよね。いまだに、『どうせ、たいして見えない部分だから』と、消耗品感覚で購入する人は大勢いらっしゃいます。でも、毎日着るものだからこそ、ワイシャツを“選ぶ楽しみ”を提案したいと思いました」
最近は、クールビズの影響で、「吸汗、速乾」素材が広く認知されるなど、機能面でワイシャツがクローズアップされることが増えた。また、年間を通じてクールビズが常態化していることから、ノーネクタイに合うシャツを探す人も出てきた。ワークスタイル、ライフスタイルはどんどん変化する。そうした状況に臨機応変に対応しつつ、デザイン性に優れたおしゃれなシャツを提案していきたい――。
柳田さんは、この思いを理念に込めた。
――自由で快適なシャツスタイルの提案を通じて、ライフスタイルの変革・改善に貢献します――
ozieを再構築するうえで、揺るぎない土台ができあがった。
だがもう1つ、柳田さんたちにはサイトを構築し直す前にやるべきことがあった。それが、自社の強みを徹底的に考え抜くことだった。(続く)
(出典:ASCII.jp - Web Professional)
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理念あるリニューアルで前年比140%のYシャツ店
ozie(オジエ)http://www.ozie.co.jp/
1970年創業(前身は1929年創業)の柳田織物が運営するワイシャツ販売の専門サイト。バーニーズニューヨークで接客経験を磨いた4代目の柳田敏正氏が中心となり、2002年にオープン。2011年1月、全面リニューアル。
・運営会社:株式会社柳田織物
・オープン:2002年
・従業員数:15名(うちネット通販事業専業5名)
・年商:1億4000万円(EC事業のみ)
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