【NY通信】ニューヨーク在住のフリーライター・公文紫都が 現地のEC事情をレポートする通販コラム(Vol.14)
サービスの幅が広がりつつある「チャットボット」
2016年、IT界隈を賑わせているバズワードの一つに「チャットボット」があります。ボットは「ロボット」の略です。人工知能(AI)の性能が向上し、会話形式でさまざまなことが可能になる「チャットボット」に注目が集まっています。米国ではFacebookがメッセンジャーを利用したチャットボットプラットフォームをリリースし、話題になりました。 チャットボットサービスには、チケット予約や商品の購入代行などをしてくれる会話型コマース、メールのCCに入れるだけでアポイントメント調整を代行してくれるもの、日本ではヤマト運輸がLINEのテキストを通じて行っている荷物の問い合わせ・配達日時の変更など、色々あります。 私が初めて使ったチャットボットサービスは、今回紹介する会話型コマース『Operator』です。
(写真1:Operatorのウェブサイト)
利用当時(2015年夏頃)はまだ一部のユーザーにしか開放されていませんでしたが、いち早く対象ユーザーとなった主人の協力を得て使うことができました。 同サービスは、Uberの共同創業者でもあるシリアルアントレプレナーのRobin Chan氏が、2014年にスタートしました。『Operator』の特徴は、すべてをボットが対応するのではなく、人が積極的にユーザーの手助けをするところにあります。「欲しい商品カテゴリの選択」「どんな商品を希望しているか」といった導入部分や、やり取りが終わった後のフォローはボットが対応しますが、商品に関する具体的な相談や購入代行は、人が行います。
(写真2:アイコンの違いで、ボットから人間に切り替わったことが分かります)最初は、写真の印刷に対応しているプリンターを購入する目的でOperatorを利用しました。
(写真3:プリンターを探してもらった時のやり取り)
そして半日もかからず予算・用途共にバッチリのプリンターを購入できたので、次は約半年後、全てのユーザーに開放して仕様も変わった頃に、娘のオモチャを探そうと使ってみました。
(写真4:Operatorが対応している領域とやり取り例)会話型コマースを使って効率的にショッピング!
私の娘は体重570gで生まれた超未熟児なので、普通の子供とは違うケアが必要です。担当医にオススメされたのが、光りと音を感じられるオモチャで遊ぶこと。初めから自分でオモチャを探しても良かったのですが、当時はまだ娘が退院したてで今よりずっと大変な状況だったので、少しでも時間を節約したいとOperatorを使うことにしました。
Operatorの優れているところは、写真を送るとそれに近い商品を探し出してきてくれることです。彼らはユーザーの要望に合わせ商品を見つけ、提案してくれる人を「Expert(専門家)」と呼んでいます。実際にどの程度の専門家なのかは不明ですが、少なくともこちらの意向を組み、時に積極的な提案を交えながら希望に近いものを探し出してくれる姿勢は、店頭での買い物に近い心地良さがあります。しかも自社店舗で扱っている商品しか提案できない対面サービスとは違い、ウェブという強みを活かし、数多くの選択肢の中から提案してくれるのも魅力です。 日頃のセラピーで使っているオモチャの写真と予算を送ると、すぐにオンラインで手に入る商品のリンクが送られてきました。
(写真5:実際に私が送った写真と、それに対するOperatorの反応)
初回の提案は少しイメージと違ったのでより細かく指示を出すと、今度は自分では思いもつかなかった商品が送られてきました。商品を気に入り、購入(I’ll take it!)を選んで個人情報などを登録すればOperatorが購入を代行してくれるので、それで買い物はおしまいです。以前は購入時にOperatorに支払うサービス料(5%)がかかりましたが、今は不要になったようです。(https://www.operator.com/faq)
また、もしユーザーがOperatorに提示された額よりも安い金額で売っているサイトを見つけたら差額を返金してもらえるので、商品探しの時間をセーブしつつ自力で探し購入した場合と同じ価格(またはそれより安く)で買い物できます。こんな素晴らしい体験を一度経験してしまったら、時間もお金も節約したい主婦が病みつきになること必至です。 私がOperatorで一番気に入っているのは、まさにここです。一度ハマると抜け出せなくなる「商品探しループ」に時間を取られなくなること。ファッションや家具などモノによっては探すこと自体楽しいこともありますが、今回の娘のオモチャのように「必ず買わなきゃいけないけれど、自分ではあまり情報を持っていない」商品は専門家に頼った方が圧倒的に早く、より良い商品に出会える気がします。さらに予算の範囲内で見つけてきてもらえるので、自力で探している時にありがちな「ちょっと予算オーバーだけど、こっちの方が良さそう……えーい! こっちにしちゃえ!」も避けられます。
Operatorは現在人手を介しているため、候補が送られてくるまで多少時間がかかります。しかし将来的にAIを活用しどんどんユーザーの好みや意図を学習していくと、いずれはより短時間でユーザーの希望に合致したものを提案してくれるはずです。他の作業の合間に片手間でチャットしながら、あっという間に希望にピッタリの商品が最安値で送られてくる。 多くの人が会話型コマースに大きな可能性を感じていますが、私自身も「買い物革命」になるかもしれないと注目しています。
(公文紫都)
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