宅配の再配達に関する公開討論会「『宅配ドライバー問題』with 物流大好き!東京」が8日、都内で開催され、(株)イー・ロジットの代表で物流コンサルタントの角井亮一氏が冒頭の講演で「米国では2013年のクリスマスに大遅配が起きた。日本でも17年や18年のクリスマスから年末の時期にかけ、大遅配が起きる可能性がある」と話し、ネット通販の配送がピークとなる年末の時期に、物流会社の宅配便が急増する荷物に耐えられなくなることを予測した。
2013年のクリスマスに米国で大遅配事件が勃発
同討論会は、環境省が実施する宅配便を1回で受け取る「COOL CHOICE」プロジェクトの一環として開催され、角井氏による講演のほか、通販や物流業界の関係者が、再配達を防止する取り組みについて討論した。
米国では13年の12月、ネット通販での購入商品の配達日が24日に集中し、UPS(米国宅配トップ企業)が17%、Fedx(フェデックス)(同2位)が10%の荷物をクリスマスに届けられないという大遅配が起きた。米国の通販・物流業界では、この日を「超高配達日」と呼び、角井氏は日本でも数年後に「超高配達日が来る」と警告した。
日本の「超高配達日」について角井氏は、大手ECサイトでの大規模セールイベントが終了する12月21日頃から大晦日までの期間に起きる可能性があると指摘した。すでに日本でも昨年の年末には、大遅配といかないまでも、佐川急便やヤマト運輸などの荷物が1部遅配する状況に陥った。ヤマト運輸の1カ月間の荷物件数は、年間平均(16年2月~17年1月)で1億5400万個だが、12月はその1.5倍となる2億3400万個に上っている。12月はお歳暮、クリスマスプレゼント、おせち料理、自分の荷物の配送(実家への帰省で自分に送る荷物)など、荷物が急増するからだ。
角井氏は特に危険なのが、「大晦日」とした。大晦日は、おせち料理の配送が集中し、1年で最も配達が厳しくなるという。荷物件数自体はそこまで多くないが、冷凍食品などが多いために冷凍用車両を利用しなければならず、配送できるキャパシティが少ないことで、この日に配達が集中すると物流会社の対応が厳しくなるのだ。このため、最近では通販会社が配送日を30日に指定することも多くなってきている。
ピーク時の物流対応が急務
12月にリスクがあることはわかったが、なぜ数年後に大遅配が起きるのか?これにつても米国の事例から根拠がある。米国では大遅配が起きる前に、その兆候と言える大事件が11年に起きた。それはフェデックスの配達員による「テレビの放り投げ事件」だ。
米国では11年にフェデックスのドライバーがサムソン製のテレビを玄関先で放り投げる動画がYouTubeにアップされ、大きな問題となった。この事件は、フェデックスのCEO(社長)が謝罪する事態に発展。米国でCEOが謝罪するのは異例で、社会問題になった。この2年後に大遅配が発生。大切な荷物をドライバーが放り投げるという不祥事は、物流の現場が疲弊し、大事件が起きつつある兆候とも言えるのだ。
日本でも16年12月、佐川急便のドライバーが荷物を投げる動画がYouTubeにアップされた。このまま対策もなく宅配便の荷物が増え続ければ、角井氏が指摘するように、日本でも17年・18年の12月に大遅配が起こるリスクがある。通販の荷物件数の拡大により、再配達件数やドライバーの人材不足などが社会問題化しているが、12月のピーク時の対応も大きな課題と言える。幸い12月までにはまだ時間がある。業界を挙げての対応が求められる。
(山本 剛資)
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