2015.11.24 通販会社
オムニチャネル戦略
今話題の「オムニチャネル」を日米の豊富な事例も含め、解説した1冊。その事例の豊富さは類書を圧倒する。これからオムニチャネルを始めようという企業に最適な1冊だ。著者は、通販物流を日本で最初に始め、オムニチャネル対応をすでに実践しているイー・ロジットという企業の経営者。実務を行っているから説得力がある。
経産省の定義によれば、オムニチャネルとは、消費者が複数のチャネルを縦横どのように経由してもスムーズに情報を入手でき購買へと至ることができるための、販売事業者によるチャネル横断型の戦略やその概念、および実現のための仕組み(経産省「平成26年度電子商取引に関する市場調査」)のこと。 ときおり、買い物の入り口(購入方法)が複数用意されただけの「マルチチャネル」と混同されることがあるが、顧客が複数のチャネルを行き来しても、ストレスなく、シームレスに情報収集や購入プロセスを進められる仕組みを持ったものがオムニチャネルだと著書は言う。 そして、オムニチャネルの具体的な効果として、売上の増加、消費者分析力の向上、消費者ロイヤリティの強化、競争的差別化の実現などが挙げられる。企業の成長ドライバーとなるのだ。
著者が本書の中で繰り返し主張するのは、「ロジティクス」がオムニチャネル実現のカギとなるということだ。受注方法、商品お渡し方法が自由自在の究極のサプライチェーン・マネジメントである。 また、顧客を囲い込むための新しい考え方であり、これまでよりも高度な顧客管理(CRM)が必要となる。 徹底した顧客中心主義であり、消費者の好き勝手し放題に対応でき、すべてのチャネルでシームレスに買い物ができる環境を提供するのがオムニチャネルである。 さらに顧客接点を増やす道具であり、これまでとは違った接客が求められる。お客様を笑顔にできる接客・対応こそが、究極のオムニチャネルになる。
また、オムニチャネルの実現には、全社を巻き込む取り組みが必要だ。組織づくり、評価システムなども、オムニチャネルを前提したものとなる。 著者のオムニチャネルの解説は非常に分かりやすかったのだが、気になったのは、オムニチャネルを実現するためにどれだけの投資が必要になるのかという点だ。お見積もりベースなので表に出せないのかもしれないが、事例のページでは、果たしていくら投資したのか突っ込んでほしかったと思う。 事例もオムニチャネルを実現できるのが大手企業のためか大手企業に偏っているが、オムニチャネルに対応できない中小のEC企業などは今後どうすべきなのかオムニチャネル時代の生き残り戦略を著者には示してほしかった。
【著者プロフィール】――――――――――――――――――――――――――――――――――
株式会社イー・ロジット代表取締役社長 兼 チーフコンサルタント 角井 亮一
1968年10月25日大阪生まれ、奈良育ち。
現在、東京秋葉原に在住。 上智大学経済学部経済学科で、ダイレクトマーケティング学会初代会長の田中利見先生のゼミに所属し、3年で単位取得終了し、渡米。ゴールデンゲート大学からマーケティング専攻でMBA取得。帰国後、船井総合研究所に入社し、小売業へのコンサルティングを行った。1996年にネット通販参入セミナーを開催した。 その後、光輝物流に入社し、物流コンサルティングを実施した。代表成功事例は、東証一部企業の物流センターを、日本初のゲインシェアリング(成功報酬型アウトソーシング)で、まるごとBPOで受託した例。 2000年2月14日、株式会社イー・ロジット設立、代表取締役に就任。イー・ロジットは、現在200社以上から通販物流を受託する国内NO1の通販専門物流代行会社であり、180社の会員企業を中心とした物流人材教育研修や物流コンサルティングを行う。 またライトヴァンというアーティストグッズ販売を行う会社を経営し、2015年、再配達撲滅するための生活アプリを開発するウケトルを立ち上げた。 現在、日本語だけでなく、英語、中国語(簡体、繁体)、韓国語でも書籍を累計16冊以上出版する。 なお、「日経文庫 物流がわかる」は、英語翻訳('Strategic Logistics in Japan Complete Edition')され、「日経文庫 オムニチャネル戦略」も、'OmniChanel Strategy in the U.S. and Japan'というタイトルで英語に翻訳された。
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