慢性的な人材不足と言われる通販業界で、人材の教育は大きな課題となっている。ネットショップの運営代行やコンサルタントを展開するネットショップ総研は、ネットショップマスター講座などを監修するほか、産学連携の教育事業に力を入れている。教育事業は採算が取りにくく、教育事業に積極的に取り組む中小企業は異例。なぜ人材教育が必要なのか、新たなサービスを含め、同社代表取締役の長山衛氏に話を聞いた。
「電子商取引」で商業高校2校と契約
――なぜ教育事業に取り組んでいるのでしょうか?
長山 弊社は起業の際に人材教育からスタートしたという経緯があります。起業する前は食品の小売り会社で勤務しており、EC事業の立ち上げ時に責任者として携わりました。2000年ごろの通販黎明期の時代で、売上も急増しました。そこで事業部拡大にともない人員を増やしたのですが、これがなかなかうまくいかなかった。業界にECの知識を持つ人が少なかったため、人材が集まってもミスマッチが多発しました。こういった背景から、ECに携わる人材育成の事業を始めたのです。ただ、人材育成事業は、ニーズはあってもビジネスになりにくいこともあり、企業から運営を一括して受注する運営代行にシフトしていきました。 人材教育は起業時からの取り組みでもあり、収益目的でなく、業界の人材不足を少しでも解消したいという思いで行っています。
――産学連携による授業「電子商取引」とはどのような内容ですか?
長山 弊社はネットショップマスター講座の監修のほか、以前から商業高校などの授業の支援をしていました。2015年度には、商業高校の「電子商取引」が許可され、学校が採用すれば「電子商取引」の授業ができるようになりました。だた、ダンスの授業と同じで教える先生がいないという問題があり、弊社がアドバイザーという立場で携わるようになりました。現在、大分県立中津東高等学校と「楽天IT学校甲子園2013」のグランプリ受賞校の下関商業高等学校の2校と契約を結んでいます。 内容は現在ある通販関係の資格より実務的になっています。ECに限定されているわけではなく、どこから商品を仕入れるのかなど、バイヤーの仕事内容を解説するような章もあります。 教科書は最初、学術的な内容でわかりにくかったのですが、よりわかりやすく実学的な内容に変更し、デザインも馴染みやすいものにしました。専門学校などで使われてもおかしくない内容になっていると思います。授業を受けた人が卒業すれば、専門的な知識を持った人材が確実に増えることになります。より多くの学校に電子商取引の授業を採用してほしいと思っています。
(つづく)
(文・構成:山本剛資)
産学連携授業「電子商取引」、なぜ人材教育が必要なのか(2)
======================================= ■長山 衛(ながやま まもる) (株)ネットショップ総研 代表取締役社長 「ネットショップマスター認定講座」のカリキュラム監修を担当。経済産業省後援事業「ドリームゲート」の認定専門家。著書に「食品ネットショップ『10』売るための教科書」(日本実業出版)がある。食品会社のEC担当を経て、2008年10月に起業。得意分野は食品ECで、デザインから広報、コンサルなど、さまざまな業務に精通する。楽天市場などで受賞歴多数。
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